サンリオピューロランドナースのお仕事に密着【前編】|病院外の看護現場探訪【5】

医療機関以外で働く看護師さんのお仕事の様子を紹介する「病院外の看護現場探訪」シリーズ。

今回は、テーマパークで働く看護師のお仕事に密着します。

 

 

取材をさせていただいたのは、2013年7月にオープンした新エリア『サンリオタウン』が話題の人気テーマパーク、『サンリオピューロランド』。

こちらの救護センターで働いているのが、小泉富子さん。勤務歴10年のベテランです。

 

小泉さんの仕事は大きく分けて2つあります。

1つは、看護師として。

館内の救護センターに常勤し、ケガをしたり、病気になったゲスト(来場者)のケアを行います。

 

もう1つは、館内の安全を見守る"サンリオピューロランドのお母さん"として。

ゲストがケガをする可能性のある場所を見つけて、対策を行い、未然に事故を防ぎます。

 

「『サンリオピューロランド』は楽しい思い出をつくる場所。私の仕事は、思いがけず救護センターを訪れることになったゲストでも、自分の対応によって、笑顔で館内に遊びに戻られたり、日を改めて来場していただけるようになってもらうこと。また、何よりも、ケガをせずに安全に遊べるように、館内をすみずみまでチェックして、危険を取り除いていくことです」

 

今回は、「サンリオピューロランドナース」である小泉さんの1日の仕事内容に密着取材しました。

 

 

「サンリオピューロランドナース」の1日に密着!

 

小泉さんが勤める救護センターは、サンリオピューロランド内にあるエリア『ピューロビレッジ』の一角、『インフォメーション』の中にあります。

 

 

『インフォメーション』は、会場内のアトラクションチケットが購入できる『チケット売り場』、お母さんが赤ちゃんに母乳をあげることができる『ベビーセンター』、そして『救護センター』の3つの施設から構成されています。

 

救護センターはこちら。

 

 

手前に、診察用のベッドが1台。そして、奥にはゆっくりと休むことができるベッドが3台。

いたるところに、キティちゃんをはじめとした、サンリオの仲間たちがいます。

このように、救護センターの室内を可愛くあしらっているのには、小泉さんの思いがあります。

 

 

「救護センターといっても、ここもテーマパークの一部ですから、ケガや病気になってこの部屋に来たことを、少しでも嫌な思い出にしてほしくないんです」

 

1日の仕事スケジュール

 

■9:30 出社~オープン前の準備

 

部屋の掃除から1日の業務がはじまります。

毎日、就業後に掃除をしていますが、念入りに雑巾をかける小泉さん。

 

「清潔を保たないといけない、という意識もありますが、少しでも汚れていたら、テーマパークじゃなくなってしまうんです」

 

 

■10:00 パーク開園

 

館内に、開演を告げるチャイムが鳴ると、小泉さんもインフォメーションの入り口に立ち、笑顔でゲストを出迎えます。

 

 

しばらくすると、小泉さんは、救護センターではなく、「チケット売り場」のレジに入りました。

レジ作業も、サンリオナースのお仕事なのでしょうか?

 

 

「急患がいないときは、看護師も、サンリオピューロランドのスタッフの1人として働きます。なので、レジ業務や、ランド内の案内、迷子のゲストの対応などもすべて、私の仕事ですよ」

 

 

ただ、看護以外の業務をしているときでも、体調の悪いゲストはいないかどうか、常に看護師の目線でチェックし、気になる方がいれば、すぐに声をかけるようにしています」

 

 

急変があったときの対応例

 

さて、実際に急患があったときには、どのように対応しているのでしょうか。

 

(1)会場内で体調の悪い人や急患があると、会場内のスタッフから、小泉さんの無線に連絡が入る

 

(2)無線を受けると、AED(オレンジのバッグ)とFAバック(黒のバッグ。アンビューや血圧計が入っている)を持って現場へ急行

事前に「患者さんが動けない」と連絡があったときは、車いすも準備しておきます。

 

(3)現場に到着次第、すぐにゲストの状態の確認

周辺の混乱を防ぐため、移動できる場合は救護センターへ搬送し、移動が難しい場合のみ、その場で処置をします。

 

(4)その後は、状況や症例に合わせて、臨機応変に判断し、対応する

 

多くの場合は、救護センターで処置をした後、少しベッドで休んでもらい、再び館内へ遊びに行ってもらえるように配慮します。

 

詳しい診断や治療が必要だと判断した場合は、近くの病院を紹介したり、時には救急車を呼ぶことも。その最終的な判断を行うのは、小泉さんです。

 

「救護センターは、『病気を治す場所』ではなく、『また園内に遊びに行けるように休んでもらう場所』、と考えています。なので、物品や絆創膏や消毒液、包帯など、あえて、学校の保健室にある程度のものしか置いていません。治療をしない分、大切になってくるのは診断を即座に行うこと。詳しい検査が必要と判断した場合は、すぐに近くの病院に連絡をします」

 

 

また、救護センターを訪れたゲストのために行っているのが、声掛けです。

 

「ケガや病気をして救護センターに来たことで、ピューロランドでの思い出を、悲しいものにしてほしくないんです。特にお子さんのゲストには、『少し休んでいって、元気になったら、またキティちゃんに会えるね』などの声掛けを積極的に行っています。中には、傷口にキティちゃんの絆創膏を貼るだけで元気になるお子さんもいるんですよ」

 

 

ゲストの対応が終わったら、症状・主訴・対応などを記録として残します。病院でいえば、カルテにあたるもの。多い日は1日で20人、平均だと10人前後の方が救護センターを利用するそうです。

 

 

■11:15 休憩

社員食堂でランチを取ります。

 

■12:00~13:00 パレード(準備~本番)

サンリオピューロランドでは、1日に2回ほど、サンリオキャラクターが総出演のパレードが行われます。

その際、救急時のための導線確保を行うのも、小泉さんの仕事です。

 

「パレードのときは、たくさんの人が足を止めてパレードを鑑賞するので、通れない場所ができてしまいます。そのため、混雑の中でも、何かあればすぐに駆けつけられるように、導線を確保しておきます。車いす用のスペースの確保も行っています」

 

 

約30分間に渡って行われるパレードは、サンリオピューロランドの大きな見どころ。

 

 

ただ、通常時より照明が暗くなるので、それによりケガが発生しないかなど、普段より注意を張り巡らせるそう。

 

「足元が暗くなることにより、転倒リスクも高まりますが、例えば、パレードの列に子どものゲストが飛び出さないか、などにも注意を配っています。飛び出しそうなゲストがいたら、『ちょっとだけ下がってね』など、なるべく楽しんでいる時間の邪魔にならないように優しく、だけどしっかりと声掛けをして、事故が起こらないよう注意しています」

 

 

■17:00 閉園

片付けや清掃、ベビーグッズの補充等を行った後、終礼を行います。

全てが終われば、1日の業務は終了です。

 

 

ちなみに、取材日は、夏休み期間中の繁忙期でした。

館内は多くのゲストで賑わっていましたが、閉園まで1人も救護センターに訪れる人はいませんでした。

 

「私が1日ヒマだったということは、ゲストの誰もケガや病気をしなかったということなので、それが一番いいことなんです」

 

と、小泉さんは取材スタッフに話してくれました。

 

後編では、看護師の目線から館内の安全対策に取り組む、小泉さんのお仕事に密着します。

 

【後編】サンリオピューロランドナースのお仕事に密着

【番外編】かんごるーちゃん、サンリオピューロランドに潜入の巻

 


【プロフィール】

小泉富子(こいずみとみこ)さん。看護師歴24年。周産期センターや大学病院各科の外来、クリニックなどを経験後、10年前より『サンリオピューロランド』勤務。きっかけは、子育てが一段落し、常勤で夜勤のない仕事を探していたときに、新聞の折込広告で求人を見つけたことから。好きなサンリオキャラクターは誕生日が同じ『タキシード・サム』

 

サンリオピューロランド

京王線・小田急線・多摩モノレール線多摩センター駅より徒歩約5分

http://www.puroland.jp/

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