末梢神経障害(ニューロパチー)
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は末梢神経障害(ニューロパチー)の特徴や看護のポイントについて解説します。
石田敦子
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
末梢神経障害(ニューロパチー)とは?
末梢神経には、運動神経、感覚神経、自律神経があります。これらが障害され、運動麻痺、感覚障害、自律神経障害などを生じる疾患を総称して、ニューロパチーといいます。
末梢神経障害の主なリスク因子は表1のとおりです。
糖尿病性ニューロパチー
糖尿病の三大合併症のうちの1つで、最も早期に・高頻度に出現します。
アルコール性ニューロパチー
アルコール依存症で高頻度にみられ、ビタミンB群の欠乏によって生じます。
ギラン・バレー症候群
カンピロバクタージェジュニなどへの感染後、自己免疫反応によって生じます。
慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)
四肢の運動障害・感覚障害が緩徐に進行し、再発と寛解を繰り返すことがあります。
三叉神経痛
三叉神経の分布領域に沿って、片側性に鋭い痛みが生じます。
顔面神経麻痺
顔面神経の障害により、顔面の一部に麻痺が生じます。
顔面けいれん
顔面神経が圧迫され、顔面の片側の筋肉がけいれんします。
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末梢神経障害(ニューロパチー)の全体像
どんな疾患?
末梢神経障害(ニューロパチー)は、さまざまな原因により末梢神経が障害され、運動神経障害、感覚神経障害、自律神経障害が生じた状態のことをいいます。
ニューロパチーが生じる主な疾患は表2のとおりです。
★1 SLE(systemic lupus erythematosus)
障害部位の分布により、病型は主に、多発ニューロパチー、単ニューロパチー、多発単ニューロパチーの3つに分けることができます(図1)。
患者さんはどんな状態?
障害される末梢神経の支配領域に、筋萎縮や運動麻痺、感覚障害が現れます(図2)。
どんな検査をして診断する?
神経学的所見の確認のほか、疑われる疾患に応じた検体検査・生体検査を行います(表4)。
★1 徒手筋力検査(MMT)
★2 腱反射
★3 振動覚
★4 脳脊髄液検査
★5 神経伝導検査
どんな治療を行う?
保存的治療としては、障害部位を極力使用しないよう指導します。部位によってはコルセットなどを使用し、関節の固定を行います。
疾患に応じて、投薬治療や、重症例では手術療法を行うこともあります。
看護師は何に注意する?
障害部位に応じて、関節を極力動かさないなど日常生活上の注意点について説明します。
例)正中神経障害(手根管症候群)
➡手首に負担のかかる動作を控える
腓骨神経障害
➡足を組まないよう指導する
また、原因疾患に応じて注意点が異なるため、確認しておきましょう。
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末梢神経障害(ニューロパチー)の看護の経過
末梢神経障害(ニューロパチー)の看護を経過ごとにみていきましょう(表5-1、表5-2、表5-3)。
看護の経過の一覧表はこちら。
表5-1末梢神経障害(ニューロパチー)の看護の経過 発症から入院・診断
表5-2末梢神経障害(ニューロパチー)の看護の経過 入院直後、急性期
表5-3末梢神経障害(ニューロパチー)の看護の経過 一般病棟、自宅療養(外来)に向けて
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社