呼んでくれてありがとう|看護師絵日記

看護師絵日記

呼んでくれてありがとう

 

ナースコールが鳴った。

 

「どうなさいましたか?」と声をかけても、何も返事がなかった。

「うかがいますね」とナースコールを置き、どうしたのだろうと患者さんの部屋へ向かう。

 

2号室の男の子の部屋だ。うつ傾向がある。

 

 

ベッドの上にはゲーム機の電源がつきっぱなしで転がっていた。

 

布団から出した腕を見ると

かきむしった後で真っ赤になっていた。

細い腕には点滴がつながっている。

点滴の固定されているテープはもうはがれかけていて針が抜けそうになっていた。

 

心の中で「……またはがしてる」とつぶやいた。

数日前にもはがれて、抜けてしまったことがあった。

 

「ここ、かゆかったの?」と声をかけると

「ちがう」

と言われた。

 

彼は何回も入院しているから十分知っている。

このテープをはがすと点滴ができなくなる。

注意される。

また痛い思いをして針を入れなくてはならない。

 

それでもはがしてしまったのはなぜなんだろう。

 

 

「全部とれてなくて良かった。呼んでくれてありがとうね。」

と声をかけて

「もう一回固定するね、5分待ってて。」

とその場を離れた。

 

しょうがないのは分かっているけれど何かしたいなと思った。

 

戻って来るとテープ以外の場所をかいていた。

「温タオルをあてるね」と声をかけて、かいていた腕を清拭しながら話してみる。

 

「かいちゃうと、怪我になるからこうして温めたり、あとは冷やすといいかも。良いなと思う方でやってみよう」

「うん」

 

少しは落ち着くかな…でもまたすぐかいてしまうのかなと思った。

 

その日テープがはがれることはなかった。

 

 

看護をしていると、あきらめるしかなかったり効果が出ないことも多いなか、

ふとこうやって、「返ってくる」こともある。

 

どうして返ってきたのか、わからないことのほうが多いけれど。

それでも、またきちんと向き合ってケアしようと思う。

 

 

【かげ】Twitter

総合病院で働き、絵を描く看護師です。医療の勉強に役立つ(てほしい)絵や仕事でのほっこり話などをTwitterでつぶやいています。

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