確認ミスで筋弛緩剤誤投与、患者死亡―医療事故防止の絶対条件とは?
【ナース知っ得ニュース 2015/05/27】
60代の男性入院患者に誤って筋弛緩剤を点滴して死亡させたとして、薬剤師の女性1名と看護師の女性2名が書類送検されました。
この事故の原因は、薬剤師による薬剤の取り違えと看護師2名が確認を怠ったことでした。
筋弛緩剤誤投与で患者死亡 薬剤師ら3人書類送検(朝日新聞)
薬剤師からの誤薬を看護師2名が確認せず点滴
大阪市住吉区にある大阪府立急性・総合医療センターで、がん治療のために入院していた60代の男性患者が、誤って筋弛緩剤を投与され、数時間後に呼吸停止し、死亡しました。
事件の原因は、薬剤師の取り違えと看護師2人が確認を怠ったことでした。
薬剤師は、医師から指示を受けて抗生物質「マキシピーム」を棚から取り出そうとしたところ、誤って筋弛緩剤「マスキュレート」を取り出して病棟に配送。配送されてきた筋弛緩剤を看護師が受け取り、確認をしないまま男性患者へ点滴しました。
3名が業務上過失致死の疑いで書類送検
この件について薬剤師1名と看護師2名の3名はいずれも容疑を認めており、22日付けで大阪府警により業務上過失致死の疑いで書類送検されました。「厳重処分」に次ぐ「相当処分」の意見が付され、起訴の判断は地検にゆだねられる形になりました。
大阪府立急性・総合医療センターは、事故調査委員会を作り、事故の原因や再発防止策を検討しています。
誤薬による医療事故防止のために
安全管理を徹底することは看護師業務の基本ですが、このような誤薬による医療事故が起きてしまう背景には、たとえば、次のようなことが考えられます。
- ・個人としてもチームとしても、安全確認の意識付けが徹底されていない
- ・日頃の小さなミスが書面で報告されていない
- ・中止薬剤の管理不足
- ・チーム内での情報共有不足
- ・患者さんへの服薬説明がされていない
- ・多重業務
- ・深夜業務などによる確認不足
対策としては、ダブルチェックなどの安全管理の徹底や、危険予測などが考えられますが、重要なのはチーム内での密なコミュニケーションにあるといわれています。
コミュニケーションを密に行う具体的な対策としては、医師や薬剤師をはじめとした他の医療従事者と話し合う場を定期的に設けること、他職種の仕事内容の把握、研修・セミナーの実施、人手不足の解消などが挙げられます。
今回の事故も、薬剤師と看護師という職種をまたがったやりとりの際に起きたミスでした。職種や部署の壁を超えて組織としての連携ができていれば、防げた事故だったのかもしれません。
また、2013年には医師や看護師、薬剤師、歯科医師などが職種の垣根を越えて協力し、医療事故防止に取り組むための団体「一般社団法人 医療安全全国共同行動」が立ち上がっています。2014年10月時点では、全国の病院や診療所250施設ほどが参加しており、9つの具体的な行動目標を掲げて呼びかけることで医療事故防止に取り組んでいます。
(参考)
医療事故防止の心理学(対策)(一般社団法人 日本看護学校協議会共済会)
看護師が医師に「意見」も? 医療事故防止に現場が垣根越えて連携(産経新聞)
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