吸入療法
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は吸入療法について解説します。
平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
どんな治療?
吸入療法とは、気道から直接吸収される吸入薬を用いた治療法です。症状の増悪の予防、発作の緩和などの目的で行います。
気管支喘息の治療では、大きく分けて長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)の2種類を吸入します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)では、吸入療法が症状の増悪予防に有効であり、QOLおよび運動耐容能を改善する効果があるといわれています。しかし海外のデータでは、吸入療法を開始してから1年後の継続率は20%という報告もあり、吸入方法を指導するだけでなく、吸入療法をしっかりと正しい方法で継続してもらうことが、指導するうえで重要になります。
吸入薬にはさまざまなデバイスや薬があります(図1、表1、表2、表3)。患者さんも複数の吸入器を用いて吸入療法を行う場合がありますので、正しい吸入方法を継続的に指導することが大切です。
memo:吸入補助器具
吸入補助器具内に薬剤を一度溜めてから吸入することができる補助具。デバイスの操作と吸入のタイミングを合わせることが難しい場合に使用する。
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吸入薬の副作用
吸入薬には全身性の副作用はありませんが、局所的に症状がみられることがあります。吸入指導の際にはあらかじめ患者さんに説明しておきましょう。
ステロイド製剤は、嗄声や口腔カンジダが起こる可能性があります。吸入後に含嗽をすることで、ある程度防ぐことができます。
抗コリン薬は尿閉の副作用があり、閉塞隅角緑内障の患者さんには禁忌です。眼に薬剤が入ると視覚障害が生じる可能性があるため、誤って眼に入れないよう、正しい吸入方法を指導しましょう。
β2刺激薬では、動悸や振戦の副作用が出る場合があります。
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看護師は何に注意する?
吸入療法は正しく使用しないと薬剤が気管支へ届かず、治療効果がなくなってしまいます。医師や看護師、薬剤師などがチームとなって患者さんに指導することが最も重要です。
吸入療法を患者さん自身が管理するのか、家族、ヘルパーなどが管理するのか、あらかじめ情報収集をしておきましょう。患者さん自身が管理する場合でも、家族にも同席してもらい、一緒に吸入指導を行うことが望ましいです(図2)。
吸入療法は症状がなくても使用を継続しなければなりません。そのため、吸入指導は、手技獲得後も継続して行うことが大切です。入院中・退院後も指導を継続できるように調整を行いましょう。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社