糖尿病性ニューロパチー
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は糖尿病性ニューロパチーの検査・治療・看護について解説します。
石田敦子
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
糖尿病性ニューロパチーとは?
糖尿病の三大合併症は、神経障害、腎症、網膜症です。神経障害は他の2つに比べて早期に出現し、頻度も高いのが特徴です。
高血糖の持続により、神経を栄養する微小血管が障害されることなどが原因となって、末梢神経が障害されると考えられています(図1)。
通常は高血糖が5~10年以上持続することにより、感覚障害や自律神経障害などの症状が顕在化します。
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患者さんはどんな状態?
障害される末梢神経の部位によって、症状はさまざまです。
多発ニューロパチーが一般的ですが、単ニューロパチーや、混合型を呈する場合もあります。
感覚障害による足裏のしびれ、痛みを初発症状とすることが多く、循環障害や易感染性などの条件が加わることで、足壊疽に至ることもあります。
下肢末端から発症し、進行すると上肢末端にもしびれや感覚低下などの症状が現れます。
自律神経障害により、発汗の異常、瞳孔機能の異常、下痢、便秘、排尿障害、勃起障害などが生じます。
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どんな検査をして診断する?
問診により既往歴を確認します。
振動覚の低下、アキレス腱反射の低下・消失は早期より出現するため、診断に有用です(図2)。
memo:HbA1c
糖化ヘモグロビン(glycohemoglobin)。タンパク質(ヘモグロビンのアミノ基)とブドウ糖が非酵素反応により結合したもの。体内のタンパク質は、高血糖状態であるほど糖化される割合が高くなる。赤血球の寿命は120日だが、その間に血管の中で循環してブドウ糖と結合していくため、把握できるのは1~2か月前の血糖コントロールの状態。
memo:OGTT
75gブドウ糖負荷試験(oralglucose tolerance test)。ブドウ糖を負荷することによりインスリンの反応を調べる検査。空腹時に75gブドウ糖液を経口投与し、その後30分ごとに採血して血糖値を測定する。
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どんな治療を行う?
軽症の場合は、血糖コントロールや生活習慣の改善を行います。
痛みがある場合は、薬剤による疼痛コントロールを行います。NSAIDs(non-steroidal antiーinflammatory drugs)を基本とし、疼痛の種類によって抗けいれん薬(カルバマゼピン)、神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン)、三環系抗うつ薬、抗不整脈薬(メキシチレン)なども使用します。
アルドース還元酵素阻害薬、ビタミンB12製剤を用いることもあります。
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看護師は何に注意する?
血糖コントロールが適切に行われるよう、食事・服薬・日常生活指導を行います。
外傷予防について指導を行います。特に症状が進行すると、温痛覚低下により、本人も気づかない間に外傷や熱傷を負っている場合があります。
循環障害や易感染性などの条件が加わり、潰瘍や壊疽形成へと至る可能性があるため、患者さんには日ごろから予防と早期発見に努めてもらう必要があることを伝えます。例えば、熱さを感じにくくなっていることで、湯たんぽを使用した際に低温熱傷をする危険があります。また、痛みも感じにくくなっているため、足にケガをしても気づきにくく、悪化してから発見することもあります。靴ずれなども気づかないうちに悪化することがあるため、日ごろから観察を心がけてもらうよう説明しましょう。
下肢の感覚障害が生じているため、転倒・転落のリスクが高まります。日常生活での転倒予防に対して、患者さんと家族に注意を促します。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社