看護師が“ほんとうに”毎日できる腰痛予防の方法5つ!|腰痛で休職したことがあるナースが効果を検証

看護師が本当に毎日できる5つの腰痛予防法をまとめイラスト

 

「入浴介助、介護度が高い患者さんの担当ばかりで、20代なのに腰痛になった」「立っているのもつらいくらい腰が痛い」「腹筋やストレッチなどの効果は知っているけど、毎日続けるなんてできない」

これは看護師11年目の筆者が、20代のときに思っていたこと、現実に起こったことです。

実際に、腰痛が原因で休職するまでになってしまいました。

 

予防法は数あれど、忙しいと毎日なんてできません…。

そこで、

「最低限これだけ守っていたら大丈夫!」という5つの方法理学療法士の吉田直紀さんに教えてもらいました。

本当に毎日できるのか、そして効果的なのか…勤務中に実践して検証もします!!

 

文/白石弓夏(看護師・ライター)

監修/吉田直紀(理学療法士)

 

 

 

腰痛予防の基本
【同じ姿勢を長時間つくらない】

 

腰痛予防の最大のポイントは「同じ姿勢を長時間つくらないこと」です。

 

ただ、看護師の仕事は、立ちっぱなし、座りっぱなしになりがち。そこで、業務中に簡単に意識できる姿勢変更の方法を3つ紹介します。

職場の状況や、働き方に応じて、トライしてみてください。

 

 

Try(1)立った状態で骨盤を前後に動かす

病棟の日勤は立ち仕事が多いもの。

本来は、立ったり座ったりするだけでも骨盤の位置が変わるので、腰痛予防の動作になります。

 

でも、すぐに座ることができないのが実情。そんなとき立ったままでもできる方法を紹介します!

 

腰痛予防法Try(1)を説明するイラスト。たった状態で骨盤を前後に動かす。骨盤後傾と骨盤前傾を繰り返す。(できれば10回。時間がなければ1回でも)

 

腰を前後に動かすことがポイントです。

さらに、手を体の前で組んで腰を丸める(骨盤後傾)と、ストレッチ効果が高まります。

逆に、腰に手をあてて反らせると、骨盤前傾しやすくなります。

 

手を伴った動作ができないときは、腰を小さく動かすだけでもいいので、業務の合間にトライしてみてください。

 

 

Try(2)座った状態で骨盤を前後に動かす

患者さんが就寝した夜勤の深い時間。

看護記録などで比較的座りっぱなしの時間が出てくる頃です。

Try(2)では、座ったままできる腰痛予防の方法をお伝えします。

 

腰痛予防法Try(2)を説明するイラスト。座った状態で骨盤を前後に動かす。骨盤後傾と骨盤前傾を繰り返す。(できれば10回。時間がなければ1回でも)

 

このイラストのように、座ったままでも骨盤の位置を変えることができます。

できれば、気がついたときに、ちょこちょこ動かすのが理想。

 

でも、業務中はそうもいかないと思うので、30分から1時間に1度を目安に、行いましょう。

 

 

Try(3)立った状態で片足を上げる

Try(1)と、Try(2)では、腰を前後に動かすことで骨盤の位置を変える方法をご紹介しました。

Try(3)は、立ちっぱなしで腰を動かせないときでも行える方法をお伝えします。

 

立ちっぱなしのカンファレンスや、申し送りの最中に試してみてください!

 

腰痛予防法Try(3)を説明するイラスト。立った状態で片足を上げる。5分程度キープしたあと、まだ時間があれば足を入れ替える。骨盤位置が通常の直立と異なるため、腰への負担を軽減できる。

 

この方法は両足を揃えて立っているときとは、骨盤の位置を変えられることがポイントです。

片足を上げることで、通常の位置と変化させられるので、腰への負担軽減につながります。

 

 

なぜ同じ姿勢を作らないことが大事なのか?

同じ姿勢をとり続けると腰に一定のストレスが加わり血液循環が悪くなります。

 

だからこそ姿勢を変えて動き続けることが腰痛予防の第一歩。

 

また骨盤と腰椎は連動して動きます。

骨盤を丸めると腰椎も丸まり、骨盤を反ると腰椎も反ります。

意識的に骨盤を動かすことによって腰椎のストレスも緩和され、腰痛予防につながります。

 

 

Try(4)骨盤から前にかがむ

次に、看護業務で行う動作の一環として実践できる方法を紹介します。

 

看護の動作では、かがむことが多いですよね。

そのとき実践することで、腰の負担を軽減できる方法をお伝えします。

 

腰痛予防法Try(4)を説明するイラスト。骨盤から前にかがむ。骨盤を意識して腰を反らせ、そのまま上半身を倒す。清拭や、おむつ交換、移動介助の場面で使える。背中を丸めたままかがむのはNG!

 

清拭やおむつ交換、移動介助などで使える基本姿勢です。

 

一番のポイントは、腰を反らせてかがむことです。背中は丸めず、お尻を突き出すようなイメージでやってみてください。

 

そうすることで、骨盤と腰椎のポジションが固定され、腰の負担を軽減できます。

 

 

なぜアーチ型ではなく骨盤前傾・腰椎前弯にすると腰のストレスが減るのか?

骨盤は前傾、腰椎は前弯することによって安定します[Try(4)の図中、OKの姿勢]。

 

元々腰椎は前弯するように作られています。

腰椎前弯が崩れてしまうと椎間板にかかる圧が大きくなります[Try(4)の図中、NGの姿勢]。

 

また腰回りの筋肉を支えるインナーマッスルの筋力低下を起こします。

背筋を伸ばして骨盤前傾を保つ姿勢で、かがむようにしましょう。

 

 

それでも痛くなってきたときの対処法

Try(5)骨盤中間位をキープ

Try(1)~(4)をやっても、もしくはTry(1)~(4)を思うように実践できず、痛みが出てしまったときは骨盤中間位をキープして腰の負担を軽減しましょう。

 

骨盤中間位は、骨盤前傾と骨盤後傾の中間の位置(通常位置)のこと。

腹筋を意識して、猫背にも反り腰にもならない姿勢をキープします。

必要であれば、コルセットを巻きましょう。

 

それでも痛みが出てしまったときの腰痛予防法Try(5)を説明するイラスト。骨盤中間位をキープ。腹筋を意識して骨盤中間位で骨盤をキープ。必要ならコルセットを巻き、腹筋を意識しなくても骨盤中間位をキープできるようにする。

 

痛みが出たときは、骨盤中間位をキープすることが大事ですが、勤務中は腹筋を常に意識することも難しいですよね。

 

コルセットを巻くことで、骨盤位置がキープしやすくなります。

痛みが出たときは、無理せず活用していきましょう。

(痛みがひどいときは、上長に相談のうえ担当業務の変更や、休憩や早退、通院治療などの対応をしてください)

 

 

コルセットを利用するメリット

腰を守るのは深層にあるインナーマッスル。

その1つの「腹横筋」という筋肉の役割に似た作用をしてくれるのがコルセットです。

 

腰を横方向から圧迫して安定させます。

インナーマッスルのサポートをしてくれるため、腰を安定させ痛みを緩和する効果が期待できます。

痛みがつらくて我慢できない人は、コルセットを利用するのも1つの方法です。

 

 

腰痛を抱える看護師が4日間実践!効果的なのか検証

さて、本当にこの方法で腰痛が予防できるのか…。

業務中に実践してみることにしました!

 

私の現在の腰痛レベルはこちらです。

・2~3時間立つ仕事で腰が痛くなる

・2~3時間座っているのも腰がつらい

・日勤だと15時くらいにどっと腰に疲れが出てしまい、気分も沈む

 

「腰痛を悪化させないポイントの4つくらいなら、私でも続けられるかもしれない…」と思い、4日間試しにやってみることにしました!

※私は派遣で看護師をしているので、働く場所がさまざま。いろんな職場でのパターンを紹介します。

 

 

1日目:整形外科の病棟

1日目は、整形外科の病棟勤務中に実践。

病棟では、術後の患者さんが多いので、処置の介助、移動介助がメインの仕事でした。

 

こんな風に実践

処置の介助、移動介助を行うときは、「Try(4)骨盤から前にかがむ」をメインに実践。

 

気づいたらあっという間に時間が過ぎていて、仕事が重なると、忘れてしまって実践できないこともありました。

 

感覚としては、かがむ動作を数十回行ったなかで半分くらい実践できたくらいの頻度でした。

 

実践した感想

仕事が続いてしまい、慌ただしいときには、反射的に身体が動くため、意識して姿勢を作るのは難しいと感じました。

 

 

2日目:内科クリニック

2日目は内科クリニックで外来業務を担当。

外来では、おもに診察介助、採血や点滴、心電図等の検査介助を行いました。

 

こんな風に実践

クリニックの業務は、基本的に立ちっぱなしです。

椅子に座れるのは就業開始から4時間後のお昼休憩か、トイレのときだけ。

 

「Try(1)立った状態で骨盤を前後に動かす」を1時間ごとに1セット(10回)、診察介助の合間に実践することができました。

 

実践した感想

予約診察の患者さんが多く、自然と時計を見ながら行動していたため、1時間ごとに実践できました。

診察介助の合間に手が空いたタイミングで行いやすかったです。

 

普段は昼頃になると痛みが出て「そろそろお昼かな…」と予想がつく感じになっていました。

でも、今回実践してみたところ「あれ?もうお昼?」と驚くくらい、腰痛が気になりませんでした。

 

3日目:内科デイサービス

3日目はデイサービスの業務でした。

仕事中の動作は、病棟と同じ介助業務(入浴介助やおむつ交換)と、クリニックと同じ立ちっぱなしの業務(見守り)が、半々くらいのイメージです。

 

こんな風に実践

入浴介助や、おむつ交換など、かがむときは「Try(4)骨盤から前にかがむ」を実践しました。

病棟と同様、業務の半分くらいでしか実践できなかったような感覚です。

 

やはり、次々に仕事を依頼されて慌ただしいときや、急に介助が必要なときには、忘れてしまうことがあります。

 

実践した感想

半分くらいの割合で、思い出したときに実践するだけでも、腰への負担は軽減された感覚がありました。

 

加えて、私個人の工夫として、一緒に実践する仲間を作ってみました。

同僚に腰痛予防のポイントを教え、「気をつけてやってみよう」と声をかけ合いました。

 

1人だとすぐに忘れるので、仲間を作ることも継続のコツかもしれません。

習慣づけることが大切になりそうです。

 

 

4日目:ライター業務(自宅とカフェ)

4日目は自宅とカフェでライターの仕事をしました。

そこで[Try(2)座った状態で骨盤を前後に動かす]を実践。

長時間座った状態でパソコンと向き合います。

 

こんな風に実践

座っている姿勢が続くので、1時間ごとに10回、骨盤を前後に動かす姿勢をとりました。

また、できるタイミングで立ち上がって屈伸したり、背筋を伸ばしたりと、骨盤位置を変化させる動作を実践。

 

パソコン作業なので、画面の時計を確認しながら行おうと思いましたが、忘れてしまったり、時間を気にしすぎて、集中できないことがありました。そこでタイマーを設定し、時間を測りました。

 

実践した感想

今までは、2~3時間座っているだけでも、お尻と腰が痛くなってしまっていました。

今回、1時間ごとに「Try(2)座った状態で骨盤を前後に動かす」や、屈伸や軽いストレッチを行いました。

その結果、6時間くらい座り仕事をしていたのに、腰の痛みは出ませんでした。

 

また、集中力が途切れるタイミングがだいたい1時間ごとだったので、腰痛予防の動作を行うことで気分転換にもなりました。

作業がいつもよりも効率的に進んだと思います。

 

 

4日間試してみて気になったこと

自然と時間を意識しながら行っている業務の場合(私の場合は外来業務やデスクワークのとき)には、1時間に1回、というタイミングで実践しやすかったです。

 

しかし、病棟やデイサービスのように次々と目の前の業務をこなさなければならない場合、1時間ごとの実践は簡単ではありませんでした。

 

ケアや介助を1日何回も行う中で、意識できたのは半分くらいの感覚です。

そのような中で、腰の痛みが出始めて、「あ、姿勢を気をつけなきゃ」と気づくパターンが何度かありました。

 

気づいてからでもやらないときよりは、痛みが軽かったので、私の場合、少しでも実践することで効果があったと感じられました。

 

痛みが出てしまった場合は、「Try(5)骨盤中間位をキープ」で、コルセットを使用する方法もあります。

 

Try(1)~(4)を少しずつでも習慣づけて、いざとなればTry(5)、と実践していけば、腰痛が改善する可能性がみえました。

 

 

おわりに:腰痛の原因はさまざま

腰痛の原因はさまざまです。

丸めると痛い人、反ると痛い人、安静にしていると痛い人。

一人ひとり原因が異なります。

 

多くの腰痛の改善方法は運動、トレーニング、ストレッチなど体を適切に動かすこと。

シンプルですが運動で腰痛を予防し痛みを緩和させることが可能です。

 

でも毎日運動やストレッチの時間をとるのは、忙しい看護師さんたちには難しいこともあると思います。

ここでご紹介した5つの方法だけでもいいので、毎日実践してみてください。

 

一生使う自分の体をしっかりと知り、適切に腰を使うことができる人が一人でも増えてくれれば幸いです。

 

文/白石弓夏(看護師・ライター)

編集/坂本綾子(看護roo!編集部)

 

【監修者 プロフィール】

  吉田直紀(よしだ・なおき)

理学療法士/PHI pilates インストラクター

2008年 大学病院でリハビリテーション部勤務 多様な疾患に対応

2009年 スポーツ整形外科クリニックで勤務、千葉県高校バスケットボール部トレーニングサポート

2009年 いちはら病院 茨城県スポーツ医科学センターで勤務

2013年 茨城県高校バスケットボール部トレーナー(全国大会出場)

2014年 筑波大学陸上選手パーソナルトレーニング(インカレ出場)

2015年 茨城県高校野球部トレーナー、プロサッカー選手パーソナルトレーニング

2016年 フリーランス理学療法士に

「ケガを病院で受身的に治す時代から自ら予防できる時代にしたい」「病院に行かない文化を作りたい」という思いで活動を続けている。

 

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