脳血管の全体像
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は脳血管の走行や脳脊髄液の流れについて解説します。
塙 隆茂
東海大学医学部付属八王子病院看護部副主任
集中ケア認定看護師
脳の動脈の走行
脳はたくさんの血液を必要としており、心拍出量の約15%を大動脈から脳に運ぶ重要な血管が頸動脈と椎骨動脈です(図1、図2)。
図2脳の動脈
脳の中には前方循環を担当する内頸動脈、そこから枝分かれした中・前大脳動脈、後方循環を担当する椎骨動脈から続く脳底動脈、その枝である後大脳動脈などがあり、独特な大脳動脈輪を形成しています(ウィリス動脈輪;図3)。それぞれは、さらに細い分枝に分かれて脳に分布します。
★1 脳動脈瘤の好発部位
全身の血液循環は図4のとおりです。
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脳の静脈の走行
脳静脈(図5)は、動脈に比べ破綻や閉塞が少ないという特徴があります。
体位によって流速が変化し、頭蓋内圧や髄液循環に影響されやすいです。
脳表面や脳室内深部で血液を還流させ、四肢の静脈のような弁はなく、頭蓋骨を通して血液が行き来しています。
硬膜組織に囲まれて走行する静脈洞は、頭蓋骨内を走行する部分とそうでない部分があります。
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脳脊髄液の流れ
脳脊髄液(図6)の量は、成人で約150mLであり、1日の産生量は約500mLです。
側脳室、第三脳室、第四脳室には血管が豊富な脈絡叢という組織があり、脳脊髄液は主に脈絡叢で産生されます。
脳室内で産生された髄液は、側脳室からモンロー孔を通って、第三脳室、中脳水道、第四脳室へと流れます。続いて第四脳室の正中孔(マジャンディ孔)および外側孔(ルシュカ孔)からクモ膜下腔に流れ、上矢状静脈洞近傍のクモ膜顆粒から吸収され、静脈系に入ります。
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社