慢性閉塞性肺疾患(COPD)
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『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は慢性閉塞性肺疾患(COPD)について解説します。
平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは?
気道・肺実質疾患は、有害な粒子やガスなどを吸入することで、気道や肺実質に炎症が起こります。炎症に伴い、サイトカインによって好酸球が肺野へ浸潤することで、呼吸障害に陥る病態です。
気道・肺実質疾患の一つである慢性閉塞性肺疾患(COPD;chronic obstructive pulmonary disease)は、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる肺の炎症性疾患で、呼吸機能検査で正常に復することのない気流閉塞を示します(図1)。
COPDの危険因子として最も重要なものが喫煙で、喫煙者におけるCOPD発症率は年齢とともに増加します(表1)。
表1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の主なリスク因子と感染経路
COPDの危険因子は、有毒な粒子やガス(タバコ煙や大気汚染)の外因性危険因子と内因性危険因子に分けられます(表2)。タバコ煙が最大の危険因子で、COPD患者の90%に喫煙歴があるといわれています。
COPDと診断・治療されている人は氷山の一角とされ、未治療の患者が530万人になるといわれています(図2)。
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患者さんはどんな状態?
主な症状は、労作時呼吸困難、慢性の咳嗽、喀痰です。また、特徴的な身体所見として、呼気の延長や胸鎖乳突筋の肥大、樽状胸郭、フーバー徴候(Hoover's sign)などがあります(図3)。
COPDは肺以外にも全身性に併存症をもたらすため、近年全身性疾患ととらえられるようになってきました。
memo:COPDの併存症
筋骨格機能障害、心臓・血管疾患、栄養障害、骨粗鬆症、消化器疾患、糖尿病、精神疾患
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どんな検査をして診断する?
まずは問診で、長期にわたる喫煙歴やそれに相当する危険因子がある場合、COPDを疑います。そのほかに呼吸機能検査、X線、CT、動脈血ガス検査を行い、他疾患を除外したうえで診断します(表3、図4)。
memo:ブリンクマン指数
BI(brinkman index)、喫煙指数ともいう。生涯喫煙量を定量化した指数で、「1日の喫煙本数×喫煙年数」で算出。指数が大きいほど発がんリスクが高い。
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どんな治療を行う?
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙の関連が多いとされており、禁煙が基本的な治療となります。そのほかにも、ステロイドの投与や吸入により、病状の回復や安定を保つことができます。
COPDの病態は進行性ですが、十分な管理を行えば症状を改善し、疾患進行や死亡率などのリスクを改善することが期待できることから、以下のような管理目標が定められています(表4)。
安定期の治療
症状や気流閉塞などの重症度を判断し、治療を段階的に増やしていきます(図5)。
薬物療法では、吸入による気管支拡張薬が基本となります。その他の薬物療法を併用して、包括的な治療を行います(表5)。
急性増悪時の治療
COPDの急性増悪時の治療の基本は薬物療法になります。必要に応じて酸素療法や換気補助療法を行います。
薬物療法
ABCアプローチが基本となり、増悪時の第1選択はSABAの吸入を行います。
memo:ABCアプローチ
A:抗菌薬(Antibiotics)
B:気管支拡張薬(Bronchodilators)
C:ステロイド(Corticosteroids)
酸素療法
PaO2<60TorrあるいはSpO2<90%の場合に適応となり、PaO2≧60TorrあるいはSpO2≧90%を目標に行います。
Ⅱ型呼吸不全の場合にはCO2ナルコーシスのリスクが高いため、低濃度の酸素投与から開始します。
換気補助療法
十分な薬物療法・酸素療法を行っていても呼吸状態が改善しない場合やPaCO2>45TorrかつpH<7.35の場合に適応になります。
人工呼吸器を装着すると離脱が困難となる可能性もあるため、十分なインフォームド・コンセントと意思決定支援が重要です。
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看護師は何に注意する?
COPDは病期によって治療が確立されているため、治療の継続ができるようセルフケア支援が必要となります。
COPDは治る疾患ではありません。そのため患者さんは疾患と長くつきあいながら、急性増悪を防ぎ、再入院をしないことが重要です。そのためには患者さん自身が自分の病態を理解し、日常生活のなかで療養・増悪予防のための行動をとることが重要になります。
看護師は患者さんへ療養指導を行い、セルフマネジメント教育を行う必要があります。
症状が安定していても服薬は継続しなければなりません。吸入薬も複数使用する場合があります。そのため、入院中に吸入指導を行い、手技の獲得を支援する必要があります。
喫煙者であれば、禁煙指導を行います。
在宅酸素療法(HOT)を導入する場合は、機械の操作から災害発生時の対応など、指導する内容が多数あります。あらかじめ計画を立てて、患者さんが一緒に取り組めるよう援助していくことが大切です。
増悪や再入院とならないために感染予防は必須です。手洗いうがいはもちろん、人混みを避ける、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの接種を勧めるよう指導しましょう。
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護の経過
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護の経過は以下のとおりです(表6-1、表6-2、表6-3、表6)。
表6-1 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護の経過(発症から入院・診断)
表6-2 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護の経過(入院直後・急性期)
表6-3 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の看護の経過(一般病棟・自宅療養(外来)に向けて)
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社