世界一「満足いく死」を迎えられるのはイギリス?日本は14位、「死の質(QOD)」とは

エコノミストの調査機関が調べた「死の質」ランキングで、トップは2回連続イギリスとなりました。

 

日本は80カ国中14位で、アジアでは3位です。

ターミナルケアに着目した「死の質」とはいったい何なのでしょうか?

 

【目次】

 

 

「QOD」とは

それぞれの人がどれほど満足して、自分らしい生活を送っているかを示すのがQOLです。

 

これに対していかに満足して死を迎えるか、終末期のケアの質を示す「QOD」(Quality of death:クオリティオブデス)という概念があります。

 

QODは直訳すると「死の質」。

世界中でがん心臓疾患患者が増える中、いかに終末期を迎えるか、また家族のケアをどうするかは各国共通の課題になっています。

 

日本は前回調査より10位のランクアップ

この点に着目してイギリスの経済紙「エコノミスト」の調査機関が全世界の「死の質」ランキングをまとめました。

 

調査は「緩和ケアを受けられる環境」「人材育成」「ケアを受けるための費用」「ケアの質」「コミュニティとの関わり」など5領域について、世界80カ国を対象として行われました。

 

その結果、死の質トップは前回調査と同じくイギリスとなりました。

国民保健サービス(NHS)による積極的な取り組みや、国民を巻き込んだホスピスへの意識作りなどが高評価された結果です。

 

2位以下はオーストラリア、ニュージーランドと続いています。最下位はイラクとなっています。

 

日本は前回調査(2010年)には40カ国中23位だったのが、今回は14位と10位以上ランクアップしました。

 

アジアでは台湾(全体6位)、シンガポール(全体12位)に次いで3位です。

 

診断時からの緩和ケアや小児がん対策に評価

日本がランクアップした理由は、2012年度に見直された5年間のがん対策推進基本計画が評価されたことです。

 

精神的な苦痛を含めた診断時からの緩和ケアや、小児科医に対する緩和ケアプログラムの作成などがプラス評価されました。

 

ランキング上位および下位は次の通りです。

 

「死の質」ランキング

●トップ5カ国

1位 イギリス

2位 オーストラリア

3位 ニュージーランド

4位 アイルランド

5位 ベルギー

 

●ワースト5カ国

76位 ミャンマー

77位 ナイジェリア

78位 フィリピン

79位 バングラデシュ

80位 イラク

 

日本は人との関わりはあるが疼痛コントロールに遅れ

報告書によれば、「死の質」が高い国の特徴は次のような特徴があります。

 

・医療サービスに対する公的支出の高さ

・医療従事者に対する緩和ケアトレーニング

・患者の財政的負担の軽減

・オピオイド鎮痛薬の幅広い使用

・終末期に対する国民の意識

 

日本の終末期医療は、ボランティアの参加などコミュニティとの関わりは高得点を得ていました。

 

これに対してオピオイドなど麻薬鎮痛剤の使用は得点が低く、諸外国と比較して遅れていることがわかります。

 

アメリカの約20分の1! 圧倒的に少ない日本の麻薬使用量

モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンの医療用麻薬を合計した使用量(国民100万人当たりの1日使用量)は、最も多いアメリカでは1694gに対して、日本は84g。

 

欧米諸国が1000g以上の使用量となっているのと比べて、日本は圧倒的にオピオイドの使用量が低いことが従来から指摘されています。

 

これは日本人に根付く、麻薬に対するネガティブなイメージが原因ともいわれています。

麻薬に対するマイナスイメージは患者だけでなく、医療者にもあるといわれています。

 

少し前、トヨタの女性役員によるオキシコドンの密輸容疑が世間を騒がせました。

女性役員はオキシコドンを「膝の痛みの軽減のため」としていて、実際に膝に疾患があることもわかっています。

 

結果として彼女は「悪質性が低い」とされ、不起訴処分となりました。

 

事件の真偽のほどはわかりませんが、この一件はアメリカと日本における医療用麻薬に対する認識の違いが大きくクローズアップされた事件ともいえます。

 

日本では麻薬取締法の指定薬物であるオキシコドンですが、アメリカでは痛み止めとして広く使用され、処方があれば比較的簡単に手に入れることができます。

 

適切な疼痛コントロールが「死の質」向上へ

オピオイドへのアクセスが簡単なアメリカでは、乱用のリスクが指摘されているのも事実です。

 

ですが諸外国と比較して、日本における麻薬鎮痛薬の使用量が圧倒的に少ないのもまた事実。

 

「我慢」を美徳として生きてきた日本人ですが、薬でコントロールできる痛みを必要以上に耐える必要はありません。

 

専門知識を持った医療者による適切な疼痛コントロールが行われれば、日本人の「死の質」はさらに向上することが期待できます。

 

(参考)

Country analysis, industry analysis - Market risk assessment(The Economist)

がん対策、生活習慣病対策、感染症対策について(厚生労働省)

 

SNSシェア

コメント

0/100

掲示板でいま話題

他の話題を見る

アンケート受付中

他の本音アンケートを見る

今日の看護クイズ

本日の問題

◆小児の問題◆令和4年の人口動態調査によると、0歳児の不慮の事故で最も多い原因はどれでしょうか?

  1. 溺水
  2. 窒息
  3. 火災
  4. 転倒・転落

4325人が挑戦!

解答してポイントをGET

ナースの給料明細

8982人の年収・手当公開中!

給料明細を検索