現実はキビしい?PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)で働くナースの本音

PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)とは、看護師がペアで患者さんを受け持つ新しい看護方式。

看護師同士が協力して業務を行うことで、質の高い看護ケアを提供することを目的とした制度です。

 

超過勤務の削減やOJTの充実などさまざまなメリットが謳われていますが、「パートナーってどうやって決めるの?」「後輩と組んだら仕事が増えない?」「苦手な人と組んだらツラくない?」…etc.気になるところも多いですよね。

 

そこで、PNSのメリット・デメリットをまとめるとともに、PNSを体験したナースに本音をカミングアウトしていただきました!

 

 

 

残業削減、OJTの充実……PNSのメリット

現在主流のチームナーシングやプライマリー・ナーシングなどは「1人の看護師」が複数の患者を受け持つことが基本。

 

しかし、看護師の経験やスキルは1人ひとり異なりますから、看護ケアのレベルに差が出る可能性があります。

 

「採血が苦手で、患者さんに怒られた…」「先輩の手際の良さにビックリ。自分はその倍の時間掛かっちゃうのに~!」なんて苦い経験をしたことのあるナースもいるのでは?

 

ナースの仕事は日々勉強と分かっていても、経験の差はなかなか埋められませんよね。

 

そこで、安全で質の高い看護を“平等に”提供するため開発されたのがPNSです。PNSは「2人の看護師が複数の患者を受け持つ」新たな看護方式。

 

例えば、1人がバイタルを測定している間にもう1人がカルテを記録する、という風にケアを行います。

 

PNSは2009年に福井大学医学部附属病院看護部で開発されて以来、さまざまな病院で導入が進んでいます。

 

PNSを導入すると業務効率が上がり、超過勤務の削減やOJTの充実、さらにはワーク・ライフ・バランスの実現など数々のメリットがあるそう。

 

そこでまずは、PNSを導入してワークスタイルが変わった! というナースの声を集めてみました。

 

■PNSを導入してから、こんなメリットがありました!

・慣れるまでが大変だったけど、残業がほとんどなくなった!

 

体位変換、保清などは2人の方がダンゼン効率良い。時間短縮になります。

 

・ベテランの経験を見たり感じたりして学べるから、新卒の独り立ちが早い!

 

・若い人は、相談相手が出来るので安心するみたいです。

 

看護体制がガラリと変わるので慣れるまでが大変と聞きますが、やはり残業削減の他にもメリットがあるのは確かなよう。

 

ただし、PNSを導入している病院はまだ少なく、一部の部署などの限定的な導入に留まっているところがほとんど。

 

一体どんな制度かを見極めるため、試験的に取り入れているというコメントもありました。

 

 

職場じゃ言えない! PNSを体験したナースの本音

仕事には頼れるパートナーがいて、タイムスケジュール通りに業務が進んで、定時で帰宅。PNSを導入したナースは、まさに理想の生活を送っているようです。

 

でも、ちょっと待って。確かにそんな生活が実現したらうれしいけど、「そんなにおいしい話ってアリ?」と疑ってしまうのが本音ではありませんか?

 

実は、「師長の前じゃゼッタイ言えないけど……」とPNSに不満を抱えるナースもいるみたい。その本音、ズバリぶっちゃけてもらいました!

 

「PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)」はやりやすい? やりにくい?

出典:「PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)」はやりやすい?やりにくい? | 看護師のアンケート【世論 de ナース】

 

□「やりやすい」と答えた人……20%

・先輩がしている仕事を近くで見て学べる。そして、教えてもらえるというのはとても働きやすいです。

 

・組む相手との関係にもよりますが、やりやすいです。

 

□「やりにくい」と答えた人……79%

・先輩と一緒になると、全部先輩の意向に沿わなくてはならないのでやりにくい…。

 

・後輩のしわ寄せや先輩からの圧迫がしんどい…。

 

・導入されたけど、結局個人で動くことが多い。微妙。

 

「やりにくい」と答えた人が圧倒的多数に。2人で看護ケアを行うため、パートナーとの相性が大きく影響するという意見が目立ちます。

 

確かに、新人と組んだら自分の仕事が増えて大変そう。かといって、苦手な先輩とペアになるのもツライかも……。

 

入職1~2年の新人ナースは、仕事よりも先輩への気遣いに悩んで疲れちゃう人も多いようです。

 

 

プリセプター制度よりツライ? PNSのデメリット

「ペアを組むってことは、プリセプター制度と一緒? 違いはどこにあるの?」

 

そう疑問を感じるナースもいるでしょう。PNSとプリセプター制度は一見似ているけれど、そのシステムはまったく異なります。

 

 

プリセプター制度は先輩が後輩へ一方的に教えるもので、プリセプター、プリセプティーという役割がきっちりと分けられています。

 

これに対してPNSは、ペアを組む相手を「パートナー」と呼び、同等の立場で互いに教え合うことが目的です。

 

そのため、PNSでは新人を人数にカウントしません。「フレッシュパートナー制」として、先輩同士のペアに3人目として入ってもらう形が一般的です。

 

しかし、PNSとプリセプター制度を混同している病院が多いのも事実。人手が足りないからと、新人とペアを組ませる病院も多いよう。

 

先輩ナースの仕事ばかりが増えてしまうのは、この「名ばかりPNS」のせいなんです。

 

この他にも、PNSでこんなことがツラかった! という意見をまとめてみました。

 

■PNSを導入してみてツラかったことって何ですか?

・人手が足りなくなる! 必ず2人で行動するので、倍の患者を見て回らなくてはならないのは大変。例えば、通常であれば1人で8人検温するところを、PNSは2人で16人分巡回するようになるんです。

 

・制度を導入するまでや、既存スタッフが慣れるまでは苦労します。

 

・パートナー選びが難しい。「違いを活かせるパートナーを選びなさい」って言われるけど、正直分かりません!(笑)

 

・管理者に知識がないと、結局なあなあになっているような……。

 

今回のアンケートから、PNSの導入にはまだまだ課題も多く、不満が多く飛び交っていることが分かりました。

 

理想的な労働環境を実現しようとするPNSですが、看護業界へ浸透するには時間がかかりそうです。

 

ナースが定時帰宅できる日は、もう少し先の話になるのでしょうか。

 

しかし、冒頭で紹介した通りPNS導入に成功した病院があるのも確か。

 

PNSを上手に活用する病院が増えれば、ナースがいまより明るく元気に働けるかもしれませんね。

 

ナースにとって働きやすい職場が増えることを強く願うばかりです。

 

【看護roo!編集部】

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