消化器外科の術後ドレーン管理
『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』より転載。
今回は消化器外科の術後ドレーン管理について解説します。
著者/ぷろぺら(看護師)
医学監修/平野龍亮
相澤病院外科センター乳腺・甲状腺外科
日本外科学会専門医・日本乳癌学会乳腺認定医・臨床研修指導医
ドレーンによって患者さんの体内で何が起こっているか、把握することができるよ!
ドレーンの目的
術後の患者さんの体には、ドレーンが入っています。
ドレーンには、①情報ドレーン、②予防的ドレーン、③治療的ドレーンといった目的があり、多くの場合で、その2つ以上の目的をもって留置されてきます。
❶情報ドレーン
術後に手術をした部位で何が起こっているかを観察するためのドレーンです。
縫合不全や膵液漏などの異常の早期発見のために留置されます。
❷予防的ドレーン
術後は、手術した部位で滲出液が多量に分泌されます。
消化器の術後の液溜まりは、「理想の細菌培養器」になってしまうので、その予防のために留置されます。腹腔内だけでなく、創部にも留置されることがあります。
体内は37℃で一定(培養器と同じ)、そして体液は栄養満点。消化器の術後は「菌はそこにいるもの」(腸を切除したら便は必ず出る)。 でも、術創には血流がなくて、免疫系のお助けはすぐには来られない…ということで、液溜まりは「理想の細菌培養器」になっちゃうんだよね…
❸治療的ドレーン
縫合不全や膵液漏が起こってしまった場合に、排膿などを目的として留置されます。
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ドレーンの種類
❶開放式ドレーン
特に創周囲などに使用されます(図1)。
ペンローズドレーンなどが代表的です。
外界に開かれているため、逆行性感染のリスクがあります。
体腔内にドレーンが落ち込むことを防ぐため、刺入部を縫合糸や安全ピンで固定することもあります。
❷閉鎖式ドレーン
腹腔内などに留置されます(図2)。
水分は重力で下に落ちるので挿入部より下に置くのが基本です。
ドレーンバッグに持続的に陰圧がかかるようになっているものもあり(図3)、その場合は陰圧がきちんとかかっているかの観察が必要です。
閉鎖式ドレーンでも、バッグ内の排液が逆行することによる逆行性感染のリスクがあります。
特にバルブ型リザーバーは、体の下敷きになったりすると逆流防止機構が壊れてむしろ陽圧になってしまうよ。
だから、患者さんがドレーンを下敷きにしたり、踏んづけたりしないように注意しようね!
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ドレーンの留置部位
腹腔内や胸腔内に留置されるドレーンでは、患者さんが仰臥位になったときに、体液が貯留しやすい場所に留置されます(図4)。
横隔膜下は高い位置にあるのですが、肝臓と接する横隔膜が上下するときにまるでポンプのように陰圧になって水を吸い上げるため、水が溜まりやすいです。
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ドレーンの固定
ドレーンの固定に使用するテープは角を丸く切り落とすことで、剥がれにくくなります(図5)。
ドレーンは刺入部近くに接続部がある場合もありますが、状況によって接続をはずしたり、接続はずれがないかを観察するために、テープを貼らず露出するようにします。
余裕をもたせて固定する部位には、ドレーンが自然にカーブを描くように固定します(図6)。
刺入部はみえるように基本的に透明テープを使用しますが、刺入部からの滲出液が多いときにはガーゼ固定を行うこともあります(図7)。
固定しているテープは基本的に毎日交換しましょう!
固定には粘着力の強いテープを使用していることが多いので、剥離するときはスキントラブルを起こさないよう十分注意しましょう。
テープ剥離後は、貼付部にスキントラブルがないかも確認します。
スキントラブル防止のため、以前貼ったところと同じ部位で固定しないようにしましょう。
無理な固定をすると、刺入部の疼痛や閉塞の原因に!
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ドレーンの観察・ケア
❶ドレーン排液の色・量
予防的ドレーンや情報ドレーンの排液は、通常では術直後から淡血性→淡々血性→漿液性と変化し、量も減少していきます(図8)。
突然、排液が出なくなったなどの異常がある場合には、ドレーンの屈曲や閉塞を疑います。
逆に1時間あたり100mL以上の血性の排液がある場合には、術後出血を疑います。
腹腔内のドレーン排液が、血性でもないのに急に増えたらイレウスのサインのことがあります(張った腸がボリュームを締めて腹圧が上がるので、液が絞り出されるように外に出てくるため)。
排液が図9のような色になったら、術後合併症を疑いましょう。
生理的な変化以外で色や量に大きな変化がみられたときは、ただちに医師へ報告するのよ!
❷刺入部の観察
最初に固定された部位から動いていないかを確認しますが、あらかじめ刺入部やテープの固定部にマーキングをしておくとわかりやすいです。
刺入部周囲に感染(発赤や刺入部からの排膿など)を起こしていないか、閉塞していないかを確認します。
❸ドレーンのミルキング
ドレーンチューブ内に排液が溜まったままだと、フィブリン塊や血液が固まったりしてドレーンチューブが詰まってしまうことがあります。
これを防ぐため、ドレーンチューブをミルキングローラー(図10)や手でしごいて流出を促す処置がミルキングです。
しかし、最近はあまり行いません。
添付文書をよく読むと、ミルキングが禁忌とされているドレーンは結構多いです。
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【著者プロフィール】
ぷろぺら(@puropera44)
看護師。これまでに慢性期病棟、クリニック、消化器外科、HCU、救急病棟、泌尿器科、腎臓内科などを経験。
看護roo!では『マンガ・ぴんとこなーす』を連載中。
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本連載は株式会社南山堂の提供により掲載しています。
[出典] 『ナスさんが教える! ぴんとくる消化器外科看護』 著者・ぷろぺら/医学監修・平野龍亮/2020年3月刊行/ 南山堂