家族計画指導|家族計画指導①
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は家族計画指導について解説します。
吉川芙雪
滋賀医科大学医学部看護学科助教
産後の家族計画の意義
女性は出産後母親としての役割と、妻としての役割を担うこととなる。出産と育児により母親としての自覚が高まり、母親役割を円滑に行っていくようになると夫との性生活にも関心が高まり、性生活を再開し夫婦としての生活もさらに充実していく。
また、性生活は、肉体的な結合のみでなく、セクシャリティの意味も含むものとなるため、重要である。子どもの発達過程からも次子の誕生は上の子の成長を待ってからが望ましい。
産後は健診等で医療従事者との接触が多いため、家族計画の機会が最も得られやすい時期である。妊娠前の避妊法に戻るのではなく、夫婦の性生活に沿った具体的な避妊法を再検討する必要がある。
リプロダクティブ・ヘルス
リプロダクティブ・ヘルスは「性と生殖に関する健康と権利」と訳され、1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議において、承認を得た考え方である。ライフサイクルをとおして、女性の性と生殖における自己決定権を認めるもので、
①女性自らが妊孕性(にんようせい;妊娠する能力)を調節できること
②すべての女性において安全な妊娠と出産が享受できること
③すべての新生児が健全な小児期を享受できること
④性感染症の恐れなしに性的関係がもてること
の4つを基本としている。リプロダクティブ・ヘルスを得ることは女性の基本的権利であることをリプロダクティブ・ライツという。このようなリプロダクティブ・ヘルスの概念から、家族計画指導は必要である。
プレコンセプションケア
WHOでは、プレコンセプションケアは、母体と子どもの健康増進を最大限にすることをスローガンに掲げ、妊娠する前の女性やカップルに生物医学的、行動学的、社会的健康介入を行うことと定義されている。最終的な目的は、短期間および長期間における、母体と子どもの健康の向上であるといわれている。
女性や子どもの健康のため、妊娠前ケアや妊娠間隔についても、プレコンセプションケアとして介入し、家族計画を推し進める。
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産後の家族計画
家族計画とは、家庭の事情を考慮して、子どもの数や有無、間隔に関して計画を立てることである。家庭の事情には、母体および子どもの健康状態、経済状態、住宅などの生活環境、子どもの教育計画、夫婦の年齢・遺伝関係、夫婦のライフスタイル、職業などの社会的側面などがある。そのため、夫婦で家族計画について話す機会をもつことが重要となる。
産後1か月健診で、医師からの許可が出るまでは、母体の回復・感染予防のために夫婦生活は避けるように指導する。産後の月経再開は個人差があるが必ず月経前に排卵が起こるため、妊娠を避けるためには、出産後最初の夫婦生活から避妊を行う必要がある(表1、表2)。
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引用・参考文献
1)横尾京子編、助産師基礎教育テキスト2013年版 第6巻産褥期のケア/新生児期・乳幼児期のケア,日本看護協会出版会,122-134, 2013
2)我部山キヨ子、武谷雄二:助産学講座7、助産診断・技術学Ⅱ[2]分娩期・産褥期、第4版、p.315~317、医学書院、2012
3)中山明子他編:お母さんを診よう-プライマリ・ケアのためのエビデンスと経験に基づいた女性診療、南山堂、2015
4)灘久代:産後の性交と避妊の実態-初めての出産から5か月が経過した女性の調査から、母性衛生、46(1):121、2005
5)倉智博久他:特集ホルモン治療UP TO DATE、ピルの普及とOCガイドライン、産婦人科治療、93(4):409~415、2006
6)牧野恒久他:避妊Ⅶ避妊法の選択3、産後の避妊、産科と婦人科、67(増刊号):264~267、2000
本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版