看護師の残業はなくなるのか? 前残業や研修会も「勤務時間」とみなすガイドラインが発表に

電通の事件や看護師の過労死事件が注目を集める中、ナースの働き方を見直すガイドラインが発表になりました。

 

特に、前残業(始業前の勤務)や課外活動、委員会活動などで曖昧に残業を強いられることもある看護師。

これまで「曖昧になっていた部分」や「必要に応じて」とされていた部分が明確になり義務化されました。

 


【厚生労働省が公表】

前残業や研修会も「勤務時間」とみなすガイドラインとは?

 

厚生労働省は、2017年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を発表しました。

 

これにより、現場の看護師の不適切な残業はなくなるのでしょうか?

 

 

看護師はどのくらい残業しているのか?

看護師が過重労働を強いられていることは、以前から問題視されていました。

 

・始業時間前の時間外労働が多い(若い人ほど多い)

・看護師の9割が残業している(年齢に大差はない)

・全体的にみて若年層の時間外労働が多い

・看護師125人に1人は過労死ライン(月の時間外60時間)を超えて働いている

・残業不払いが2/3もある

・日勤は8割の人がだいたい休憩を取れているが、夜勤になると2割~4割が、休憩があまり取れていないと感じている

日本医療労働組合連合会 労働実態調査の内容を抜粋・要約)

 

2014年の調査では、このようなデータが示され、かなり深刻な状況といえました。

 

 

前残業、後始末、オンコール、研修会・勉強会・委員会が「労働時間」に

ガイドラインで示された「労働時間にあたる時間」という定義がこちらです。

 

・業務に必要な準備(着替え含む)・業務終了後の後始末(掃除など)

・すぐに業務できるよう待機している時間(オンコールなど)

・参加することが義務づけられている研修や勉強会、委員会など

 

看護師で病棟勤務などの場合、始業の30分前に来て患者さんの情報を取って、準備をすることはほとんどの看護師が経験していることなのではないでしょうか。

 

また、看護業務が終了しても救急カートや物品のチェックなどで15分くらいかかることもあります。

 

このような後残業・前残業だけでなく、休みの日の研修や勉強会、委員会の参加なども含め、労働時間と定義されることになりました。

 

 

看護師の生活はどのように変わるのか?

今回の義務化に伴い、残業時間の減少だけでなく、賃金向上というメリットも考えられます。

 

たとえば、今まで30分前に病棟へ来て準備、帰りにも何かしら片付けや掃除、物品チェックなどをして、研修など月に1回は参加している場合で考えてみましょう。

 

始業前30分+終業後30分×20日(日勤のみで)

研修1時間/月1回

時給1,800円で計算すると月37,800円!の賃金向上

 

このような賃金向上の可能性もあります。

 

 

労働時間は適正に把握されるのか?

また、ガイドラインでは、労働時間を適正に把握する方法について7つのポイントに分けて記載されています。

ここでは、看護師に特に影響の大きい2点を解説します。

 

1)始業・終業時刻の確認および記録

記録の方法として2種類あるとしています。

・使用者(病院)が自らチェックし記録

・タイムカードやICカード、パソコンの使用時間などの機器を使用

 

始業・終業時間の確認、記録を徹底する方法です。

 

しかし、使用者(病院)がチェックしたものは、裁判などの場合には信憑性が薄いため、タイムカードなどの証拠として提出できるものの方がより、確実なようです。。

 

2)自己申告制の注意点

今までの労働時間を巡る裁判などで問題となった自己申告制の場合、不正に悪用されるケースが多かったため、自己申告制はあくまでも例外であり、基本的にはタイムカードなどの記録残すことを原則としています。

 

また、「自己申告と実態とが合っているか実態調査を行うこと」としていますが、今まではこの部分が「必要に応じて」と曖昧であったために、ブラック企業などの抜け道とされていました。

 

自己申告制に対してかなり厳しいガイドラインとなります。

 

 

看護師の残業はなくなるのか?

今回のガイドラインは、病院が行うべき労働時間のチェック方法について具体的に示す形となりました。

 

これにより残業時間が減るかどうかは、各病院の方針次第ということになります。

 

 

私が以前勤めていた病院では、30分以上かかっていた申し送りを短縮させようと、共有のワークシートを作成し、タイマーを使って15分以内で終わらせるという取り組みを行っていました。

 

最初はなかなか慣れず、やっと30分以内、ようやく20分以内と徐々に時間を縮めることができ、最終的には15分で必要な情報を効率的に申し送れるようになりました。

 

そのおかげで、看護にさける時間が増え、早く帰れるようになりました。 

 

ただ、このような取り組みはまだまだ少数で、残業に苦しんでいる看護師は多いことと思います。

 

今回のガイドラインが現場に定着し、看護師の労働環境が改善することを願います。

 

【ライター・白石弓夏(看護師)】

 

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