気胸/肺嚢胞症
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は気胸/肺嚢胞症について解説します。
生井敦実
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師
気胸とは?肺嚢胞症とは?
気胸とは、肺に穴があき胸腔へ空気が漏れる病態です(図1)。
肺囊胞症は肺内に異常気腔のできる疾患で、原則として無症状です。
気腫性肺囊胞(ブラ・ブレブ)の破裂によって生じるものを、自然気胸といいます。
memo:自然気胸の特徴
20歳前後、長身、やせ型に多くみられる。
気胸の原因による分類は表1のとおりです。
memo:月経随伴性気胸
子宮内膜症性気胸ともいわれる。子宮内膜の成分が胸腔(肺、横隔膜、胸壁)に生着・増殖し、月経周期に合わせて剥がれることで気胸になると考えられている。気胸は女性には比較的少ないため、女性が気胸を発症したときは月経随伴性気胸の可能性も考える。30歳代~40歳代前半に好発し、右側にだけ起こることが多い。治療は外科治療またはホルモン療法を行う。
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患者さんはどんな状態?
肺囊胞症では、ブラ・ブレブの形成の段階なので、無症状です。
気胸を発症した場合、胸腔内に空気が貯留した状態になり、胸腔内の陰圧が消失します。すると肺がしぼんでしまいます(肺の虚脱)。
突然の呼吸困難、胸痛、胸部圧迫感・不快感、咳嗽が出現します。
チアノーゼ、頻呼吸を呈し、突然の血圧低下、頻脈、頸静脈怒張が認められた場合は、緊張性気胸であり、短時間で心停止する危険があります(図2)。そのため、迅速な診断と緊急処置が必要です。
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どんな検査をして診断する?
X線:気胸では肺が虚脱するため、肺血管影が見られず、X線の透過性が亢進した所見が認められます。
CT:囊胞の位置や大きさなど、明確な囊胞像を確認できます。
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どんな治療を行う?
気胸の原因、程度によって治療の方法は異なります。
保存療法:軽度または無症状の場合は、安静により破れた胸膜が自然にふさがり、肺が再膨張することもあります。
胸腔ドレナージ:胸腔内の空気を外へ出し(脱気、図5)、肺を再膨張させます。
外科的治療(胸腔鏡下手術):空気漏れ(リーク)が持続する場合や、再発気胸、緊張性気胸、血気胸、両側気胸の場合に適応となります。また、若年性の自然気胸の場合は再発のリスクが高いため、再発防止のために行います。
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看護師は何に注意する?
緊張性気胸では、急激に高度な肺虚脱を生じ、呼吸・循環障害が起こることが多いため、迅速な対応を行わないと生命の危険があります。
主な観察ポイントは表2です。
胸腔ドレナージの注意点
ドレーンの留置に伴い痛みが生じ、不眠の原因にもなります。疼痛コントロールを適切に行い、休息をとれるようにしましょう。
ドレーン挿入により胸腔内に再び陰圧がかかるようになり、ドレーンバッグは、胸腔内と同じ役割を果たします。そのため、外から空気が流入すると再度肺が虚脱する可能性が高くなります。ドレーンの抜去予防に努め、患者さんには、特に動作を行う際に気をつけてもらうよう声をかけます。意識レベルによっては付き添いや見守りを行います。
水封室の水量が適切でない場合も空気流入の原因となるため、水の量を確認します。
皮下気腫の観察
皮下気腫の拡大は、気道を圧迫し呼吸困難を引き起こす可能性があります。拡大している場合はマジックペンで点線を描いてマーキングし、ドレーン挿入部に隙間がないかを確認するとともに、すみやかに医師に報告しましょう。
皮下気腫が拡大する場合は、気胸に対する胸腔ドレナージの効果が不十分である可能性があります。
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気胸/肺嚢胞症の看護の経過
気胸/肺嚢胞症の看護の経過は以下のとおりです(表3-1、表3-2、表3-3、表3)。
表3-3 気胸/肺嚢胞症の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社