産業看護師の仕事【前編】 | 病院外の看護現場探訪【4】

医療機関以外で働く看護師さんのお仕事を紹介する「病院外の看護現場探訪シリーズ」。

4回目となる今回は、企業で働く看護師さんです。

 

企業で働く看護師は「産業看護師」と呼ばれます。

病院とはまったく異なる企業という職場で、看護師は一体どのような業務を行うのでしょうか?

 

きっかけは知人の紹介

「病院と違ってさまざまな健康レベルの方と接することになり、ケースバイケースの対応が求められる職場です。難しい仕事ですが、やりがいがあります」と語ってくれたのは、仙台の電機メーカーに勤務する看護師の西島瑞江さん(仮名)。

 

産業看護師の西島さん。白衣ではなく、他の社員同様カジュアルな服で働いています

 

西島さんは看護学校を卒業後、病院の小児外科病棟で4年半ほど働いていました。臨床での仕事にはやりがいを覚える一方で、つらさも感じていたといいます。

 

「小児外科だと、子どもが亡くなってしまうこともあるのがしんどかったです。病気を持って生まれた子どもが、やっと大きくなってきた頃に亡くなったり。精神的につらかったですね」

 

仕事を続けるかどうか悩んでいたときに、知人から企業の看護師の話を持ちかけられたそうです。

 

「学生の頃、企業での看護に興味を持っていましたので、良い機会と思って産業看護師に転身しました」

 

すぐに面接を受け、正社員として採用されて以来、16年間産業看護師として勤め、現在に至ります。

 

業務の中心は健康診断後のフォロー

西島さんは普段、事業所内の「産業保健センター事務室」で業務にあたっています。

 

以前は産業医が常勤でしたが、現在は非常勤となって週1日の出勤となりました。また、以前は週2日、午前のみ診療を行っていたそうですが、現在は診療業務を行っていないそうです。

 

「企業の看護師というと保健室の先生のようなイメージを持たれるかもしれませんが、面談や相談対応、健診処理などのデスクワークが主な仕事です。直接、傷の手当てや看病をする機会は、多くはありません」

 

 

西島さんのお仕事は、主に会社の健康診断を中心に構成されています。事業所全体で600~700人の社員がいて、社員の誕生月を基準に、定期健康診断を毎月実施しています。

 

「健康診断は受けると気が済んでしまう社員さんが多いですが、やって終わりではありません。診断の結果に対して、必要な措置をとっていくのが私たちの仕事になります」

 

健康診断の結果を受けて、産業医からとるべき措置について指示が出ます。その指示をもとに、西島さんがひとりひとり対応していきます。

 

「健診の結果に問題があった場合には、病院を紹介して受診を勧めたり、生活改善をしてもらえるよう保健指導を行ったりします。特定保健指導の対応もしています。問診票の内容から、ストレス度が高いと判定された方にお会いしてお話を伺うこともあります。

 

また、国の基準にもとづき、残業をした方への面談なども行うことがあります。健診結果に関連することだけでも、一年間ずっとお仕事がある状態です」

 

社員の健康のため、部門間の潤滑油を意識

健康診断や日々の健康相談で何らかの問題が見つかり、介入の必要がある場合には、各部門と連携しながら対応にあたっていきます。

 

メールや直接の相談、テレビ会議など、さまざまな形で他部門と連絡をとっています

 

「体や心の不調で、どうしても周囲の配慮が必要な方については、職場と人事と産業保健スタッフ、そしてご本人というチーム体制で連携しながら対応していきます。

 

ご本人が今どのような状態にあるかという『見立て』を職場や人事に分かりやすく伝えることと、必要な配慮をしていただけるよう『渡し』をすることが重要です。

 

例えば定期的な通院や就業時間の制限が必要な場合、所属部署や人事のほうでフォローしていただけるよう、現場の状況も伺いながら相談します」

 

“職場の上司や人事に任せて終わり” でもなく、“すべてのフォローを産業保健スタッフが行う”ということでもなく、お互いに情報を共有してそれぞれの役割で問題を解決できるように、潤滑油的な役割を意識しているそうです。

 

「ただ、注意しなければならないこともあります。何でも制限してしまうとご本人のお仕事の幅を狭めることにもなります。

 

また、個人情報保護の観点もあって、必ず、ご本人の承諾をいただくのですが、職場におかしな横槍を入れるような形になって人間関係に支障をきたしてはならないと思っています。

 

必要なことはやるように、不要なことはやらないように気をつけながら、段階を踏んで、みんなが納得できる線を探していくんです」

 

メンタルヘルスに関連する対応の場合、とりわけデリケートな介入になるといいます。

 

「メンタルヘルスの問題は本当にケースバイケースですね。例として、何カ月かお休みをとってもらうことで徐々に元気になってくれる人もいれば、なかなかそうならない人もいますし、復帰後にまた具合が悪くなってしまう人もいます。

 

モデルケースといえるものがなかなかないんです。状況を見て、職場や人事と適宜相談しながら対応していきます」

 

人事とは定期的に打ち合わせをして、就業制限対象の方などについて情報交換を行っているとのこと。

 

さまざまな配慮や多方面との連携が求められる産業看護の現場。次回は、産業看護師として働き始めた際の苦労や、企業全体に関わるお仕事について伺います。

 

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