看護師のお悩み「医師とのコミュニケーションでモヤモヤする」について現役医師3人に聞いてみた!
看護師なら誰でも一度は経験する医師とのコミュニケーション不全。
看護roo!のアンケートでは、7割以上のナースが「医師にイラっとする言葉を言われた」と回答しています。
どうしたら看護師-医師間のコミュニケーションがより良いものになるのか、SNSでも活躍中の現役医師3人にお話を聞きました!
看護師の3つのお悩み。けいゆう先生・ほむほむ先生・おーつか先生の回答は?
こちらの3名は「#SNS医療のカタチ」というイベントを主催。患者-医師間のコミュニケーションエラーを改善していこうと取り組んでいます。
患者-医師間だけでなく、看護師-医師間のコミュニケーションエラーについても解決策を示してくれるのではないか…。
そんな思いから、編集部に寄せられたナースのお悩みをぶつけてみました。
【お悩み1】医師がなかなか指示を出してくれない。どうしたら…?
薬や指示の依頼をしても、すぐには出してくれない医師がいます。
あとで声をかけると「あー、忘れていた」と言われます。どうしたら一度で指示をもらえるのでしょうか?
(看護師2年目、みみさんのお悩み)
詳しい状況まではわからないですが、もしその原因が医師個人の怠慢なら、看護師長に相談して、医師側に話を通してもらうのが筋ではないかと思います。
若手看護師の声には耳を傾けない医師でも、師長や自分の上司から注意を受けることで、変わる人はいるかもしれません。
「医師個人の怠慢だとするなら、若手看護師1人で抱えなくてよい」と山本さん
この相談文だけで答えるのはなかなか難しいですね…。
そもそも、看護師が医師にそこまで気を遣う必要があるのか、という問題もあります。
それでも、まず思うのは、その医師との信頼関係づくりにトライしてみてはどうか、ということです。
医師がどんな人かわかろうとしないで「指示だけもらいたい」と考えてしまうと、コミュニケーションはすれ違ったままです。
あとは、病棟全体で揉めることはあまりないと思うので、その医師と仲の良い看護師がいれば相談して、対応のコツを聞いてみてもいいかもしれません。
「いろんなタイプの医師がいますからね」と、その医師の特徴をつかむのもコツの一つだと大塚さん
看護師と医師は「患者さんの治療をスムーズに行う」という共通の目的をもっています。
だけど、看護師は日々業務に追われ「指示をもらわなきゃいけない」と思うあまり、治療全体の優先順位がみえなくなることもあると思います。
治療をスムーズに行うという大きな目的の中で、看護師の「指示をもらう」という行動は全体の一部です。
そこで、患者さんや医師の状況、全体の動きを見ながら、優先順位を考えてみてもいいかもしれません。
とはいえ、看護師として特に若手の時期は、目の前の仕事でいっぱいいっぱいで、すごく忙しいですよね…。
医師も人間なので、忘れることはありえますし…。
お互いの状況を理解したうえで、協働できるといいですよね。
堀向さんは「患者さんの治療をスムーズに」という共通の目的を、看護師・医師ともに念頭に置くことが大事、と語る
【お悩み2】指示出しを催促すると怒られてしまう。どうしたら…?
オペが決まった患者さんに対し、カルテに点滴などの指示がありませんでした。
医師に指示を確認するために声をかけたら不機嫌で「いちいち聞くな」と怒られました。
医師の機嫌を見ながら報告や指示確認をするのが嫌になります。
(看護師3年目、はるはるさんのお悩み)
看護師は、指示がないと動けない状況だということはわかりますが、医師がどんな状況なのかも考えてみると、衝突を防げるかもしれません。
僕も正直、外来のときはあまり話しかけてほしくないですし…。
たとえば、外来の前に話ができたはずなのに、外来中に電話が来れば、嫌がる医師がいるのも無理はないと思います。
僕が前にいた病院では、「外来中」「手術中」など、現在の医師の状況が電子カルテで一目瞭然だったんです。
「今なら声をかけても大丈夫だ」と一目でわかるようになっていました。
医師と看護師の連携がスムーズになるようにと、医師からの働きかけで実現したシステムだと聞いています。
良い改善例ですね。
システムで解決できることと、個人でできることは、分けて考えるべきだと私も思います。
医師も看護師も、システムの活用でコミュニケーションが楽になる場合があると話す
情報共有の仕組みを少し変えるだけで、コミュニケーションが改善する場合は多いと思います。
以前勤務していた病棟では、情報の管理がうまくないところがありました。
たとえば、受け持ち看護師とリーダーが同じ内容の質問で、医師に電話をかけてくることがありました。
一方で、リーダーなどに情報を集約して、その人が電話をかけると決まっていた病棟もありました。
後者の方が圧倒的に情報がスムーズに巡りますよね。
医師が不機嫌な原因が、もしそういった仕組みにあるなら、改善の余地はありそうです。
山本さんは「医師の不機嫌は、仕組みで回避できるかもしれない」とアドバイス
ほかにも、医師と看護師の連絡板として、ホワイトボードを活用していた病棟もありました。
医師への依頼が一覧になっているので、ナースステーションに来るとまずそれをチェックしていました。
そのあと、リーダーに声をかけます。
「今、なにか用事ないですか?」と。
「聞きたいことがあったのに、ドクター行っちゃったよ~」という状況を避けるためです。
そうしても、あとから電話が来ることもありますよ。
それでも全然大丈夫です。
ある程度、仕組みで改善したあとは、お互いに100点満点を求めてもうまくいかないと思います。
大塚先生が最初に言っていたように、日頃のコミュニケーションで関係性を築いて業務をすることが大事ですね。
そうですね。
人はミスをするという前提でお互いにやっていけたらいいです。
お互いのミスをフォローする体制が大事だという
【お悩み3】処方を出したときに報告してくれない。どうしたら…?
患者さんに新たに薬を追加して処方する際、いつから(今日の何時からなど)、何のためにか、看護スタッフの誰にも報告せずに、気づいたら処方が立っている時があります。
与薬が本日からだったら、薬剤科に取りに行ったり、準備が間に合うか問い合わせたりしないといけません。
またもし追加されたことに気づけなかった場合に、患者さんに確実な与薬ができないという、インシデントにもつながる可能性があります。
私の病院だけの可能性もありますが、処方する際、スタッフ1人だけにでも報告していただきたいと思っています。
(看護師3年目、にゃっきっきーさんのお悩み)
電子カルテの普及により、遠隔で処方を立てられるので、看護師に声をかけない医師もいるのかもしれません。
それで、弊害が出るなら「処方したときには看護師に声をかける」というルールづくりを検討してもいいのかもしれませんね。
声をかけるのは処方した直後でなくてもいいので。
「何のために(処方が出ているの)か、報告がない」と、相談文にありますが、医師はカルテに処方の理由を書く必要があると思っています。
僕は、なぜこの処方を出すのか、いつからなのかをすべて書きますし、看護師の記録も確認します。
カルテの記録は医師と看護師の交換日記だと思っているからです。
そのくらい看護師とのコミュニケーションを大切にしています。
「システムの活用とお互いの少しの努力で、コミュニケーション不全は改善する」と山本さん
看護師も医師も、仕組みやシステムを活用しつつ、お互いの業務を理解して
私たち看護師は忙しいので、つい「1回で指示をもらいたい…」「今、指示がほしいのに!」と感じてしまいますよね。
でも、医師側からすると「このタイミングでそれ聞く?」とか、「何度も同じことを聞かれるなぁ…」と思っていることもあるようです。
仕組みやシステムの活用も大切だというアドバイスがあったように、看護師側の少しの工夫でストレスを減らすこともできそうです。
それでもダメなら、「1人で抱え込まず、組織的な改善を求めても良い」というアドバイスも心強いですね。
看護師・医師ともに「患者さんの治療をスムーズに行う」という目的は同じ。
完璧を求めすぎず、歩み寄る姿勢が大切になりそうです。
◎まとめ
▼治療全体の優先順位に目を向けたうえで、医師に声をかけるタイミングを調整してみる。
▼医師も人間。ミスすることもあるし、忘れることもある。日ごろからコミュニケーションをとり、フォローし合える関係づくりを。
▼必要なら上長に相談し、医師に改善を求めたり、システムや仕組みを改善してもらえるように働きかける。
文/白石弓夏(看護師・ライター)
撮影・編集/坂本綾子(看護roo!編集部)
山本健人 やまもと・たけひと
(ペンネーム:外科医けいゆう)
医師。専門は消化器外科。
平成22年京都大学医学部卒業後、複数の市中病院勤務を経て、現在京都大学大学院医学研究科博士課程。個人で執筆、運営する医療情報ブログ「外科医の視点」で役立つ医療情報を日々発信中。資格は外科専門医、消化器外科専門医、消化器病専門医、がん治療認定医 など。
「外科医けいゆう」のペンネームで、TwitterやInstagram、Facebookを通して様々な活動を行い、読者から寄せられる疑問に日々答えている。
堀向健太 ほりむかい・けんた
医師。専門は小児科、アレルギー科。
平成10年、鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院および関連病院での勤務を経て、平成19年、国立成育医療センター(現国立成育医療研究センター)アレルギー科。
平成24年から東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科助教。
日本小児科学会専門医・指導医。日本小児アレルギー学会評議員。日本アレルギー学会専門医・指導医。
平成26年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初の保湿剤によるアトピー性皮膚炎発症予防に関する介入研究を発表。
平成28年、ブログ「小児アレルギー科医の備忘録」を開設。「ほむほむ」のペンネームでTwitter、Instagram、noteで出典の明らかな医学情報の発信を続けている。
大塚篤司 おおつか・あつし
医師。皮膚科専門医、がん治療認定医。
平成15年、信州大学医学部卒業。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員を経て、京都大学医学部特定准教授として診療・研究・教育に取り組んでいる。
専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー皮膚疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。
コラムニストとしてネットニュースやTwitterでの医療情報発信につとめている。
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