ガス交換のしくみ

 

『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回はガス交換のしくみについて解説します。

 

 

平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師

 

 

ガス交換とは

生体は大気中から吸気によって空気を取り込みます。空気に含まれた酸素は、肺胞から血液中に入り、動脈血となって全身に運ばれます。

 

一方、肺胞では、全身より運ばれてきた静脈血から、二酸化炭素が取り込まれます。二酸化炭素は、呼気によって排出されます。

 

肺胞で酸素が血液中に取り込まれ、逆に二酸化炭素が血液中から肺胞へと移動することを、ガス交換といいます(図1図2)。

 

図1 ガス交換

ガス交換

 

図2 拡散

拡散

 

 

目次に戻る

外呼吸と内呼吸

呼吸は、肺で行われる外呼吸と、細胞間で行われる内呼吸とに分けられます(図3)。

 

図3 外呼吸と内呼吸のしくみ

外呼吸と内呼吸のしくみ

 

 

目次に戻る

ガスの運搬のしくみと酸素解離曲線

酸素を肺から細胞へ、二酸化炭素を細胞から肺へ血液を介して運ぶことを、ガスの運搬といいます。

 

酸素は、血液中ではほとんどが赤血球中のヘモグロビン(Hb)と結合して運ばれます。また、二酸化炭素は重炭酸イオン(HCO3として運ばれます。

 

酸素がヘモグロビンと結合している割合を酸素飽和度(SO2といいます。これは動脈血酸素分圧と関係していて、S字状の曲線を描きます。これを酸素解離曲線といいます(図4図5)。

 

memo:SO2とSaO2の違い

酸素飽和度(SO2)とは、酸素と結合したヘモグロビンの比率のこと。一方、動脈血酸素飽和度(SaO2)は、動脈血中のヘモグロビンのうち、何%が酸素と結びついているかを表したもの。

 

図4 酸素解離曲線

酸素解離曲線

★1 PO2 (partial pressure of oxygen)

 

図5 酸素解離曲線の右方偏位

酸素解離曲線の右方偏位

★1 DPG(diphosphoglycerate)

 

 

目次に戻る

ガス交換異常

換気血流比

ガス交換を効率よく行うためには、すべての肺胞において、換気量と血流量のバランスが一定であることが理想となります。この、換気と血流のバランスのことを換気血流比といいます(図6)。

 

図6 換気血流比

換気血流比

★1 VA(alveolar ventilation)
★2 VA/Q(alveolar ventilation perfusion ratio)

 

換気血流比がつり合っていない状態を、換気血流比不均等といいます。

 

正常な肺においても、重力の影響で生理的に不均等が生じています。肺尖部と肺底部の換気血流比を比較すると、重力の影響により立位では肺尖部が高くなり、肺底部は低くなります(生理的換気血流比不均等図7図8)。

 

図7 生理的換気血流比不均等

生理的換気血流比不均等

 

図8 肺胞気‐動脈血酸素分圧較差(A-aDO2

肺胞気‐動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)

★1 A-aDO2(alveolar-arterial oxygen difference)
★2 PAO2(alveolar oxygen partial pressure)

 

疾患などにかかると不均等分布の度合いが大きくなり、低酸素血症へ至ります(表1)。

 

表1 低酸素血症の原因

低酸素血症の原因

★1 間質性肺炎
★2 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
★3 肺水腫
★4 COPD
★5 無気肺

 

目次に戻る

酸塩基平衡の理解

生体の酸・塩基は一定範囲内に保たれていて、これを、酸塩基平衡といいます。この範囲を超えると生体機能の異常をきたします(図9表2)。

 

memo:酸

水溶液中において水素イオン(H)を放出するもの。体内で代表的なものとしては、二酸化炭素(CO2)があげられる。

memo:塩基

水溶液中において水素イオンを受け取るもの。

 

図9 血液ガスの評価

血液ガスの評価

 

表2 血液ガスの異常

血液ガスの異常

 

アシドーシスとは、pHが酸性に傾いた状態をいい、アルカローシスは、pHがアルカリ性に傾いた状態をいいます。

 

アシドーシスとアルカローシスは原因によって、二酸化炭素(CO2)の変化である呼吸性か、重炭酸イオン(HCO3-)の変化による代謝性に分類されます。

 

生体内では、CO2、乳酸、リン酸、ケトン体などの酸が代謝によって産生されるため、常に酸性に傾きやすい状態にあります。そこで、体内のpHを一定範囲内に維持するため、pHの変化を抑制する緩衝系と、酸・塩基を体外に排出する肺・腎臓により調整を行っています。

 

memo:PaO2の基準値

80~100Torr

memo:PaCO2の基準値

35~45Torr

memo:HCO3の基準値

22~26mEq/L

memo:アシデミア

血液が酸性に傾くこと。

memo:アルカレミア

血液がアルカリ性に傾くこと。

 

目次に戻る

 


 

本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら

 

> Amazonで見る  > 楽天で見る

 

[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ