画像検査

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は画像検査について解説します。

 

 

長島康恵
さいたま赤十字病院放射線・内視鏡センター看護係長
がん放射線療法看護認定看護師
井上章子
さいたま赤十字病院放射線・内視鏡センター看護師長

 

 

どんな検査?

胸部(呼吸器)疾患の画像診断に用いられる検査には、単純X線撮影(XP;X-ray photography)、CT(コンピューター断層撮影;computed tomography)、MRI(磁気共鳴画像法;magnetic resonance imaging)、RI(核医学検査;radioisotope)、PET(ポジトロン断層法;positron emission tomography)、超音波検査(エコー)などがあります。

 

胸部単純X線撮影やCTは、病変の有無の確認や鑑別に、MRIは主に病変の広がりや鑑別に、RIは機能的な病変の有無の確認や鑑別に使用されます。エコーは胸壁に接した病変の診断や生検のガイドに用いられます1)

 

 

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単純X線撮影(XP)

単純X線撮影とは、X線の透過度を利用して、人体内部の様子を画像にしたものです(図1)。空気はX線が透過するため黒く写りますが、筋肉はX線が透過しにくいため、白く写ります。

 

図1 胸部X線の正常画像

胸部X線の正常画像

 

胸部X線は胸部疾患の診断において基本的な画像検査です。全体的な病変の分布や程度、広がりを確認することができます。

 

胸部X線は、胸部にある呼吸器や循環器の異常の有無を調べることができます。

 

たとえば、胸水、肺結核症肺炎など炎症や肺がん、肺気腫などの疾患や心臓の肥大などがわかります。胸部X線で異常がある場合はCTを実施することが一般的です。

 

正常な所見でも異常と間違えやすい影があるので、以前に撮影した画像があるときは比べてみるとわかりやすいです。

 

 

表1 胸部X線撮影前に確認すること

胸部X線撮影前に確認すること

 

胸部X線で特徴的な異常所見

異常所見は、病変の性質によって白い影、黒い影など映り方が変わります(表2表3表4図2図3)。

 

memo:病変の分布のパターン

肺病変は分布のパターンから、
1)限局性陰影
2)びまん性陰影
3)結節・腫瘤影
に分けられる。同じような所見を呈しても、感染、非感染(アレルギー、薬剤など)、腫瘤など多彩な疾患が鑑別に上がる。

 

表2 濃度(透過性)の異常

濃度(透過性)の異常

★1 レジオネラ肺炎
★2 マイコプラズマ肺炎

 

表3 形状の異常(結節影、粒状影)

形状の異常(結節影、粒状影)

★1 肺クリプトコッカス症
★2 肺がん
★3 肺結核症

 

表4 形状の異常(線状影、網状影)

 形状の異常(線状影、網状影)

 

memo:カーリー線

小葉間隔壁肥厚によってみられる線状影。上肺野で肺門から放射状に生じる線を、「カーリーAライン」、下肺野の外側で胸壁に直行する線を「カーリーBライン」という。

 

肺炎になると炎症で肺実質や肺胞内に水が染み出てくるため、濃度が増し白く見えます。

 

無気肺では肺に含まれる空気が減るので肺が虚脱し、通常の肺よりも濃度が増すため白く見えます。

 

胸水は濃度が高いので、通常の肺よりも白く見えます。胸水が貯留している場合は重力で下へ移動するため、立位の胸部X線では肋骨横隔膜角は白く鈍角になります。

 

COPDなど肺組織が破壊され、肺胞が拡張し透過性が亢進すると、肺野に気管と同じくらい黒く表示されます。

 

図2 air-bronchogram(気管支透亮像)

 air-bronchogram(気管支透亮像)

★1 細菌性肺炎

 

memo:air-bronchogram(気管支透亮像)

浸潤影やすりガラス陰影の内部に見られることがあり、透過性の低下を示す病変の内部に空気が通っている気管支があることを示す。正常では肺胞も気管支もどちらも空気を含んでおり、黒く写るため、区別はつかない。

 

図3 気胸

気胸

 

 

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CT(コンピューター断層撮影)

CTとは、X線で撮影した画像をコンピューター処理することで、身体を輪切りにしたような断面図を得られるものです(図4)。

 

X線では重なって見えにくい臓器や病変が、断層像であることから前後(左右)の重なりを取り除くことができ、正確に肺病変の情報を得ることができます(図5)。

 

X線で浸潤影に見えても、CTですりガラス陰影であったりするなど、1つの画像で診断されるものではありません。

 

以前に撮影した画像があるときは比べてみるとわかりやすいです。

 

X線同様に放射線被曝があるため、検査前に妊娠の有無を確認します。

 

図4 胸部CTの種類

胸部CTの種類

★1 気管

 

図5 胸部CTの見かた(正常画像)

胸部CTの見かた(正常画像)

 

memo:高分解能CT(HRCT)

スライス幅を薄くして撮影したCTデータを基に画像化したもの。肺小葉や末梢の気管支の形態、病変の輪郭、形状など微細な構造を観察することができる。びまん性肺疾患の診断や結節、腫瘤性病変の観察に有用とされている。

 

CTには造影剤を使用しない単純CTと、造影剤を使用する造影CTがあります。造影CTは、主に大動脈解離、肺動脈血栓症などの血管の病変や、単純CTで肺腫瘍が指摘された場合に実施することがあります。

 

造影CT実施時の注意点

造影CTではヨード系造影剤を使用するため、副作用に注意が必要です(表5表6)。

 

表5 造影剤の副作用症状

造影剤の副作用症状

 

表6 副作用出現時の対応方法の例

副作用出現時の対応方法の例

 

検査予約時にあらかじめ、副作用を起こしたことがないか、アレルギーがないかなどを確認します(リスクの高いときは造影剤の使用をやめることも必要)。

 

造影剤による副作用の出現の可能性があるため、事前に説明し、同意を得ます。

 

ビグアナイド系糖尿病薬服用中にヨード系造影剤を使用すると乳酸アシドーシスになる恐れがあるため、検査前に中止します。

 

※日本糖尿病学会によると、「ヨード系造影剤検査の前あるいは造影時にメトホルミンを中止して48時間後にeGFRを再評価して再開する」とされています8)

 

造影剤は腎臓から排泄されるため、腎機能を表わす指標である推算糸球体濾過量(eGFR)を確認し、検査後は十分に水分を摂取するよう説明します。

 

memo:造影剤の副作用の出現率

CTで使用するヨード系造影剤の遅発性副作用の頻度は3.8%で、そのほとんどは軽度の症状とされている。また、MRIで使用するガドリニウム造影剤での副作用出現率は、ヨード系造影剤と比較して低頻度といわれている。

 

 

CTで特徴的な異常所見

陰影はX線と同様、白い影、黒い影などその病変の性質によって影の映り方が変わります(図6図7図8図9図10図11図12)。

 

CTでも、肺病変は分布のパターンから1)限局性陰影、2)びまん性陰影、3)結節・腫瘤影に分けられます。

 

同じような所見を呈しても、感染、非感染(アレルギー、薬剤など)、腫瘍など多彩な疾患が鑑別に上がります。

 

図6 浸潤影

浸潤影

★1 レジオネラ肺炎

 

図7 すりガラス陰影

すりガラス陰影

★1 好酸球性肺炎

 

図8 結節影

結核影

★1 肺クリプトコッカス症

 

図9 粒状影

粒状影

★1 珪肺

 

図10 空洞形成

空洞形成

★1 肺アスペルギルス症

 

図11 蜂巣肺

蜂巣肺

★1 特発性肺線維症

 

図12 無気肺のX線、CT

無気肺のX線、CT

★1 肺葉

 

 

無気肺で見られるシルエットサインの原理を、図13に示します。

 

図13 シルエットサイン

シルエットサイン

 

 

 

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MRI(磁気共鳴画像法)

MRIは、放射線を使用せず、強い磁力と電磁波を使って得た情報を画像化したものです(図14)。CTと同じ断層写真ではありますが、水平断矢状断冠状断とさまざまな方向から撮影することができます。

 

図14 MRI画像

 MRI画像

 

強い磁力と電磁波により画像を構成するため、撮影に時間がかかります。

 

体動に弱く、呼吸や心拍動などでもアーチファクトが生じるため、検査時は身体を固定具で固定します。

 

memo:アーチファクト

artifact、障害陰影。金属が光ったり体動で画像がぶれたりすること。

 

検査前の準備

撮影時に大きな音が出るため、耳栓やヘッドフォンを使用します。

 

装置が細長く狭いので、閉所恐怖症の患者さんは実施困難なことがあります。

 

正確な画像情報を得られるように、撮影部位内にアーチファクトを生じるような金属または陰影になるようなものは外します(表7)。

 

表7 検査前に外す磁性体・陰影になるもの

検査前に外す磁性体・陰影になるもの

 

磁力を利用するため金属の持ち込みは禁忌です。体内金属がある人は撮影できません。外せる磁性体は必ず外します。たとえばニトログリセリン貼付剤、経皮吸収ニコチン製剤は素材にアルミが使われているため外す必要があります。

 

memo:磁性体

磁石にくっつく金属。磁性を帯びる物質。

 

 

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RI(核医学検査)

RIは放射性同位元素(RI)を用いて、呼吸機能の検査、非呼吸機能の検査、腫瘍検出の検査を行うことができます1)表8図15)。

 

表8 一般的によく使われる核医学検査

 一般的によく使われる核医学検査

★1 MIBG(metaiodobenzylguanidine)

 

図15 骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィ

 

呼吸機能や肺病変をシンチグラフィで検査することは少なく、現在はPETで腫瘍検出の検査が行われることが多いです。

 

CTの性能向上やPETの出現により、ガリウムシンチグラフィの実施件数は減少しています。

 

 

検査前の準備

検出器がかなり身体に近い位置までせまるため、検査前にはMRI同様、閉所恐怖症があるかどうかを確認する必要があります。

 

ガリウムシンチグラフィで使用する67Ga-クエン酸ガリウムは腸管からの排泄が多いため、前日夜に緩下剤を内服し排便を促す必要があります。排便がないときは当日朝に高圧浣腸をすることもあります。

 

放射性薬剤を注射後、体内で一定時間経過し病変部に集積するのを待ってから撮影することが多いです。ガリウムシンチグラフィは注射後2~3日おいてから、骨シンチグラフィは2~3時間おいてから撮影します。

 

体動でアーチファクトが生じるため、患者さんに、撮影時はじっとしてもらうよう説明します。痛みがある場合は痛み止めを使用します。

 

放射性医薬品の注意点

核医学検査で使用する放射性医薬品は放出されるエネルギーが早めに減衰する半減期の短いものを使用しますが、注射した直後の排泄物には検査薬が含まれています。患者さんがオムツなどを使用しているときは一定期間病院内で保管する必要があります。

 

 

memo:半減期

投与された放射性医薬品のγ線を放出する力は、体内での放射性核種の壊変による物理学的減少(物理学的半減期)と排泄による生理学的減少(生理学的半減期)により減少する。放出する力がだいたい半分になるのに要する時間を半減期という。

 

 

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PET(ポジトロン断層法)

放射性同位元素のうちのポジトロン(陽電子崩壊をする)核種を使用した検査です(図16)。

 

図16 肺がんのPET画像

肺がんのPET画像

 

18F-FDG(fluorodeoxyglucose 18F)を用いるPET検査をFDG-PET(エフディージーペット)といいます。18F-FDGはグルコース(ブドウ糖)と同じ代謝で活動が活発な部位に集まります。がん細胞は正常細胞よりも盛んに増殖するため、より多くのブドウ糖を取り込みます。そのため、ブドウ糖に似た構造の薬剤はがん細胞に集まりやすくなります。


がん細胞に集まるほかに、脳・心臓・肝臓・筋肉などにも集まります。また、腎排泄のため腎臓・膀胱にも集まります。このような集積は生理的集積ですので診断時に除外されます。

 

memo:高血糖のPET画像

血糖値が200mg/dL以上の高血糖では、全体にぼやけた画像になる可能性がある。

memo:筋肉への集積

筋肉への集積は前日の激しい運動やインスリン注射・糖尿病薬の内服でも起こる。

 

検査前の準備

18F-FDGは食事をしていると薬剤が組織に吸収されなくなり、病変部が特定しづらくなるため、最低でも4時間の禁食は必要です。飲み物もカロリーのあるものは摂取しないようにします。元々の食事制限がなければ、検査後に制限はありません。

 

放射性医療品の注意点

PETの使用薬剤は放出されるエネルギーが高く、薬剤注射後患者さんは一時的に放射線管理区域内での待機が必要です。ただし薬剤の半減期が約110分と短いため、半減期を過ぎれば検査室から退室できます。待機中は医療者はできるだけ患者さんから離れ、処置を行う必要があるときは短時間で済ませるようにします。

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

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