糖尿病網膜症とは・・・
糖尿病網膜症(とうにょうびょうもうまくしょう)とは、長期間にわたり高血糖が持続することによって網膜の細い血管(細小血管)が障害され、網膜やその内側の硝子体に多彩な病変をもたらす血管が原因の疾患である。
糖尿病網膜症は糖尿病腎症、糖尿病神経障害とともに糖尿病の3大合併症の一つとして数えられ、わが国の成人の失明原因で常に上位を占める重要な疾患の一つである。
病態
糖尿病では凝固因子の増加、線溶活性の低下、血小板機能の亢進が認められ、血栓形成を起こしやすくなる。これらが網膜の細小血管で生じることにより、血管閉塞を来してしまう。閉塞した血管から先には十分な酸素が供給されなくなり、網膜が酸欠状態に陥ってしまう。そこで、代償的に新しい血管(新生血管)を形成し、酸素の供給をまかなおうとするが新生血管は脆弱であるため容易に出血してしまう。出血部位には修復過程で増殖組織が形成され、これにより牽引性の網膜剥離を来す。網膜剥離部位は視野欠損となり、網膜剥離が黄斑部(視力に重要な場所)に及ぶと高度の視力低下に陥る。
分類
糖尿病網膜症の病期には「改変Davis分類」「新福田分類」「ETDRS分類」「国際重症度分類」が提唱されている。
国内で広く使用されている改変Davis分類では、重症度に応じて(1)網膜症なし、(2)単純糖尿病網膜症、(3)増殖前糖尿病網膜症、(4)増殖糖尿病網膜症の4期に分類され、各病期には特徴的な所見を示す(表1)。
表1改変Davis分類における病期別・眼底所見
なお、糖尿病網膜症は初期だけでなく進行した段階でも自覚症状を欠くことが多く、重篤になるまで自覚症状がないのが特徴である。無症状であるから眼科受診の必要性はないと誤認している場合もあり、定期的な眼科受診を促すことが極めて重要である。