ナースのお悩み処方箋【12】1人で決断するのが怖いんです・・・

「砕け方を覚えれば、砕けるのも怖くなくなるものよ」

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業務上、シビアな判断を迫られる場面は、ドクターの方が多いとはいえ、看護師にもないわけではありません。

例えば患者さんが急変したとき。
ご家族に意見を求められたとき。

イチかバチか。
同僚や先輩・上司に相談できる時間があればいいのですが、即決断を求められることもあります。
むしろ、現場では即断しなければいけない場面の方が多いと思います。

決断を求められている時に、一番やってはいけないことが『先延ばし』。
相手が患者さんであれ、ドクターであれ、あなたへの信頼を無にするようなものです。

こういう時に相応しいコトバが昔からあります。
『当たって砕けろ』
えー!? と思われる方もいらっしゃると思います。
私も、先輩看護師にこれを言われた時は、そう思いました。

中堅看護師として、後輩看護師や患者さん、そのご家族から即断を求められることが多くなり、頭はパンク寸前。
そんな時、先輩看護師に「当たって砕ければいい」と言われ、唖然。

彼女は続けて言いました。
「当たって砕けるつもりでやっても、意外と砕けないもんだよ?」
まぁ、そりゃそうでしょう。
ものの喩えじゃないですか、本当に肉体が砕け散ってしまったら、スプラッタじゃないですか。

例えば、患者さんのご家族から、ドクターの治療について、それが世間ではどうなのか、という質問を投げかけられることもあります。
迂闊なことを言えば、ドクターの顔に泥を塗ることにもなりかねません。
下手なことを言ったが最後、その発言が大問題に発展することもあります。

「私はドクターじゃないので……」と逃げることも可能ですが、「あくまで看護師として、というよりも、私個人の意見ですが……」と、誠意を見せつつ、判断にいたる過程を説明します。

メモを取ったり、録音しているご家族の方もいらっしゃいます。
後で何か問題になったらどうしよう、と思わなくもありません。
私の余計な一言で、治療拒否なんてことになったら一大事です。

まさに、当たって砕けろ、です。
でも、誠心誠意、ご家族や患者さんに向き合った後、砕けたことは一度もありません。

たしかに時間も手間も暇もかかります。
けれど、見せた誠意は決して無駄にはなりません。
ご家族が味方になってくれることや、患者さんが治療に前向きになってくれることは、看護師として、大きな強みになると私は思います。

これは言葉による発想の転換というやつですね。
以来、私も同様のコトバを、パニックに陥りそうになっている後輩に言っているのです。
さも自分が思いついたコトバのように(笑)。

 

 


 【岡田久美】 兵庫県出身。看護書籍の編集とゲームシナリオライターを本業に、フリーの看護師として活躍中。いつでもどこでもどんなところでも勤務できるオールマイティな看護師を目指し、これまでの勤務職場は病院、クリニックなど30以上。

著書に「看護師の流した涙」(ぶんか社)がある。

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