呼吸器疾患とは?
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『本当に大切なことが1冊でわかる呼吸器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は呼吸器疾患の全体像について解説します。
佐野由紀子
さいたま赤十字病院10F西病棟看護師長
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
平澤真実
さいたま赤十字病院ICU看護主任
慢性呼吸器疾患看護認定看護師
呼吸器疾患は死因の上位に入っている
呼吸器疾患とは呼吸器(上気道・気管・気管支・肺・胸膜など)に起こる疾患の総称です。
令和元年(2019)のわが国の死因順位(図1)の1位は悪性新生物であり、その中で死亡数が一番多い部位は肺となっています。また、死因順位の5位は肺炎、6位は誤嚥性肺炎となっており、呼吸器疾患で死亡する人が多いことがわかります。
呼吸器疾患は急激に発症し、慢性経過をたどって、治療しても完全に治ること(治癒)が望めない、あるいはきわめて長い期間を要する場合もあります。例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD;chronic obstructive pulmonary disease)、間質性肺炎などの疾患です。
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呼吸困難を感じる人が多い
呼吸器疾患をもつ患者さんは、呼吸困難を主要とする症状を抱え、呼吸運動に際して苦しさや努力感などの自覚症状を有し、これまで無意識に行っていた呼吸を意識せざるをえない状態になります(図2、図3)。
memo:呼吸困難
呼吸に伴う不快な感覚。思うように呼吸ができない状態になると、恐怖や苦痛に襲われ、生命の危機的状況を経験する。
呼吸器疾患では、長期的な薬物療法に加えて在宅酸素療法(HOT;home oxygen therapy)や吸引、人工呼吸器などを使用することも多く、医療依存度が高くなるため、ケアには多くの知識と技術を必要とし、患者さんや家族の負担も大きくなります。また、患者さんの日常生活動作(ADL;activities of daily living)や社会的活動が制限され、社会的孤立をまねくことにより、抑うつ傾向を呈しやすいことも特徴です。
COPDなどの疾患は、うまくコントロールできなければ急性増悪を繰り返し、合併症を起こして死に至る可能性をもっています。
非がん性呼吸器疾患は増悪と安定期を繰り返し、生命予後が不確かであることも特徴です(図4)。
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呼吸器疾患の検査
呼吸器疾患でよく行われる検査は、X線、CT(computed tomography)、気管支鏡検査、胸腔鏡検査、血液検査、呼吸機能検査などです(表1)。
★1 TBB(transbronchial biopsy)
★2 TBLB(transbronchial lung biopsy)
★3 TBNA(transbronchial needle aspiration)
★4 TBLC(transbronchial lung cryobiopsy)
★5 BAL(bronchoalveolar lavage)
自発呼吸が不安定な場合は、すみやかに気道の確保を行い、換気の補助を行う必要があります。また、低酸素状態の場合も十分な酸素投与を行い、呼吸の安定化を図ります。その後、原因検索のための検査を実施していきます。
画像などの検査を実施する場合は、一時的に患者さんから離れるため、バイタルサインの観察やフィジカルアセスメントが重要です。
検査の順番として、侵襲の少ない検査から実施していきます。画像検査、呼吸機能検査、血液検査、気管支鏡検査、胸腔鏡検査などを実施していきます。
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呼吸器疾患の治療
肺がんの治療方法には、薬物療法、放射線療法、手術療法があります。治療方法はがんの種類(組織型)や遺伝子の型、がんの広がり方(病期、ステージ)とともに、患者さんの全身状態や希望なども合わせて選択していきます(図5)。
最近ではがん細胞のDNAのどこに異常があるかわかるようになってきました。これを利用した治療法が分子標的治療であり、いくつかの薬剤が承認されています。
呼吸不全の治療方法は、酸素療法、人工呼吸療法、体外式膜型人工肺(ECMO;extracorporeal membrane oxygenation)など多岐にわたります。人工呼吸療法や酸素療法は、年々新しい治療法へ進歩しています。
呼吸器疾患の慢性期には、呼吸リハビリテーションとして運動療法、栄養療法、薬物療法、カウンセリングなどの包括的な治療が有用です。
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呼吸器疾患は慢性的な経過をたどることが多い
呼吸器疾患は、肺がんも急性呼吸不全も慢性的な経過をたどることが多くなります。
がんの場合は、抗がん剤の投与を継続し、効果判定や有害事象の出現などの経過を観察します。
呼吸不全は薬物療法と在宅酸素療法(HOT)、在宅人工呼吸療法や吸引など医療機器を使用し、呼吸リハビリテーションを継続して日常生活動作の維持を図ります。急性増悪などを繰り返す場合もあり、セルフケア支援や家族の心理的・社会的負担の軽減に努める必要があります。
呼吸器疾患は、急性増悪と終末期の判断がつきにくいため、治療の選択などに関して、本人が意思決定することが困難な場合も多くあります。そのため、事前に本人の意向を話し合っておくことが重要です。また、本人の意向が確認できない場合は、家族が代理意思決定することになり、精神的負担が大きいため、家族の心理的な支援も重要となります。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 呼吸器』 編集/さいたま赤十字病院看護部/2021年3月刊行/ 照林社