看護学校の先生になるには? 看護学校教員の仕事|病院外の看護現場探訪【7】

医療機関以外での看護師さんの働き方を紹介する「病院外の看護現場探訪シリーズ」。6回目の今回は、看護師の皆さんにもっとも身近な「看護学校教員」をご紹介します。

 

「生徒が成長する姿を身近で見られるのがいいですね」と話すのは小野寺里美さん。

小野寺さんの勤務先は、宮城県にある准看護学校です。2年制で生徒数は約80名。中にはほかの職種の経験者もいて、ときには自分より年上の生徒の指導に当たることもあるそう。年々男子生徒も増えています。

 

普段は制服での勤務。実習があるときは着なれたナース服に早変わり

 

看護の仕事に関わっていたい

看護学校の教員は、看護師として働いている皆さんにとってかなり身近な存在。しかし、どうやってなるかどんな仕事内容なのかなどは、知らない人も多いのではないでしょうか。

 

小野寺さんは看護師資格を取得後、総合病院へ入職しました。さまざまな診療科を経て、10年目に退職。その間には結婚と2人の子どもの出産も経験しました。

 

「二人目の子どもを出産してから、三交替の勤務が難しくなってしまって。ほかの仕事も視野に入れましたが、やっぱり看護の仕事に携わっていたいと思ったんです」

 

看護教員になるには、5年以上の臨床経験が必要です。さらに、看護教員養成講習会を受講するか、大学で教育に関する科目を履修して卒業しなければなりません。小野寺さんは看護学校に採用された後に通信制の大学で学び、教員となって6年目を迎えました。受け持ちの科目は「基礎看護技術」です。

 

●ある日のスケジュール(実習期間中)

 

受け持ちの授業がない時間も、ほかの教員の授業の補助をしたり次の授業の準備をしたり、授業時間終了後は生徒との面談などを行います。

 

看護師なら懐かしい(!?)校内実習用のベッド

 

実践の経験はあっても、それを教えるとなると話は別。ポイントを絞って効果的に伝えるために、準備は授業の45分以上に時間がかかってしまうこともあるそう。6~10月の病院実習期間は毎日、担当する実習先の病院を訪問することになるので、さらに大忙し。

 

「思っていたより大変です、授業の準備もこんなに時間がかかるとは思わなかった。だけど、看護の専門家を育てていると思うと、手は抜けません」

 

今は2月の准看護師試験に向けて、対策に追われているそうです。同時に、6~7割の生徒が看護学校などへ進学するので、そのための進路指導や試験対策もあります。

 

「できれば全員が合格して、希望の進路に就いてほしい。そのためには教員もかなりがんばらないとダメですね」

 

生徒の年齢層が幅広いこともあってか、面談では進学や就職の相談以外にも家庭や子どもの話にまで及ぶこともあるそう。「生徒と教員」も「患者と看護師」も結局は人と人との付き合いだから、と話す小野寺さん。指導するときも、相手が生徒である前に一人の大人である、ということを心がけているといいます。


取材した当日は洗髪の校内実習の日でした。3人一組で患者役、洗髪する看護師役、看護師の補助を行う副看護師役に分かれ、ケリーパッドを使って実習を行います。小野寺さんは男子生徒の実習の監督を担当。

 

ときどきメモを取ったり質問したり、生徒は真剣そのもの

 

まずは実習の受け持ちの教員の補助として、ポイントを説明しながら実演。ところどころで生徒の知識を確認したり、生徒からの質問に答えたりもします。

 

いざ、生徒の実習が始まると、教科書で手順は確認できていても初めての実習では戸惑うことばかり。
「患者さんの首が痛いかも、聞いてみて」「お湯の温度は確認した?」「急に体を動かされたら患者さんが驚くよ」
小野寺さんはさりげなく生徒に声をかけます。

 

「患者さんを目の前にしないと気付けないことってたくさんあります。ただ、働き始めたら1年目だろうがなんだろうが患者さんにとっては『プロ』ですから、自分の経験で役立つことがあれば何でも伝えていきたいです。実際『病院勤務中にこんなことがあった』って話をすると、興味を持ってくれるんです。眠そうにしていた生徒もパッチリ(笑)」

 

「ただ試験に受かるだけ」ではなく、「現場で活躍する看護師」を育てたい。小野寺さんは語ります。

 

自分の手元だけに集中してしまいがちな生徒に気付きを促す


「生徒からは怖いといわれることもありますが(笑)、現場に出ることを最終目的にしているからこそ、厳しいアドバイスになることもあります。知識や技術だけでなく接遇や態度など、教科書に載っていること以外にも知っておいてほしいことがたくさんあります。いつか『こういうことだったんだ』って思ってくれればいいですね」

 

病院勤務時代に実習の指導担当をしたこともあり、そのときの経験から「教える」ということに興味をもっていたという小野寺さん。看護師として働いているときは、患者さんがよくなって退院していくことにやりがいを感じていたといいます。しかし、「短期間で退院することが患者さんにとっては一番いいことだけど、その分深く関わることはできない」。そんなジレンマも抱えていました。

 

「今は1年とか2年とか、長い付き合いになりますから。少しずつ生徒が成長していくところを見られることが楽しいですし、自分がその手助けができればうれしいです。生徒のやる気に触れて、自分の看護観を見直せるのもいいですね」

 

自分が志しやりがいを持って働いていた仕事を、新たに志す人たちを教え導く。看護教員、すてきな仕事です。

 

【看護roo!編集部】

 

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