フレイルチェスト

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はフレイルチェストについて解説します。

 

 

齋藤美和
さいたま赤十字病院救命救急センター外来・HCU看護師長
集中ケア認定看護師・呼吸療法認定士

 

 

フレイルチェストとは?

2か所以上の肋骨・肋軟骨骨折が上下に連続して複数本存在する場合や、上下連続した肋骨骨折に肋軟骨骨折を伴う場合などに、フレイルチェストを生じることがあります(図1)。

 

図1 フレイルチェスト

フレイルチェスト

 

胸郭が不安定になり、胸郭が吸気時に陥没し、呼気時に膨隆する奇異呼吸が生じます。

 

連続性を失った胸壁部分を、フレイルセグメントといいます。呼吸への影響は、フレイルセグメントを生じる強い衝撃による肺挫傷などの合併や、程度が影響するといわれています。

 

肺挫傷によるガス交換機能の低下、気管支への出血などによる気道抵抗の増加は、自発呼吸時の吸気努力を増大させ、奇異呼吸を悪化させます。これらはさらに外傷による疼痛を増強させ、1回換気量が低下することで、気道内分泌物の排出障害をも引き起こすことにつながります。

 

 

目次に戻る

患者さんはどんな状態?

強い衝撃による骨折のため、呼吸や会話、体動の際に生じる胸痛・背部痛が主訴となります。

 

疼痛により呼吸は浅表性の頻呼吸になることが多く、視診で損傷部に打撲痕や腫脹・皮下出血を認めることがあります。

 

視診・触診ともに奇異呼吸が認められ、胸郭内の臓器損傷により、皮下気腫が触知されることもあります。

 

 

目次に戻る

どんな検査をして診断する?

視診・触診を行い、胸郭の奇異呼吸の有無を観察します。

 

SpO2を測定し、呼吸数や呼吸パターンと合わせて呼吸状態を評価します。

 

X線で状態を確認し、CTで合併症を評価します。

 

 

目次に戻る

どんな治療を行う?

軽症の場合は十分な鎮痛を行い、保存的に経過をみます。この場合は、厳重に呼吸状態をモニタリングする必要があります。

 

換気不全と低酸素血症を認める場合は、気管挿管を行い人工呼吸器で胸腔内の陽圧管理を行います。

 

NPPV(非侵襲的陽圧換気)は適応と禁忌を理解し、施設設備やNPPVに対する習熟度を吟味したうえで判断します。NPPVの適応後は換気状況を評価し、改善が認められなければ、すぐに気管挿管に移行することを念頭におきます。

 

 

目次に戻る

看護師は何に注意する?

疼痛の評価は、スケールなどを用いて統一して行います。特に気管挿管下人工呼吸器管理を行わない場合は、厳重な呼吸状態の観察が必要です。

 

十分な換気と排痰を促すためには、しっかりと疼痛管理を行います。硬膜外ブロックや麻薬を使用し、除痛を図ります。この場合、指示どおりの薬剤が投与されているか、その評価としての効果判定を確実に行う必要があります。

 

 

目次に戻る

 

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら

 

> Amazonで見る  > 楽天で見る

 

 

[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ