お酒に依存しやすいのは高学歴・高収入の50代?イギリスのアルコール乱用研究

【明日使える!最新医療ニュースと医療英語】

アメリカ3大テレビ・ラジオネットワークNBC、CBS、 ABCで紹介された最新の健康・医療ニュースと解説をお届けします。ニュースの中でKey Wordとなった医療英語にも注目し、使い方をマスターしちゃいましょう!

 

Well-off, active, over 50? You may be at higher risk for problem drinking―お酒に溺れやすいのはどんな人?

 

【INDEX】

・本日のKey Word: 「age 50 and older」(50歳以上)

・健康を害する飲酒のリスク、若年層よりも中高年に注目

・健康で高収入、高学歴で人づきあいのいい50歳以上がハイリスク

・イギリスの「中流階級」=高収入・高学歴の富裕層

 

Well-off, active, over 50? You may be at higher risk for problem drinking

 

本日のKey Word: 「age 50 and older」(50歳以上)

「○歳以上・○歳以下」は、医療の現場や日常でもよく使いますが、これにも英語独特の表現があります。

「50歳以上」は「age 50 and older」、「50歳以下」は「age 50 and younger」です。

 

ポイントとなる数字に「older」または 「younger」をつけて「以上」なのか「以下」なのかを表現します。また、簡単に「50歳以上」を「over 50」、「50歳以下」を「under 50」ということも多いです。

 

今回紹介したニュース原文で、「age 50 and older」を含むsentenceを紹介しましょう。

Good health, activeness, wealthiness and good social life may raise the risk of harmful drinking for man and women aged 50 and older.

(50歳以上の男女において、健康で働き盛り、裕福で人づきあいがいいことは、健康を害する飲酒のリスクを高めるかもしれません。)

 

 

健康を害する飲酒のリスク、若年層よりも中高年に注目

アメリカでは、毎年8万8千人以上がアルコールを原因に命を落としています。体に害を及ぼし、命を縮めかねないアルコール乱用やアルコール依存症の患者は1600万人以上いるといわれています。

 

日本では、急性アルコール中毒など若年層の飲酒が問題視されていますが、アメリカではむしろ中高年の飲酒が問題のようです。

「2010 National Survey on Drug Use and Health」の調査結果によると、飲酒をする65歳以上のほぼ40%が、健康を害する飲酒をしていると指摘されています。

 

さらに2015年7月には、中高年の飲酒をさまざまな視点から調査した研究が、イギリスの有力医学誌「British Medical Journal」で発表されました。

 

健康で高収入、高学歴で人づきあいのいい50歳以上がハイリスク

今回の研究では、健康を害する飲酒の潜在的なリスク要因が何であるかの検証が行われました。

 

50歳以上の男女9000人以上を対象に、彼らの飲酒習慣と収入・ライフスタイル・家族構成などを調査し、どんな生活習慣の人がアルコール乱用やアルコール依存症に陥りやすいかという関連性を分析しました。

 

研究者のIparraguirre教授は、健康を害する飲酒のリスクのピークは、男性が60代前半、一方で女性は、年齢とともに減少すると発表。

 

さらに、

  • ・健康良好で学歴が高く、喫煙している男性・女性
  • ・収入の高い、または、退職をした女性
  • ・別居や離婚後を含む1人暮らしの男性

 

が健康を害する飲酒に陥りやすいことを挙げ、男性・女性で健康を害する飲酒の潜在的なリスク要因が一部異なることを発表しました。

 

lparraguirre教授は、以下のように研究結果をまとめています。

 

すこぶる健康で高収入、高学歴で人づきあいのいい50歳以上の富裕層が、実はアルコール乱用やアルコール依存症など健康を害する飲酒におちいる傾向にあり、彼らの隠れた健康問題は「middle-class phenomenon(中流階級現象)」といえる。

よって、健康を害する飲酒は、彼らに典型的にみられる健康リスクであり、飲酒量や飲酒習慣を詳しく把握することを推奨する。

 

イギリスの「中流階級」=高収入・高学歴の富裕層

ところで、上記の研究結果で説明されている「middle-class phenomenon(中流階級現象)」について、「高収入・高学歴の富裕層」が、なぜ「上流階級」ではなく「中流階級」になるのか、疑問を抱きませんか?

 

イギリスの研究者が使う「中流階級」と日本人のイメージは少し違うようです。

 

イギリスはほぼ生まれで決まる階級を基にした階級社会です。

「上流階級」「中流階級」「労働階級」の3階級で構成されており、そのうち「中流階級」はいわゆるホワイトカラー層で、さらに「upper-middle-class」「middle-middle-class」「lower-middle-class」と3分割されることもあります。

 

「upper-middle-class」には医師・教授・弁護士などのいわゆる「富裕層」も含まれるため、日本人のイメージする「中流階級」とは差があるのです。

 

 

それにしても、今まで飲酒習慣がありながら健康そのものの50代なら、「適度なアルコールは健康にいい!今くらいのアルコール量ならなんら健康に問題はない!」と自ら太鼓判を押している人も多いはず。

 

たしかに適度な酒量を保てばむしろ健康によい影響を及ぼすことも分かっています。問題は、「問題がないと思い込んでいること」によって、いつのまにか過度の飲酒習慣に陥ってしまうことなのかもしれません。

 

 

【Sources】

Study links 'successful aging' with greater risk of harmful drinking(MNT)

'Successful aging' linked to harmful drinking among over 50s(Science Daily)

'Successful aging' linked to harmful drinking among over 50s: Healthy, active, sociable, and well off older people more at risk; 'middle class phenomenon' suggest researchers(Demanjo)

Well-Off, Active, Over 50? You May Be at Higher Risk for Problem Drinking(Health.com)


【筆者】佐藤まりこ

2001年旭川医科大学医学部看護科を卒業。2010年California RN Licenseを取得後、LAでRN(Registered Nurse)として活躍中。

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