FASTとは・・・
FAST(ふぁすと、Focused Assessment with Sonography for Trauma)とは、外傷の初期診療における出血の有無を確認するための超音波検査である。
Primary SurveyにおけるABCDEアプローチのうち、C(Circulation、循環)の評価に用いる。
目的
ショックの原因となる、大量血胸、心嚢液貯留、腹腔内出血、後腹膜出血などを検出するために行う。
ショックの原因検索に有用だが、ショックでなくとも上述の病態の有無を評価することができる。
なお、病院前診療でも、ポータブルの超音波診断装置にて評価が可能である。一方、術者による検査の質の差が大きいことは欠点である。
禁忌
特に禁忌はない。FASTは侵襲性が低く、妊婦や小児にも行え、また、繰り返し行うことで病態の悪化にいち早く気が付くことができる。
手順
検査の手順は、①心窩部、②モリソン窩および右胸腔、③脾臓周囲および左胸腔、④膀胱周囲でダイアモンド型にプローベを当てていく(図)。胸腔・腹腔内に出血を含む体液の貯留があれば、エコーフリースペース(超音波画面上は黒色)として描出される。
E-FAST
気胸の評価を加えた、E-FAST(Extended Focused Assessment with Sonography for Trauma)という手法もある。
気胸の評価は、前胸部にプローベを当て、lung sliding(呼吸 にしたがって胸膜ラインが動くこと)の有無を確認する。
本来、壁側胸膜と臓側胸膜は接し、超音波検査ではpleural line(胸膜ライン。超音波画面上は白色)を呈するが、気胸によって壁側胸膜と臓側胸膜の間に空気が存在するとlung slidingは消失する。
引用参考文献
1)日本外傷学会外傷初期診療ガイドライン改訂第6版編集委員会編.一般社団法人 日本外傷学会ほか監.改訂第6版 外傷初期診療ガイドラインJATEC.へるす出版,2021,p354.