非定型肺炎(1) マイコプラズマ肺炎
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はマイコプラズマ肺炎について解説します。
平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は非定型肺炎であり、原因微生物マイコプラズマニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)に接触感染、飛沫感染することで発症します(表1)。
memo:非定型肺炎
細菌以外の微生物によって引き起こされる肺炎の総称。
マイコプラズマ肺炎は感染症法における感染症の分類において5類感染症に分類されます。そのためマイコプラズマ肺炎と診断された場合、基幹定点医療機関の医師は保健所に届け出る必要があります。
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患者さんはどんな状態?
健康な若年者(5~25歳)に比較的多く発症します。
発熱や頭痛、全身倦怠感が出現し、強固な乾性咳嗽がみられるのが特徴です。
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どんな検査をして診断する?
X線やCT上ではすりガラス陰影や粒状影が認められます(図1)。
血液検査では、WBC 10,000/μL未満であることが特徴的です(表2)。
さらに咽頭ぬぐい液や血清による抗原・抗体検査などを行い、総合的に判断して診断を行います。
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どんな治療を行う?
症状が軽症であることが多く、その場合にはアジスロマイシンの経口投与による治療が第1選択となります。
アジスロマイシンによる治療の経過が悪い場合には、耐性株を考慮してミノサイクリン、レスピラトリーキノロンを用います。入院治療の場合にはミノサイクリンやエリスロマイシン、レスピラトリーキノロンの点滴薬が用いられます。
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看護師は何に注意する?
合併症として紅斑やStevens-Johnson(スティーブンス-ジョンソン)症候群、Guillain-Barré(ギラン-バレー)症候群、溶血性貧血などがあり、重篤化することもあります。呼吸状態のみならず貧血の有無や全身の皮膚・粘膜の観察も行うようにしましょう。
接触感染・飛沫感染するため、患者さんのケアをする際はスタンダードプリコーションを徹底しましょう。
memo:Stevens-Johnson症候群
発熱や倦怠感のほか、眼、口唇、口腔内などの粘膜や全身の皮膚に紅斑やびらん、水疱が多発し壊死性障害を認める難病。
memo:Guillain-Barré症候群
肺胞壁や糸球体に対して抗基底膜抗体が産生され、肺胞出血や糸球体腎炎を引き起こすアレルギー性の自己免疫疾患。
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マイコプラズマ肺炎の看護の経過
マイコプラズマ肺炎の看護の経過(レジオネラ肺炎の看護の経過も含む)は以下のとおりです(表3-1、表3-2、表3-3、表3)。
表3-1 マイコプラズマ肺炎・レジオネラ肺炎の看護の経過(発症から入院・診断)
表3-2 マイコプラズマ肺炎・レジオネラ肺炎の看護の経過(入院直後・急性期)
表3-3 マイコプラズマ肺炎・レジオネラ肺炎の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社