ダヴィンチ(手術支援ロボット)の装置概要
『ダヴィンチ導入 完全マニュアル』(メジカルビュー社)より転載。
今回はダヴィンチ(手術支援ロボット)の装置概要について解説します。
小松健一
湘南東部総合病院 手術室看護師
①ダヴィンチを構成する3大機器をおさえよう。
・サージョンコンソール:術者が座って操作する。原則2人で動かす。
・ペイシェントカート:4本のアームが搭載されている。
・ビジョンカート:手術画像が表示されるモニター付き。フロントパネルの操作方法やソケット挿入時の注意点を確認する。
②エンドスコープや各種インストゥルメントについても確認しておこう。
③アームドレーピングの方法を習得しよう。
ダヴィンチの装置構成
ダヴィンチで必ず押さえておきたい3大機器は、サージョンコンソール(図1)、ペイシェントカート(図2)、ビジョンカート(図3)である。
図1サージョンコンソール
サージョンコンソールは術者が座り、3D画像を見ながら手元のコントローラーを操作する。
図2ペイシェントカート
ペイシェントカートは4本のロボットアームにその動きが伝わる。
図3ビジョンカート
ビジョンカートのモニターには手術中の画像が映し出され、手術室スタッフも同じ画像を共有することができる。
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サージョンコンソール
動かし方(図4)
左右方向のみにしか動かないため、無理に背面を押して移動しない。
移動する際はブレーキを解除する。サージョンコンソールの幅が大きく障害物に接触する危険があるため、原則2人で移動することが望ましい。
図4サージョンコンソールの動かし方
各部位の名称と機能(図5)
図5サージョンコンソールの各部位の名称
3Dビューア:高解像度ステレオ3Dの液晶ディスプレイから構成されている。
マスターコントローラー:術者は手術部位を見ながらマスターコントローラーを握る。インストゥルメントの先端部は、マスターコントローラーを操作している術者の手と同じ動きをする。
タッチパネル:タッチパネルユーザーインターフェース、エルゴノミクス調整、電源および緊急停止ボタンから構成されている。
フットスイッチパネル:モノポーラおよびバイポーラなどのインストゥルメントの機能をアクチベーションさせる。
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ペイシェントカート
各部位の名称と機能(図6)
図6ペイシェントカートの各部位の名称
カラム:アームを保持する。
ベース:設置と移動に利用する電動モータードライブ、ペイシェントカートの電子部品、コネクタパネルで構成されている。
カートドライブ:ペイシェントカートを操作するのに使用する。
アーム(1️⃣、2️⃣、3️⃣、4️⃣):エンドスコープやインストゥルメントを保持して動かす(本書ではアーム番号に▢をつけて表記しています)。
インストゥルメントクラッチ:エンドスコープまたはインストゥルメントの先端を手術部位内で前後へ移動させるために使用する。
ポートクラッチ:手術中にアーム同士の干渉が起きないように、アームを動かして位置を決めるのに使用する。アームを上げ下げし、アーム同士を近づけたり離したりしてポートサイトのテンションを軽減する。
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ビジョンカート
動かし方(図7)
移動する際はブレーキを解除する。ビジョンカートの幅が大きく障害物に接触する危険があるため、原則2人で移動することが望ましい。
図7ビジョンカートの動かし方
各部位の名称と機能(図8)
図8ビジョンカートの各部位と名称
タッチスクリーン:タッチスクリーンモニターで患者側から手術部位を見ることができ、エンドスコープ設定とビデオ設定をまとめて操作できる。
アクセサリ棚:送気装置などの周辺機器を収納する。
erbe VIO dV(エルベ バイオ ディーブイ):電気手術用インストゥルメントを起動するための一体型電気手術装置で、腹腔鏡下手術でも併用することが可能。
エンドスコープコントローラ:手術部位を照らす高解度光源と、エンドスコープから送られるビデオ画像を処理する電子装置から構成されている。
ビデオプロセッサ:エンドスコープからの入力画像を受理して処理した後、システムの電子装置を介してタッチスクリーンと3Dビューアに送信する。
タンクホルダ:送気装置の使用に用いるタンクを収納するホルダが2つある。さまざまなタンクに対応するため、調整可能なストラップが付いている。2本までタンクの収納ができ、各タンクの最大重量は22.32kgである。
コア:ビデオ画像を高解度処理する電子装置やシステム制御アルゴリズムから構成されており、術者がフットペダルでインストゥルメントの機能をアクチベーションする際に電気手術装置(ECU)をコントロールする。
フロントパネルの操作(図9)
電源ボタンを押して立ち上げる。
バイポーラ、モノポーラの設定は1~8段階まであり、医師の指示で調整する。
図9フロントパネルの各部位と名称
意外と多いミス
バイポーラコード(青)とモノポーラコード(緑)は必ず決まった向きがあり、白い逆三角マークと三角マークが同じところに挿入する(図10)。
図10バイポーラコードとモノポーラコードの挿入の向き
モノポーラーコード、バイポーラーコードは長いため、術中に床につきそうになることがあり、不潔になりやすい。コードの管理も看護師が行うことが望ましい。
向きが逆でもソケットには挿入可能のため、接続する際は確認する必要がある。いざ使用するとき作動しないと、思わぬ事態につながりかねないので注意する。
対極板を専用のソケットに挿入したら対極板ステータスが緑になるため、必ず確認する(図11)。
図11対極板ステータスの確認
挿入しても赤い場合は奥まで挿入されていないことが多い!
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周辺器具について
エンドスコープ
8mmエンドスコープは先端部が 0°(直視)および 30°斜視のものがある。当院では、消化器外科のダヴィンチ手術では0°の直視鏡のみ使用しており、泌尿器科では直視鏡と30°のカメラを使い分けている。
当院では術前にエンドスコープの動作確認を必ず行っている。
①エンドスコープコントローラにコネクタを接続し、ビジョンカートに映像が映っているか。
②レンズのひび割れがないか。
③カラーバーが表示されているか。
インストゥルメントの種類
当院では泌尿器科と消化器外科で合わせて8種類のインストゥルメントを使用している(図12)。
図12インストゥルメント
消化器外科
▢フェネストレイテッド バイポーラ
▢ミディアム ラージ クリップアプライヤ
▢ティップアップ フェネストレイテッド グラスパ
▢モノポーラ カーブド シザース
▢ラージニードル ドライバ
▢シュアフォーム 60、45
泌尿器科
▢モノポーラ カーブド シザース
▢プログラスプ フォーセプス
▢ラージニードル ドライバ
▢メリーランド バイポーラ
▢フェネストレイテッド バイポーラ
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当院で使用しているダヴィンチの記録用紙
記録は
・手術件数の把握
・使用したインストゥルメントの回数の確認
・看護師のドレーピング時間の把握
・ロールインからロールアウトの時間の記録
・ダヴィンチコンソール時間の記録
・吻合時間の記録
を目的として行っている(図13)。
図13湘南東部総合病院で使用している症例記録用紙
看護師のドレーピング時にどの程度時間がかかっているか把握できたり、ロールインの際にどこに時間がかかっているかを把握する指標にもなる。また、手術終了後のデブリーフィング時に使用する材料にもなる。
専用の用紙をもらえるか、インテュイティブ社の担当者に確認するとよい。
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本連載は株式会社メジカルビュー社 の提供により掲載しています。
[出典] 『ダヴィンチ導入 完全マニュアル』 編集/中山祐次郎/2023年3月刊行/ メジカルビュー社