呼吸器看護で大切なことは?
『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は呼吸器看護で重要なポイントについて解説します。
佐野由紀子
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師長
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
予後の改善にはフィジカルアセスメントが重要
呼吸器疾患は生命の危機的状態に陥る可能性が高いため、急性期や急性増悪時の救命処置を適切に実施することが重要です。急変6~8時間前にはなんらかの前駆症状が出現するといわれています1)(図1)。
患者さんにどのような急変前徴候が起こりやすいのか理解し、即座に対応できるように準備しておくことが必要です。
バイタルサインは患者さんの予後を正確に予測するとされ、特に呼吸数は、頻拍や血圧の異常よりも予後予測因子として有用とされています(図2)。そのためには、フィジカルイグザミネーション(視診・触診・聴診・打診)と問診や検査データから得た情報をアセスメントすることが重要です。
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急性期と慢性期で観察ポイントが異なる
急性期と慢性期では患者さんの状態が異なるため、それぞれ観察ポイントも異なります。
急性期の患者さんは呼吸困難が強く、情報を聞き取ることが難しい場合も多くあります。それぞれの疾患の特徴を理解し、情報収集へとつなげましょう。
急性期の情報収集のポイント
呼吸障害は、呼吸器疾患だけから起こるとは限りません。原疾患の急性増悪なのか、他疾患によるものなのか、バイタルサインや血液検査、画像所見から確認しましょう。また、どのような身体症状があるのかも確認します。
急性呼吸不全などは呼吸困難やCO2ナルコーシスによって意識障害が出現することも多いので、家族などから情報を聞き取り、挿管管理や人工呼吸器装着についても希望を確認し、治療方針へとつなげていきましょう。
慢性期の情報収集のポイント
在宅療養へ向けた支援
日常生活の様子や、服薬・栄養・運動・感染対策などの状況を把握し、在宅療養へ向けて患者さんに正しい情報提供や指導を行います。
意思決定支援
非がん性疾患であるCOPDや間質性肺炎などの慢性呼吸器疾患では、増悪と安定を繰り返し、生命予後が不確かであることが特徴的です。慢性期で安定しているときに、次に症状が悪化した場合、患者さんやご家族はどのような治療・療養を望むのか、患者さんやご家族、医療者であらかじめ話し合っておくことが大切です。そういった話し合いの場を調整すること、意思決定支援なども看護師の大切な役割になります。
自己効力感を高める支援
患者さんは病状が進行するにつれ日常生活の中でできないことが増えていきます。また、これまで担ってきた役割の喪失も起こります。このような中で患者さんは喪失体験を繰り返しながらも病と付き合っていかなくてはなりません。それをしっかりと理解し、患者さんと寄り添って自己効力感を高めるようなケアをしていくことが大切です。
memo:自己効力感
ある具体的な状況において、適切な行動を成し遂げられるという予期および確信のこと。
自己効力感を高める情報源として、自己の成功体験、代理的経験、言語的説得、生理的・情動的状態があります(表1)。
疾患や治療を受け入れるための情緒的支援
慢性呼吸不全の経過をたどる場合は、疾患や治療を受け入れることができるよう、積極的傾聴や受容、保証(何を言ってもよいと思える場の提供)、共感などのスキルを使って情緒的支援を行います。
セルフマネジメント能力を高める支援
患者さんが疾患や治療に関する知識や技術を習得し、セルフマネジメント能力を高めることが重要になります。
COPDをはじめとする慢性呼吸器疾患は、進行に伴い急性増悪を繰り返すことで呼吸障害が進展するといわれています(図3)。慢性呼吸器疾患の安定期は在宅療養が多いため、患者さん自身で管理することが、重症化や急性増悪を避け、QOLの向上を図るうえで重要となります。
図3 急性増悪が死亡リスクに与える影響(COPDの5年生存率)
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呼吸器疾患の看護の経過
呼吸器疾患の看護の経過は表2のとおりです。
表2-3 呼吸器疾患の経過(一般病棟から自宅療養(外来)に向けて)
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社