看護師が行う環境整備がわかる|目的や手順、観察項目まで
看護師が行う環境整備の目的や手順、観察項目をイラストをまじえながらご紹介します。
執筆・イラスト:ソファちゃん
1 環境整備の3つの目的
看護における環境整備の目的は大きく3つです。
この環境を見て、あなたならどうしますか? 行動するのは何のためですか?
❶感染予防
・清潔な環境を保つことで、二次感染を予防するため
❷安全・安楽
・転倒転落を予防するため
・安全に治療を遂行するため
・快適な環境となるよう努め、患者さんのストレスを軽減させるため
❸自立を促す
・患者さんのADLを維持、または拡大させるため
2 環境整備の6つの視点
看護における環境整備は、「音」「明るさ」「気温」「におい」「清潔」「広さ」の6つの視点で観察し、調整していきます。
❶音
看護師同士の話し声、処置のときに立てる音、廊下からの足音などに注意しましょう。
病室で望ましいとされる音の大きさは、次のとおりです。
・日中は50デシベル以下:図書館の中くらいの静かさ、普通の声で3メートル程度の距離で会話が成立するくらい
・夜間は40デシベル以下:ささやき声でも、耳をすませば聞こえるくらい
環境基本法の第16条第1項の規定に基づく騒音に係る環境基準で、人の建康を守るうえで望ましい音の大きさの基準が決められています。
❷明るさ
病室の明るさは、100〜200ルクス(街灯くらいの明るさ)が望ましいとされています。
暗すぎても明るすぎても患者さんに不快感を与えてしまいます。部屋の照明は患者さんに合わせた明るさに調整しましょう。
また、体内リズムを整えるため、窓のカーテンを開けるなど日中はなるべく自然の明るさを感じられる配慮も必要です。
JIS照度基準で、病院の場所ごとに望ましい明るさが決められています。
❸気温
病室の温度は17度以上28度以下、湿度は40%以上70%以下が目安です。
患者さんによって望ましい温度に差があるため、患者さんの状態に合わせます。多床室の場合は、同室の他の患者さんにも配慮し、あまりにも患者さんによって差がある場合には羽織物や掛け物で調整しましょう。
❹におい
食事や排泄物など、不快なにおいがこもっている場合は、においの原因となるものを片付けて、換気をします。
❺清潔
感染症対策のためにも、患者さんが心地よく過ごすためにも、清潔な状態を保つことは大切です。汚れがないかを確認しましょう。
❻広さ
病床の広さは、原則として患者さん一人につき6.4m2以上と定められています。多床室の場合、ベッドの間隔が保たれているか確認します。
療養病床の広さは、医療法施行規則の第3章第16条3・4で定められています。
3 看護における環境整備の手順
≪必要物品≫
・環境清拭クロス
・粘着クリーナー
・ゴミ袋
・手袋
表環境整備の手順例
ルート閉塞などがあればルート整理から行うなど、場合によっては治療を妨げる可能性が高いものから実施する。
手順 | ポイントや目的 |
---|---|
①換気をする | ●患者さんが不快にならないように、さりげなく行う ●直接風があたらないように注意する (目的) ●臭いや気流の停滞を予防するため ●環境整備時に落屑などが舞うため |
②ルート類を整理する | ●点滴、モニター、酸素、カテーテル、ドレーン、ナースコール、イヤホンなどのルートが絡まっていないか確認する (目的) ●患者さんの身体にルートが巻きつくことを防ぐため ●ルートの閉塞や抜去を防ぐため ●ルートが絡まっている状態では離床の妨げとなる。整頓することで移動をスムーズにする |
③必要に応じて、患者さんの健側と患側※を踏まえて、物品を配置する |
●ティッシュ、ゴミ箱、リモコン、ナースコールなど使用頻度の高いものは、健側に配置すると良い ●ベッド周囲に障害物があれば片付け、ゴミがあれば捨てる (目的) ●ナースコールが患側にあると、すぐに押すことができない。健側に配置することで患者さん自身ができることを増やす ●障害物(かばんなど)があることで転倒の要因となるため |
④環境清拭クロスでサイドレールや床頭台、オーバーテーブルなどの清掃をする |
●ゴミがあれば破棄する ●患者さんがよく触る場所は環境清拭クロスで清拭する。特に、サイドレール、床頭台、オーバーテーブルは必ず清拭する ●点滴棒、車椅子、医療機器もあれば清拭する (目的) ●感染予防のため ●痰などの飛沫がサイドレールに付着していることがある。サイドレールカバーをしている場合は新しいカバーに交換する |
⑤リネンの汚染がある場合は交換する | ●髪の毛や落屑は粘着クリーナーで清掃する ●血液、汗、痰、廃液などによる汚染に対しては、リネンを交換する (目的) ●皮膚トラブルの原因となるため ●感染予防のため ●患者さんの不快感軽減のため |
⑥明るさの確認をしながらカーテンで調整する | ●患者さんと相談しながら、調光する。大部屋の場合は、窓側の患者さんとだけではなく、他の患者さんの要望も確認して調光する ●昼と夜の区別をつけるようにする (目的) ●調光によりサーカディアンリズムを整えるため ●転倒予防のため |
⑦その他 | ●患者さんの意識レベル、認知機能、ADLなどを踏まえて、ベッドの位置、身体拘束が必要かどうか、自立を促す物品配置になっているかを検討する 例:左麻痺のため、右側から降りれるようにベッドやテーブルなどの配置を見直す 例:ベッドからの転落リスクが高いため、ベッドの高さを最低床にする 例: 転倒予防のため、ベッドの車輪を内向きにし、足にぶつからないようにする ●患者さんと相談しながら、掛け物や室温を調整する |
4 看護における環境整備の観察項目
実際に、環境整備の観察項目をチェックしてみましょう。
次のイラストを見て、整える必要がある箇所はどこか考えてみてください。
★画像タップで正解がわかる★
※スクロール注意!答えはイラストの下※
※スクロール注意!※
イラストで、環境整備が必要な箇所は、次のとおりです。
- レースカーテンなどで明るさが調整できていない
- ティッシュが空
- イヤホンが絡まっている
- ナースコールが届かない
- 酸素の水が少ない
- 点滴棒が遠い
- 酸素チューブや心電図モニターのルートが首に巻き付いている
- 吸引チューブが床に垂れている
- 掛け布に汚染がある
- 足元に枕がある
- サクションチューブの空袋が捨てられていない
- 靴が揃えられていない
- ベッドの車輪が外向き
自分のチェックしたものと比べ、いかがでしたか?
こんなふうに、実際に患者さんの病室で環境整備をする際に役立ててください。
編集:看護roo!編集部 坂本朝子(@st_kangoroo)
参考文献
- 1)吉田みつ子ほか監.新訂版 写真でわかる基礎看護技術アドバンス.東京,インターメディカ,2020,10-26.
この記事を読んだ人は、こんな記事も読んでいます