慢性硬膜下血腫

『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は慢性硬膜下血腫の検査・治療・看護について解説します。

 

尾崎裕基
東海大学医学部付属八王子病院看護部 集中ケア認定看護師

 

 

慢性硬膜下血腫とは?

軽微な頭部外傷による微量の出血などが原因で起こります。

 

硬膜とクモ膜の間に新生被膜(外膜、内膜)が形成され、流動性が保たれた血液、髄液により徐々に拡大することがあります。

 

発症は、脳萎縮を伴うアルコール多飲者、肝機能障害や血液凝固異常(抗凝固薬内服者)、けいれん、髄液シャント術後、がん患者、透析患者が多いとされています。女性より男性に多く発症します。

 

発症要因は急性硬膜下血腫と同じですが、脳萎縮により頭蓋内圧亢進症状が急性に現れず、受傷後3週間以上(2~3か月後が多い)経過してから発症することが多いといわれています。

 

 

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患者さんはどんな状態?

初期は頭痛が多いとされています。

 

高齢者で脳萎縮がある人は、出血量が多くても徐々に認知機能障害をきたし、尿失禁、片麻痺、失語症、けいれんが生じます。

 

若年者は、出血量がわずかでも脳萎縮が進んでいないため、頭痛、悪心・嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状が起こります。

 

 

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どんな検査をして診断する?

CTMRIによって診断されます(図1)。

 

図1慢性硬膜下血腫のMRI

図1慢性硬膜下血腫のMRI

 

画像上の特徴的な所見として、三日月型を認めます。

 

急性硬膜下血腫との違いは、脳表と頭蓋骨の間に、さまざまな吸収域の血腫を示す点です。

 

血腫の圧迫により脳溝の消失を認めることがあります。

 

高吸収と低吸収の間に鏡面形成を認めることもあります。

 

 

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どんな治療を行う?

慢性硬膜下血腫の主な治療は、保存的治療、外科的治療(穿頭術開頭術)の2つに分かれます(表1)。

 

表1慢性硬膜下血腫の主な治療方法

表1慢性硬膜下血腫の主な治療方法

 

保存的治療

基本的には急性硬膜下血腫と比べて予後は良好です。

 

症候性であれば手術適応になりますが、頭痛や神経症状が強くない症例では保存的治療も可能とされています。

 

血液凝固異常を起こしている(抗凝固療法により意図的に凝固能を延長している)場合は、止血薬の投与、抗凝固療法の一時中止などが選択されます。

 

外科的治療

穿頭ドレナージ術では硬膜下ドレーンが挿入され、1日程度ドレナージが行われます。術後翌日のCT検査によってドレーンの抜去は検討されます。

 

1割程度の患者さんは慢性的に繰り返すため、開頭による被膜の切除が行われることがあります。

 

 

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看護師は何に注意する?

急性硬膜下血腫と大きな変わりはありません。

 

外科的治療で穿頭ドレナージ術が行われた際には血腫腔内にドレーンが挿入されるため、そこからの排液の流出状況(量、性状)の観察が必要になります。

 

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社

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