ダヴィンチ(手術支援ロボット)の器具の洗浄・消毒・滅菌方法

『ダヴィンチ導入 完全マニュアル』(メジカルビュー社)より転載。
今回はダヴィンチ(手術支援ロボット)の器具の洗浄・消毒・滅菌方法について解説します。

 

北郷みどり
湘南東部総合病院 手術室看護師

 

 

 

Point

エンドスコープの洗浄・消毒・滅菌

・長い器材なので、すべての工程で、特に先端の損傷に十分注意する。

 

インストゥルメントの洗浄・滅菌

・先端部のワイヤー損傷などを防ぐため、ナイロン製のブラシを使用するといった細心の注意を払う。

 

アクセサリの洗浄・滅菌

・カニューラの縁は損傷しやすいので、最後に破損がないか十分点検する。

 

・いずれも残留物が乾燥しないよう、術後60分以内に洗浄を行う。

 

エンドスコープ・インストゥルメント・アクセサリの洗浄・滅菌については、マニュアル洗浄(=用手洗浄)や自動洗浄以外に、当院では行われていない超音波洗浄などもある。各メーカーの取り扱い説明書の方法や詳細な注意点を確認のうえ使用していただきたい。

 

洗浄・消毒・滅菌の基本

正しい洗浄・消毒・滅菌の重要性

手術で使用した器械・器具には感染性のある血液や体液などの有機物、目に見えない微生物などが必ず付着しているため、器械・器具は適切な方法で洗浄・消毒・滅菌されなければいけない。


また、手術室で普段使用される鋼製器械類以上に、内視鏡手術で使用されるスコープは精密機器であり、さらに高額な医療機器であるため、取り扱いには細心の注意を払う。

 

洗浄用機械の導入

ダヴィンチ器械洗浄のために「洗浄機」、「高水圧ホース」、「ステラッド(過酸化水素)滅菌機」が必須となるため購入する(図1)。

 

図1ダヴィンチ開始にあたり導入された洗浄・滅菌機器

ウォッシャーディスインフェクター(Getinge 86 シリーズ)の画像

ウォッシャーディスインフェクター(Getinge 86 シリーズ)

 

ステラッド(ASPSTERAD 100NXの画像

ステラッド(ASP STERAD 100NX)


洗浄機は、水圧が不十分であれば工事が必要である。業務に支障をきたさないように工事日程を計画する。当院では、配管なども確認し、工事をして洗浄機を中央材料室に設置した。流し台に水圧がかけられる高水圧ホースの取り付けも、配管工事が必要だった。


どの機械も、業者と手術室スタッフで十分に話し合って設置場所を決めるのが理想である。
また設置後は、必ず関係者全員に向けて上記3点の使用法に関する勉強会を実施する。ダヴィンチ独自の機械であるため、メーカー担当者が実践する様子を何度も見ながら習得した。

 

当院での洗浄・消毒・滅菌法の修得と導入

当院では中央材料室専任の看護助手が洗浄・滅菌を行うが、時間外になると手術看護師が洗浄から滅菌まですべて実施するため、看護師も洗浄・滅菌について熟知する必要がある。


さらにダヴィンチシステム用エンドスコープ、インストゥルメントは洗浄・滅菌に時間がかかる。当院では関わるスタッフ全員が参加し、エンドスコープやインストゥルメントの機器に合わせて、洗浄・消毒・滅菌を確実に行える機械の準備を手術のシミュレーションと同時進行で行った。また、メーカー立ち会いのもと洗浄~滅菌の取り扱い方法などの勉強会を導入前に2回、導入後に1回の計3回実施した。


当院の中央材料室はとにかく狭く、拡張するためのスペースもない。通常の腹腔鏡手術で使用されるスコープよりもダヴィンチで使用されるスコープは長いので、現状の限られた空間で丁寧に取り扱い、洗浄・滅菌するために試行錯誤した。

 

女性看護師顔画像看護師 北郷メモ

実際に、ダヴィンチ開始早々、インストゥルメントやエンドスコープの不具合や故障があった。具体的なエンドスコープの不具合として、電気メス使用中にモニター画面に線が入る事象があった。結果として、エンドスコープ先端内部が破損していた。

原因として報告されたのが洗浄時の扱いであった。特にエンドスコープ先端の故障はダヴィンチ導入から短期間で2回あり、その度に話し合いを重ね、対策を積み重ねて現段階の形になり、洗浄による故障の報告がゼロになった。

 

 

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エンドスコープの洗浄・消毒・滅菌方法

前述したとおり、エンドスコープ(図2)は特に丁寧に扱わなければならない。

 

図2エンドスコープの構成

エンドスコープ専用の台の画像

SARAYAの予備洗浄スプレーの画像

 

メーカーの洗浄・滅菌説明書にも「デリケートな機器であり、適切な方法で運搬されない場合、破損する危険性があります。滅菌トレイに載せるか、または先端部を物とぶつけないように必ず保護して運搬してください」とあり、手術前の準備から洗浄・滅菌に至るまで、運搬時にはエンドスコープ専用の台図3)で手術室から中央材料室の洗浄室に運搬している。

 

図3エンドスコープ専用の台

エンドスコープの構成の画像

台の上にソフトナース®を敷きクッション代わりにしている。また、台の上での干渉を防ぐため、エンドスコープ以外の器械は載せない。

 

エンドスコープの洗浄の流れ
(1)手術室内でプライミング
(2)拭き取り・すすぎ
(3)点検
(4)ウォッシャーディスインフェクターを使った自動洗浄
(5)乾燥確認
(6)点検
(7)梱包および滅菌

 

(1)手術室内でプライミング(手術終了直後に洗浄室運搬前にすること)

洗浄プロセスは術後60分以内に開始しなければならず、残留物が乾燥しないように、手術直後に洗浄するよう推奨されている。取り扱い説明書には「ボタンフラッシュポートを15mLの水や中性酵素洗剤で重填すること、または水・洗浄剤に浸漬するか、予備洗浄スプレーをすること」といった記載がある。当院では予備洗浄スプレー(図4)で全体を湿らせて乾燥を防いでいる。

 

図4当院で使用しているSARAYAの予備洗浄スプレー

SARAYAの予備洗浄スプレーの画像

 

(2)拭き取り・すすぎ

柔らかい布を使用し、メーカー推奨の酵素洗浄剤(SARAYA パワークイック 酵素系用手洗剤、中性〈図5〉)でエンドスコープのシャフトと先端部を綺麗に拭き取り、汚れや洗浄剤などが取り除かれるようにエンドスコープの外面を少なくとも60秒間しっかりすすぐ。

 

図5SARAYA パワークイック 酵素系用手洗剤(中性)

SARAYA パワークイック 酵素系用手洗剤(中性)の画像

 

女性看護師顔画像看護師 北郷メモ

ウォッシャーディスインフェクター(図1)ですぐに洗浄できれば、すすぎは省いても可能となっている。しかし当院ではウォッシャーディスインフェクター1台ですべての手術器械を洗浄しており、さらにエンドスコープを安全に洗浄するための滅菌トレイ Xi ステンレス製が1つしかなく、一度に洗浄できるのは1本のエンドスコープのみとなるため、ウォッシャーディスインフェクターで自動洗浄されるまでの待機時間が長い。そのため、すすぎの工程が必須となる。

 

すすぐ際、シンクのステンレスにエンドスコープの先端が当たらないように気をつける。当院では青いスポンジシートをシンク内に四方に敷き、万一に備えている(図6)。

 

図6シンクに敷くスポンジシート

シンクに敷くスポンジシートの画像

 

女性看護師顔画像看護師 北郷メモ

ダヴィンチ開始当初はこのシートはなく、故障の原因を探るなかで立てられた対策の1つである。また、シンクが狭く、シンクすぐ上に棚がありエンドスコープ衝突のおそれがあるため、ここでの作業は必ず2人で行い、1人が先端部を持ち衝撃を与えないように注意している。

 

(3)点検

エンドスコープのシャフト、特に先端部(図7)に残留物がないか4倍拡大鏡を使用して点検する。残留物が確認された場合、もう一度拭き取りから繰り返す。

 

図7洗浄後のエンドスコープ先端部

洗浄後のエンドスコープ先端部の画像

綺麗になった先端部

 

(4)ウォッシャーディスインフェクターを使った自動洗浄

当院では、ウォッシャーディスインフェクター Getinge 86 シリーズを使用している。滅菌キャップのないエンドスコープはウォッシャーディスインフェクターで熱水消毒サイクルを使用することができる。


自動洗浄に必要なもの(図8図9

 

図8エンドスコープ用滅菌トレイ Xi ステンレス製

エンドスコープ用滅菌トレイ Xi ステンレス製の画像

必ず購入すること!

 

図9トレイコネクタ

トレイコネクタの画像

 

自動洗浄の手順

①トレイコネクタの点検を行う
ひび、傷や捻れ、異物、曲がりがないか点検する。
太いチューブ側を蛇口に取り付け、6つのコネクタから水が出てくるか確認する。
破損している場合は新しいトレイコネクタに取り替える。


②滅菌トレイ Xi ステンレス製にセットする
先端部→ベース・ハウジング(トレイコネクタを接続できる方向にセットする)→ショートケーブル→ホワイトコネクタの順にセットする(図10)。

 

図10自動洗浄のセット順

自動車洗浄のセット順を表した画像

①→②→③→④の順にトレイにセットしていく。


先端部には滅菌トレイに付いているシリコンがあり、保護されるようになっているが、セットする際に衝撃を与えないように十分注意して行う。


ボタンフラッシュポート・インプットディスクフラッシュエリア・ベースフラッシュエリアにそれぞれトレイコネクタをセットする(図11)。

このとき、ボタンフラッシュポートに接続するトレイコネクタをシャフトの下に通すと、接続しやすい。

 

図11トレイコネクタへのセット

トレイコネクタのうち3つをボタンフラッシュポート、2つをインプットディスクフラッシュエリア、1つをベースフラッシュエリアに接続する。

 

トレイの蓋を取り付け、しっかりとロックする(図12)。

 

図12トレイの蓋のロック

トレイの蓋のロックを表した画像

 

③ウォッシャーディスインフェクターの洗浄ラックにセットし、自動洗浄を行う
トレイコネクタをホースニップルに接続する(図13)。

 

図13トレイコネクタとホースニップルの接続

トレイコネクタとホースニップルの接続を表す画像

水圧でトレイコネクタが外れることがあるので、ホースニップルにしっかり差し込む。


セットしたら、搬送トロリーをウォッシャーディスインフェクターに近づけてロックする。洗浄ラックをウォッシャーディスインフェクターに入れ、扉を閉める。
ダヴィンチ洗浄のプログラムで洗浄を行う。

 

女性看護師顔画像看護師 北郷メモ

通常の手術で使う鋼製物は洗浄から乾燥まで約65分であるのに対し、ダヴィンチのプログラム(エンドスコープ・インストゥルメント共通)は約90~100分かかる。ダヴィンチでは弱アルカリ性の洗浄剤を使用しており、乾燥時間が長く設定されているためである。

 

(5)乾燥確認

洗浄後、エンドスコープ表面全体をリントフリーの布でしっかり拭き取る。フラッシュポート、インプットディスク、ハウジングの穴、溝のすべてから水分を取り除かれていることを確認する。
レンズに水跡が残らないように先端をしっかりと乾燥させる。
エンドスコープ先端にあるレンズに直接圧縮空気を当てないように注意する。

 

女性看護師顔画像看護師 北郷メモ

滅菌キャップ付きエンドスコープは自動洗浄できない。また、マニュアル洗浄の方法は説明書に記載されているため、必ずしも滅菌トレイ Xi ステンレス製が必須ではないが、マニュアル洗浄(用手洗浄)を行うならば、洗浄時の十分な安全対策とスタッフ間での洗浄方法の熟知が必要と考える。

 

(6)点検

残留物の点検

4倍拡大鏡を使って残留物がないか丁寧に点検を行う。残留物が確認された場合、洗浄プロセスをもう一度繰り返す。


損傷の点検

エンドスコープに機械的、または光学的なダメージがないかを徹底的に点検する。
エンドスコープ先端のガラスの表面を点検し、画像品質を確保するために汚れ、残留組織、フォギングがまったくないかを点検する。
エンドスコープに切り込み、損傷、その他の欠損がないか点検する。ファイバーケーブルの表面に汚れや残留組織がないかを点検する。また、先端のレンズにも破損がなく正しい位置にあることを確認する(図14)。

 

図14ファイバーケーブルの点検

ファイバーケーブルの点検を表す画像


ハウジング上のインジケータウィンドウを点検し、損傷がないことを確認する(図15)。

 

図15インジケータウィンドウの点検

インジケータウィンドウの点検を表したイラスト


※少しでも破損した部分やその疑いがあるエンドスコープは絶対に使用しないこと。

 

(7)梱包および滅菌

①滅菌トレイにエンドスコープを載積する
エンドスコープ先端部から配置し、滅菌トレイ(Intuitive Surgical エンドスコープ滅菌トレイ)上の外枠からケーブルを配置し、最後にコネクタを設置する(図16)。

 

図16滅菌トレイへのエンドスコープの載積

滅菌トレイへのエンドスコープの載積

 

トレイの蓋を閉め、両側の蓋のラッチを閉める。蓋とトレイの間にケーブルが挟まっていないか確認する(図17)。

 

図17ラッチを閉めた後の確認

ラッチを閉めた後の確認


②梱包する
規格承認を受けた滅菌ラップで包む(図18)。

 

図18滅菌タップでの梱包

滅菌タップでの梱包の画像

滅菌ラップで2重包みにしている。

 

③滅菌する
ダヴィンチXiエンドスコープは、オートクレーブ滅菌ができない。オートクレーブを行うことで高温となり、急な温度変化がエンドスコープの損傷を招くおそれがあるからである。


ダヴィンチXiエンドスコープの適合性マトリックスがあり、その表を参照して滅菌を行っている。

 

当院ではステラッド(ASP STERAD 100NX)を以下のとおり使用している。
サイクル:

・エクスプレス


滅菌ラップ:

・約4kg より重い器具セットの滅菌に対応できる滅菌ラップ


積載設定:

・シングルトレイを下段へ
・滅菌中にトレイを積み重ねしない
・複数のトレイを同時に滅菌しない

 

 

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インストゥルメントの洗浄・滅菌方法

インストゥルメントは使用回数制限が設けられている。その制限回数内で洗浄・滅菌が行われるが、当院でダヴィンチ導入当初は使用回数に達していなくても、故障・破損があった。
エンドスコープと同様に、洗浄時に故障したと考えられるため、インストゥルメントも洗浄・滅菌過程において丁寧かつ適切に取り扱わなければならない(図19)。

 

図19Endo Wrist インストゥルメントのフラッシュシステム

Endo Wrist インストゥルメントのフラッシュシステムを表した画像

ハウジングフラッシュポートの位置を表した画像

ハウジングフラッシュポートの位置


インストゥルメントの洗浄の流れ
(手術室内水または洗浄剤によるプライミング/浸漬)  
(1)洗浄剤でのプライミングおよび浸漬 30分間
(2)フラッシュ 20秒間
(3)先端部をスプレー 30秒間
(4)ブラッシング 60秒間
(5)すすぎ 60秒間
(6)点検  
(7) ウォッシャーディスインフェクターを使った自動洗浄・滅菌および熱消毒  
(8)乾燥確認  
(9)点検  
(10)潤滑剤の塗布  
(11)梱包および滅菌  

 

女性看護師顔画像看護師 北郷メモ

エンドスコープ同様、術後60分以内に洗浄プロセスを開始しなければならない。機器上で残留物が乾燥しないように手術直後に開始する。
また、メーカーの洗浄・滅菌説明書では、術直後に手術室内での準備として水または洗浄剤へインストゥルメントを浸漬する工程があるが、当院ではすぐに洗浄室へ運搬できるため、手術室内でのプライミングおよび浸漬は省いている。

 

単回使用アクセサリ

カニューラシール:すべてのカニューラで使用


チップカバーアクセサリ(モノポーラカーブドシザーズインストゥルメントで使用):インスターションツールを使用し左右に回転させながらチップカバーアクセサリを外す。洗浄・滅菌を開始する前に外さないと、洗浄および滅菌が不十分になる可能性がある(図20)。

 

図20インストゥルメントの洗浄・滅菌

インストゥルメントの洗浄・滅菌のを示した画像

 

再使用可能なアクセサリ

・8mmインストゥルメントイントロデューサー
・モノポーラおよびバイポーラコード

 

(1)洗浄剤でのプライミングおよび浸漬

①手術内においては中性の酵素洗剤のみが使用可能である。当院で使用している浸漬用酵素洗剤は酵素系浸漬洗浄剤(中性)(図21)である。

 

図21酵素系浸漬洗浄剤(中性)

酵素系浸漬洗浄剤(中性)の画像

 

②各薬品メーカーの指示に従い、メインフラッシュポートをシリンジを用いて15mLの弱アルカリ性中性酵素洗浄剤で充填する(図22)。

 

図22メインフラッシュポートの充填

メインフラッシュポートの充填を表した画像

 

女性看護師顔画像看護師 北郷メモ

上記の説明は説明書どおりだが、当院では浸漬洗浄槽の液が汚れて何度も液を交換しなくて済むように、次の(2)フラッシュの工程を先に行った後、③の30分間浸漬をしている。

 

③インストゥルメント全体を同じ洗浄剤に浸す。30分間浸漬する。

 

女性看護師顔画像看護師 北郷メモ

当院では SARAYA の恒温浸漬洗浄槽(図23)を使用している(水70Lに洗浄剤700mL)。浸漬液を40°Cで加温・恒温でき、また撹拌機能で浸漬液の温度をムラなく均一化できる。

 

図23恒温浸漬洗浄槽

恒温浸漬洗浄槽を表した画像

 

(2)フラッシュ

メインフラッシュポートは、インストゥルメントインナーチューブに接続され、インストゥルメントシャフトに液体を送る。インナーチューブがインストゥルメントから外れていないことを確認する。チューブが外れている場合はインストゥルメントを使用しない。

 

手順(図24)としては、30分の浸漬後に行う。
①メインフラッシュポートに30psi(2bar)の水圧がかかった水で、少なくとも20秒間フラッシュをする。
②フラッシュ中に先端部を下に向けて、可動範囲いっぱいまでリストを動かす。ジョー(図25☆1、2)を開き、背部にあるディスクを使用することもできる。
③角度方向を変えながらインストゥルメントから流れる水が透明になるまでフラッシュを続ける。
④フラッシュポートでも、このプロセスを繰り返す。

 

図24フラッシュの手順

フラッシュの手順を表した画像

 

図25インストゥルメントの先端部

インストゥルメントの先端部の画像

 

図26以外のディスクを回転させるとライフエンド・インジゲータが赤く点灯し、機器が使用回数を超えた状態になってしまうことがあるので注意する。

 

図26インストゥルメントのハウジング

インストゥルメントのハウジングを表した画像

 

(3)先端部をスプレー

インストゥルメントを水面下に沈めて水しぶきを避け、残留物を圧力のかかった水で洗い落とすために、先端部を少なくとも30秒間スプレーする。表面すべてにスプレーできるように、インストゥルメントの先端部を可動域内いっぱいまで数回動かす。
先端部から残留物が取り除かれていることを目視で確認する。
※メーカー提供のルアーフッティング(図27)を使用して先端部にスプレーするか、ウォーターガンで行う。

 

図27ダヴィンチ導入時に取り付けられたルアーフッティング

ダヴィンチ導入時に取り付けられたルアーフッティング

 

(4)ブラッシング

流水下でインストゥルメントの外面に、最低でも60秒間丁寧にブラシをかける(図28)。

 

図28インストゥルメントのブラッシング

インストゥルメントのブラッシングその1

インストゥルメントのブラッシングその2

 

ブラッシングの際、インストゥルメントをその可動域範囲内で動かす。金属製のブラシや研磨剤入りの洗浄剤は破損(故障)の原因になるため使用しない。ナイロン製のブラシが推奨されている。
すべての表面を4倍拡大鏡で点検する。目視確認できる汚れがなくなるまでブラッシングを続ける。

 

当院でダヴィンチ導入時に起きたインストゥルメントの故障
使用回数制限内で下に示す先端部が故障し、ワイヤーが切断されていたことがあった。

 

ワイヤーが切れていると手術中に鉗子が閉じない、動きが悪いなどの症状が出る。執刀医もすぐには気づきにくいため、避けたい故障である。
原因の1つとして洗浄の可能性が挙げられた。説明書に記載されているように、特に先端部に注意を払い洗浄しなければならない(図29)。

 

図29インストゥルメントの注意

インストゥルメントの注意点を表した画像

丸で囲んだ部分のワイヤーに注意する

 

(5)すすぎ

残留物や洗浄剤などが取り除かれるように、インストゥルメントの外面を少なくとも60秒間しっかりすすぐ(図30)。

 

図30インストゥルメントのすすぎ

インストゥルメントのすすぎの画像その1

インストゥルメントのすすぎの画像その2

 

先端部およびインストゥルメントのシャフトがハウジングに接合する部分は特に丁寧にすすぐ。目視できる洗浄剤がなくなるまですすぎを続ける。

 

(6)点検

4倍拡大鏡を使い、残留物が残っていないか丁寧に点検する。残留物が確認された場合、洗浄プロセスをもう一度繰り返す。

 

(7)ウォッシャーディスインフェクターを使った自動洗浄・滅菌および熱消毒

エンドスコープと同様のプログラムで自動洗浄を行う(図31)。

 

図31インストゥルメントの自動洗浄

インストゥルメントの自動洗浄の画像

 

(8)乾燥確認および(9)点検

①乾燥確認

インストゥルメントを柔らかいリントフリーの布でしっかり乾燥させる。インストゥルメントシャフトおよびフラッシュチューブの水分が完璧に取り除かれていることを確認する。インストゥルメントの先端部を上に向け、清潔で乾燥した空気を両方のフラッシュポートに通して乾燥させることもできる。


②点検

残留物の点検:4倍拡大鏡を使い、残留物がないか丁寧に点検する。残留物が確認された場合、洗浄プロセスをもう一度繰り返す。
損傷の点検:目視できる損傷や可動範囲を点検する。
シャフト、先端部の歪みや破損・ハウジングのひびや損傷・先端ケーブルの破損やほころびがないか点検する。


③フラッシュポート内のチューブの点検

(2)フラッシュと同様に点検する。

 

(10)潤滑剤の塗布

インストゥルメントが乾燥していることを確認し、潤滑剤(メンテナンス用オイルスプレー 300mL、品番 JG600(図32)、ビーブラウンエースクラップ株式会社)を1~2滴、先端部に塗布する。

 

図32メンテナンス用オイルスプレー 300mL

メンテナンス用オイルスプレー 300mL

 

(11)梱包および滅菌

インストゥルメントを滅菌トレイの正しい位置に置いて滅菌梱包材で包み、オートクレーブで滅菌する(図33)。

 

図33インストゥルメントの減菌

インストゥルメントの減菌を表した画像

 

 

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アクセサリの洗浄・滅菌

洗浄・滅菌を開始する前に、カニューラシールなどディスポーザブルアクセサリをすべて慎重に取り除く(図34図35)。

 

図34カニューラ、オブチュレータ、インストゥルメントリリースキット、Hassan cone(8mmカニューラゲージピン)(インストゥルメントイントロデューサ)

カニューラ、オブチュレータ、インストゥルメントリリースキット、Hassan cone(8mmカニューラゲージピン)(インストゥルメントイントロデューサ)

 

図35モノポーラコード(緑)、バイポーラコード(青)

モノポーラコード(緑)、バイポーラコード(青)の画像

 


アクセサリの洗浄の流れ
(1)マニュアル洗浄
(2)乾燥
(3)点検
(4)梱包および滅菌

 

※洗浄プロセスは、術後60分以内に開始されなければならない。デバイス上で残留物が乾燥しないように洗浄を速やかに行う。

 

(1)マニュアル洗浄

バイポーラコード・モノポーラコードは全体を浸漬できないため、マニュアル洗浄(用手洗浄)のみで行う。


①流水・恒温浸漬洗浄槽に使用している浸漬用酵素洗剤で汚れを落とし、浸漬を30分間行う。
両端の接続部は浸漬できないため、コードの部分のみ浸漬する。また、浸漬まで時間がかかるときには、予備洗浄スプレーで乾燥を防いでいる。


②流水でしっかり酵素洗剤を洗い流し、乾燥機に入れてしっかり乾燥させる。
乾燥機に入れる前後に両方の先端部に水分が残っている場合は、エアーガン(乾燥した空気)で水滴を吹き飛ばしている。

 

(2)乾燥

ウォッシャーディスインフェクターの工程後、アクセサリ類の水分をしっかり取り除く。4倍拡大鏡を使い、残留物が残っていないか丁寧に点検する。残留物が確認された場合、洗浄プロセスをもう一度繰り返す。

 

(3)点検

破損やヘコミがないか丁寧に点検する(図36)。損傷の例として、レーザーマーカーを読むことができない、カニューラの縁部分の傷、亀裂、ヘコミ、腐食、円形でない、などが挙げられる。

 

図36損傷のないカニューラ

損傷のないカニューラの画像

 

カニューラの点検方法

①1.8mm カニューラの点検にはカニューラゲージピンを使用する(図37)。
②カニューラを立てた状態で持つ。
③親指と人差し指を使って、カニューラの上でゲージピンを持つ。
④カニューラの先端部の下にもう一方の手を当てる。
⑤カニューラの中にゲージピンを落とし、カニューラの先端にある手で受け止める。
※ゲージピンがカニューラを通る、ギザギザやヘコミがなければ使用できる。逆の場合は使用することができない。

 

図37カニューラの点検

カニューラの点検を表した画像

 

(4)梱包および滅菌

基準に沿って滅菌梱包材を選択する。アクセサリトレイの正しい位置にセットし、梱包・滅菌(オートクレーブ)を行う(図38)。

 

図38アクセサリの減菌

アクセサリの減菌を表した画像


当院では、ダヴィンチ専用のアクセサリのほか、常時使用される吸引送水のセットやヘモロック鉗子もセット内に組み込んでいる。

 

 

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本連載は株式会社メジカルビュー社 の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『ダヴィンチ導入 完全マニュアル』 編集/中山祐次郎/2023年3月刊行/ メジカルビュー社

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