学校で児童のケアを行う看護師配置が加速―「障害者差別解消法」ってなに?

文科省は、障害を持つ児童も持たない児童も、同じ空間で学べる環境作りを進めています。 

これにともなって、医療的ケアが必要な児童に対応するため、特別支援学校および小中学校に看護師を配置する流れが加速しています。来年4月からスタートする「障害者差別解消法」にあわせて、さらに小中学校への看護師配置が進みそうです。

 

 

支援学校で働く看護師は倍増中 

全国の特別支援学校において、日常的に医療的ケアが必要な児童は7774人(2014年度調査)、全在籍者に対して5.9%を占めています。この人数は年々増えていて、06年度には5900人だったものが、10年足らずで2000人近く増えました。

 

こうした状況に対応するため、支援学校に配置される看護師数も増えています。06年度には707人だったものが14年度には1450人と、8年で倍増しました。

 

必要な研修を受けることで、たんの吸引などが行えるようになる「認定特定行為業務従事者」の資格を持つ教員も増えていて、14年度には3448人の教員がこの資格を持っています。

 

増える普通学級での医療的ケア

支援学校などにおいて必要とされる医療的ケアは、「たんの吸引等の呼吸器関係」が最も多く69%、次に「経管栄養等栄養関係」が24%、「導尿」2.3%となっています。

 

また、特別支援学校ではなく、通常の小中学校においても、医療的ケアが必要な児童が増えています。通常の公立学校に通う、医療ケアが必要な児童は976人。必要な医療的ケアは「たんの吸引」が半数で、「導尿」「経管栄養」がそれぞれ2割です。

 

保護者がつきそいで医療ケアを実施する現状

医療的ケアが必要な児童が増えている一方で、通常の公立学校には看護師や特定行為ができる教員は配置されていません。そのため多くの場合、親が子供の学校に付き添ってたんの吸引などのケアをしなければならず、保護者の負担が大きいことが問題になっていました。

 

こうした現状を改善するために、文科省は数年前から学校への看護師の配置を推進しています。16年度には1460人の看護師を全国の学校へ配置するための予算を要望しました。

 

「障害者差別解消法」が4月からスタート

この流れは、2016年4月から「障害者差別解消法」がスタートするのにあわせてさらに加速することが予測されます。

 

「障害者差別解消法」とは、すべての人が障害の有無にかかわらず共に生きることを目的に作られた法律です。自治体や民間会社に対して、「障害を理由とする差別」を禁止するとともに、障害を持つ人への合理的な配慮をうながします。

 

文科省の担当官は「障害者差別解消法の施行によって、医療的ケアが必要な児童が通常の小中学校へ入学するケースが増えるだろう」としていて、そのための看護師配置が必要としています。

 

その一方で、今年5月に鳥取県の養護学校で起きた、保護者の理不尽なクレームによる看護師の一斉辞職など、不十分な体制のままでは子どもたちにしわ寄せが行きかねません。国が主体となって十分に看護師を配置した上で、ハンディキャップを持つ子どもたちが安心して学べる環境を作る努力が求められています。

 

(参考)平成 26 年度特別支援学校等の医療的ケアに関する調査結果について

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