肺炎
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は肺炎について解説します。
平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
肺炎とは?
肺炎はわが国の令和元(2019)年の死因順位で第5位です(図1)。平成29(2017)年に誤嚥性肺炎が独立して集計されるようになったため、肺炎は見かけ上減少していますが、臨床の場ではよくみかける疾患です。
特に65歳以上の高齢者では、肺炎の発症率や死亡率が急激に高くなります。
肺炎は細菌感染による細菌性肺炎と細菌以外の原因微生物の感染による非定型肺炎とに大別されます。
疾患の原因となる細菌・ウイルスによって治療薬が変わります。よって原因の同定をしっかり行うことが大切です。
目次に戻る
患者さんはどんな状態?
肺炎では、咳嗽、呼吸困難、胸痛、膿性痰などの呼吸器症状のほか、呼吸数・脈拍の増加、発熱、悪寒、倦怠感といった全身症状がみられます。
重篤化すると呼吸不全や敗血症となり命にかかわるため、特徴的な身体所見をしっかりと理解し、適切な看護が行えるようにしましょう。
目次に戻る
どんな検査をして診断する?
打診では濁音、触診では声音振盪の増強が、聴診では水泡音(coarse crackles)や捻髪音(fine crackles)が聴取されます。
X線検査では浸潤影がみられ、血液検査では白血球数(WBC)、C反応性タンパク(CRP)、赤沈(ESR)、プロカルシトニン(PCT)の増加がみられます。
目次に戻る
どんな治療を行う?
肺炎は発症の場によって市中肺炎(CAP;community-acquired pneumonia)、院内肺炎(HAP;hospital-acquired pneumonia)、医療・介護関連肺炎(NHCAP;nursing and healthcare-associated pneumonia)に分けられます(図2)。これが治療方針を決めるうえでの基本となります。
memo:A-DROP
Age:男性70歳以上、女性75歳以上
Dehydration:BUN21mg/dL以上または脱水あり
Respiration:SpO290%以下(PaO260Torr以下)
Orientation:意識障害あり
Pressure:血圧(収縮期)90mmHg 以下
※該当なしは軽症、1~2項目該当で中等症、3項目該当で重症、4項目以上で超重症
※ショックがあれば、 1 項目のみでも超重症
memo:I-ROAD
Immunodeficiency:悪性腫瘍または免疫不全状態
Respiration:SpO290%以下(PaO260Torr以下)
Orientation:意識障害あり
Age:男性70歳以上、女性75歳以上
Dehydration:乏尿または脱水
※3項目以上該当で重症、2項目以下で
・CRP≧20mg/dL
・胸部X線写真陰影の拡がりが一側肺の2/3以上
に当てはまる場合は中等症、当てはまらない場合は軽症
目次に戻る
看護師は何に注意する?
肺炎の分類や原因菌、病原微生物によって治療方針が異なります。またそれぞれ特徴的な身体所見もあるので、それぞれの病態理解がとても大切です。
肺炎にかぎらず、疾患によって感染経路はさまざまです(表1)。原因となる細菌・ウイルスによっては、飛沫・接触感染を引き起こす可能性があります。
看護師が媒介となってほかの患者さんにうつしてしまわないよう、疾患別の感染経路と予防策(図3)をしっかりと理解することが大切です。
個人防護具(PPE)の使用
PPEを着用する手順は、
1)手指衛生→2)エプロン・ガウン→3)マスク→4)ゴーグル・フェイスシールド→5)手袋
の順番で装着します。
手袋は清潔な状態を保持するため、最後に着用します。
PPEを外す手順は、
1)手袋→2)手指衛生→3)ゴーグル・フェイスシールド→4)手指衛生→5)エプロン・ガウン→6)手指衛生→7)マスク→8)手指衛生の順番で行います。汚染のひどいものから外すことを意識しましょう。
エプロン、ガウン
血液や体液、分泌物などで衣服が汚染される可能性がある場合、撥水性があり非浸透性のガウン、またはエプロンを着用します(図4、図5)。
マスク、ゴーグル、フェイスシールド
目や鼻、口に血液や体液などが飛沫する可能性のあるケアを行う場合に、目や鼻、口の粘膜を保護するために装着します(図6、図7、図8)。
装着する前と外した後には、手指衛生を行います。
手袋
血液や体液、分泌物や排泄物に触れるときや傷のある皮膚や粘膜に触れる直前、あるいは血液や体液、分泌物や排泄物で汚染された物品に触れる直前に手袋を装着します(図9)。
使用後の手袋は、汚染されている外側の部分に触れないよう注意して外します(図10)。
目次に戻る
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社