診療看護師(NP)とは?なるための方法やできること、特定看護師との違いを解説

診療看護師(看護師が取りたい資格図鑑)のページのMV

 

診療看護師(NP)は、患者さんのQOL向上のために、一定レベルの診療ができる看護師であることを証明する資格です。

 

この記事では、診療看護師(NP)ができること資格を取るための条件資格取得の難易度メリットなどを詳しく解説します。

 

 

診療看護師(NP)とは?

診療看護師(Nurse Practitioner:NP)とは、倫理的な視点や科学的根拠に基づき、一定レベルの診療を行うための知識・技術を身に付けた看護師です。

 

日本NP教育大学院協議会が定める診療看護師(NP)教育課程を修了し、認定試験に合格することで、診療看護師(NP)の資格を得ることができます。

 

国家資格ではないものの、担える業務が増えるため、医師からのタスクシフトによるチームの負担の軽減や、患者さんへの処置がより迅速に提供できるなどのメリットがあります。

 

2024年4月時点で、全国で872名の診療看護師(NP)が活躍しています。

 

治療をしている看護師のイラスト

 

診療看護師(NP)ができること

診療看護師(NP)は、資格取得の過程で「特定行為研修」を修了するため、一般の看護師よりも携われる業務範囲が広がるほか、チーム医療の要の存在として活躍できます。

 

 

医師の直接指示を待たずに特定行為を実施できる

特定行為とは、診療の補助として看護師が行う医行為のうち、医師の直接指示を待たずに、あらかじめ医師が作成した手順書にもとづいて実施できる38の医行為のことです。

 

実践するには、厚生労働省の定める「特定行為研修」の修了が必要となります。

 

▼特定行為一覧

 

  • 経口用気管チューブまたは経鼻用気管チューブの位置の調整
  • 侵襲的陽圧換気の設定の変更
  • 非侵襲的陽圧換気の設定の変更
  • 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
  • 人工呼吸器からの離脱
  • 気管カニューレの交換
  • 一時的ペースメーカの操作及び管理
  • 一時的ペースメーカリードの抜去
  • 経皮的心肺補助装置の操作及び管理
  • 大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
  • 心嚢ドレーンの抜去
  • 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
  • 胸腔ドレーンの抜去
  • 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む。)
  • 胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテル、または胃ろうボタンの交換
  • 膀胱ろうカテーテルの交換
  • 中心静脈カテーテルの抜去
  • 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
  • 褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
  • 創傷に対する陰圧閉鎖療法
  • 創部ドレーンの抜去
  • 直接動脈穿刺法による採血
  • 橈骨動脈ラインの確保
  • 急性血液浄化療法における血液透析器または血液透析濾過器の操作及び管理
  • 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
  • 脱水症状に対する輸液による補正
  • 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
  • インスリンの投与量の調整
  • 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整
  • 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
  • 持続点滴中のナトリウム、カリウムまたはクロールの投与量の調整
  • 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
  • 持続点滴中の糖質輸液または電解質輸液の投与量の調整
  • 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
  • 抗けいれん剤の臨時の投与
  • 抗精神病薬の臨時の投与
  • 抗不安薬の臨時の投与
  • 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整

出典:厚生労働省「特定行為とは

 

また、医師の直接指示のもと、腹腔穿刺や気管内挿管などの専門的な知識・技能が必要な医行為(相対的医行為)も実施できます。

 

 

チーム医療の「要」になる

診療看護師(NP)は、チーム医療の「要」として活躍ができます。

 

医学と看護の両方の視点を持つ診療看護師(NP)は、医師と看護師の橋渡し役になることができます。互いの意見や要望を調整し、それぞれの専門性が発揮しやすい環境を作ることで、チーム医療の質が高められるでしょう。

 

また、医師の業務のタスクシェアやタスクシフトにより、医師やチームの負担を軽減したり「忙しい医師には相談しにくい」と悩む看護師の相談役になったりと、チームワークの効果が最大になるような実践・コミュニケーションも期待されています。

 

 

診療看護師(NP)と特定看護師の違い

診療看護師(NP)とよく比較されるのが「特定看護師」です。

 

特定看護師とは、特定行為研修を修了した看護師の通称です。特定看護師という資格はなく、正式な名称ではありません。

 

この特定看護師と違って、診療看護師(NP)は、特定行為研修の修了に加え、大学院の修了が必要になります。

 

大学院では、病態生理学、臨床薬理学、フィジカルアセスメントなど、臨床推論に基づき的確な診療行為が提供できる知識・スキルのほか、チーム医療を推進するための多職種連携、リーダーシップ論なども修得します。

 

そのほか、試験の内容などについては、以下のような違いがあります。

 

診療看護師(NP)と特定看護師の違い

  診療看護師(NP) 特定看護師
資格 日本NP教育大学院協議会が認定する民間資格 資格ではない
(厚生労働省の研修制度)
条件
  • 看護師としての5年の実務経験
  • 大学院の修士課程の修了
明確な条件はなし
(3~5年の実務経験が目安)
資格取得や研修修了
までの流れ
大学院で修士課程を修了後、診療看護師(NP)認定試験の合格で資格取得 特定行為の中から受講したい区分別科目を選択し、研修を修了
教育機関 大学院(診療看護師(NP)養成コース) 特定行為研修を実施している大学・大学院・病院
資格の更新手続き 5年ごとに更新が必要 更新の必要なし

 

 

診療看護師(NP)になるには?

診療看護師(NP)になるために知っておきたい資格取得の条件試験内容費用などについて確認しましょう。

 

 

診療看護師(NP)になるまでの流れ

診療看護師(NP)は、以下の流れで取得します。

 

診療看護師になるまでの流れを表した図版。5年の看護師の実務経験→大学院に入学→認定試験→診療看護師の登録

 

診療看護師(NP)養成コースを開講している大学院は全国19校あり(2024年12月時点)、この中のどれかに受験・入学します。

 

  • 北海道医療大学大学院
  • 秋田大学
  • 東北文化学園大学大学院
  • 山形大学大学院
  • 東京医療保健大学大学院看護学研究科
  • 国際医療福祉大学大学院
  • 佐久大学大学院
  • 藤田医科大学大学院
  • 愛知医科大学大学院
  • 島根県立大学大学院
  • 大分県立看護科学大学大学院
  • 富山大学大学院
  • 森ノ宮医療大学大学院
  • 東京医療保健大学大学院医療保健学研究科
  • 令和健康科学大学
  • 大阪大学大学院
  • 聖隷クリストファー大学大学院
  • 名古屋市立大学大学院
  • 純真学園大学大学院

参考:日本NP教育大学院協議会「大学院教育課程認定について

 

 

診療看護師(NP)の資格試験のスケジュール

診療看護師(NP)の資格試験は受験申し込みから合格発表まで約1カ月という短期間で行われる点が特徴です。

 

詳しいスケジュールを見てみましょう。

 

診療看護師の資格試験のスケジュール2月上旬に審査申請3月初旬に試験があり、3月末までに合否判明

参考:日本NP教育大学院協議会「2024年度第15回NP資格認定試験受験の手引き

 

合格発表の翌日から2カ月間、成績開示が行われます。希望する場合は申請が必要なので注意しましょう。

 

 

診療看護師(NP)の資格試験はどこで行われる?

診療看護師(NP)の資格試験は毎年1カ所で開催されます。

 

2023年度までは東京で行われ、2024年度は「ウインクあいち(愛知県名古屋市)」での開催です。

 

会場によっては宿泊場所や交通機関の手配が必要なため、計画的に受験の準備を進めましょう。

 

 

診療看護師(NP)の試験内容と難易度

診療看護師(NP)の試験は以下のような内容です。

 

 

試験形式

筆記試験(実技試験などはなし)

 

 

受験領域

共通科目と、以下3つの中から選択します。

 

  • プライマリ・ケア(成人・老年)
  • プライマリ・ケア(小児)
  • クリティカルケア

 

試験内容

診療看護師(NP)としての任務を果たすために必要な基本知識や技能について主に出題されます。

 

大学院修士課程の講義や演習、実習で扱われている内容以上の問題が出される可能性もあり、臨床現場での経験も生かして試験勉強に取り組む必要がありそうです。

 

 

試験の難易度

診療看護師(NP)の認定試験の合格率や合格者の公式発表はありません。大学院での幅広く専門的な学習内容が出題されるため、難易度は高いでしょう。

 

 

診療看護師(NP)になるために必要な費用

診療看護師(NP)になるには、大学院への入学金や授業料、試験料などトータル200万円以上かかります

 

資格取得にかかる費用例

大学院

  • 入学試験受験料 30,000円
  • 入学金 300,000円
  • 授業料 1,200,000円
  • 教育充実費 200,000円

 

認定試験

  • 試験料 30,000円
  • 診療看護師(NP)認定料 10,000円

 

費用に関しては、日本学生支援機構の奨学・給付制度などを利用することもできます。

 

 

診療看護師(NP)の年収は?

診療看護師(NP)の給料や年収について、統計データはありません。

 

ただ、多くの病院で資格手当が支給されているようです。実際に、「基本給にプラスして診療看護師(NP)の資格手当がある」と約7割の方が回答している報告(令和5年度 診療看護師(NP)活動実態調査報告)もあります。

 

 

診療看護師(NP)になるメリット

診療看護師(NP)になると、次のようなメリットがあります。

 

診療看護師になるメリットをまとめた図版。1治療や看護が迅速に行える、2スキルアップにつながる

 

1治療や看護がより迅速に行える

診療看護師(NP)は一定レベルの診療行為を自律的に提供できるため、あらゆる場面で治療や看護をより迅速に行えるようになります。

 

患者さんのQOLの改善だけでなく、医師や他の治療スタッフの負担軽減にもつながり、職場環境の改善にも貢献できる可能性があります。

 

 

2スキルアップにつながる

診療看護師(NP)になることで、担える業務の幅が広がって、医療従事者として多くの経験を積むことができ、看護師としてのスキルアップにつながります

 

また、資格取得のための勉強を通じて高めた知識を、ほかの看護師の育成に活かすことで、医療における視野を広げたり、臨床以外の経験も伸ばすことができます

 

 

まとめ

診療看護師(NP)は、患者さんのQOLの向上のために、あらゆる場面で治療や看護をより迅速に行うスキルを修得できる資格です。

 

資格取得のハードルは高いですが「より高いスキルや専門知識を持って患者さんと向き合いたい」「患者さんと看護師と医師の三者をつなぐ要となりたい」などと考える看護師さんは目指してみたい資格の一つでしょう。

 

執筆:看護roo!編集部

 

【訂正とお詫び(2024年12月17日)】

2024年11月27日に公開しました記事内容に誤りがございました。お詫び申し上げますとともに当該部分を訂正いたしました。

 

 

 

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