脳挫傷
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は脳挫傷の検査・治療・看護について解説します。
尾崎裕基
東海大学医学部付属八王子病院看護部 集中ケア認定看護師
脳挫傷とは?
頭部への加速または減速による頭蓋内の各組織の運動にズレが生じると、脳損傷をきたします。この損傷を脳挫傷といいます(表1)。
★1 DAI:diffuse axonal injury
memo:頭蓋内因子
占拠性病変による圧迫、破壊、脳ヘルニアによる脳幹障害、脳虚血、脳浮腫、脳血管攣縮、頭蓋内感染など。
memo:全身性因子
低酸素血症、低血圧、高・低二酸化炭素血症、貧血、高熱など。
受傷機転は、交通事故、転落・転倒が多いです。
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患者さんはどんな状態?
外傷を伴っているため、頭痛や嘔気・嘔吐などを生じます。
重症例では著明な脳浮腫が進行して、急激に意識障害が進行することがあります。
脳浮腫で頭蓋内圧が上昇すると、けいれんが起こる恐れがあります。
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どんな検査をして診断する?
基本的に脳挫傷は外傷を伴い、出血を生じているので、まず頭部CT検査を行い、治療方針を決定します(図1)。
頭部CTでは少出血による混合吸収域(salt and pepper像)を呈します。
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どんな治療を行う?
血腫が少量の場合は、脳圧降下薬の点滴静注を行います。
頭蓋内圧亢進には、外減圧術、低体温療法やバルビツレート療法が行われることもあります。
memo:低体温療法
血管内冷却または体外冷却装置を用い、深部体温を32~34℃まで低下させることで脳の代謝を下げ、二次的な脳損傷を最小限におさえる治療。最低48時間は行い、その後復温させる。集中治療で行う。
memo:バルビツレート療法
脳保護・脳圧降下作用があるバルビツール(ラボナール®)を高用量投与することで頭蓋内圧の降下を図る。ただし副作用の低血圧、心抑制によって逆に脳血流低下をまねき、逆効果となることもあるため、投与前の循環動態の安定が必要。
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看護師は何に注意する?
意識障害の原因検索を行い、頭部外傷以外に外傷がないか、多発外傷の有無を確認し、ABCDEの安定化が図れたら頭部CTに移動します。
memo:ABCDE
A:気道
B:呼吸
C:循環
D:神経所見
E:体温管理
保存的治療を行う場合は神経学的所見や頭蓋内圧亢進症状に注意し、脳圧降下薬を使用する場合、IN・OUTバランスも観察していく必要があります。
外科的治療を行う場合、手術までは神経学的所見およびバイタルサインに注意し、術後は合併症の出現に注意するとともに、身体的・精神的苦痛を緩和します。特に、疼痛緩和の管理は、血圧上昇を防ぐ効果もあるため重要です。
術後は低血圧に注意が必要であり、「頭部外傷治療・管理のガイドライン」によると、50~69歳は100mmHg以上、15~49歳、70歳以上は110mmHg以上を維持することで死亡率を低下させ、神経学的予後の改善をもたらすと考えられています。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社