大脳のしくみとはたらき
『本当に大切なことが1冊でわかる脳神経』より転載。
今回は大脳の解剖生理について解説します。
剱持雄二
東海大学医学部付属八王子病院看護部主任 集中ケア認定看護師
大脳皮質 大脳の外側
大脳皮質(図1)は新皮質(前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉)、古皮質(海馬〈かいば〉、脳弓〈のうきゅう〉、歯状回〈しじょうかい〉)、旧皮質(嗅葉〈きゅうよう〉、梨状葉〈りじょうよう〉)に分類されます。
新皮質は帯状回よりも上の部分で、外側溝(シルビウス溝)の下部が側頭葉、上部が前頭葉です。中心溝(ローランド溝)の前部が前頭葉で、後部が頭頂葉になります。
大脳の担当するはたらきはさまざまですが、多くの機能は脳の特定の場所に限られています。
後頭葉の先端部には視覚中枢があります。
前頭葉には発語を担当するブローカ野が、側頭葉には言語の理解を担当するウェルニッケ野があります。
頭頂葉には、体性感覚を認識する体性感覚野と、体性感覚や視覚情報を統合する頭頂連合野があります。
memo:失語症
ブローカ野が障害されると、他人の言葉は理解できるが自分で話す言葉が出ない「運動性失語」が、ウェルニッケ野が障害されると、他人の言葉が理解できず、自分で話すときは誤った言葉が出る「感覚性失語症」が生じる。
★優位半球
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体性感覚野と運動野
体性感覚は体性感覚野に伝達されます。体性感覚は、後頭葉からの視覚、側頭葉からの聴覚の情報とともに、頭頂連合野で統合されます。統合された情報は前頭葉の前頭連合野に送られ、どうすべきか判断します。その判断をもとに、運動野で運動の命令が実行され、運動器へと伝わります。
体性感覚野と運動野では、脳の部位ごとに手、足、顔、舌など対応する部位が決まっています(図2)。ペンフィールドはこれを研究し、マップを作成しました(図3)。
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前頭葉
前頭葉(図4)には前頭連合野、運動連合野、運動野、ブローカ野、嗅覚野が存在しています。
前頭連合野は、他の中枢(各種連合野、言語中枢)から送られてくる情報を基に、どうするべきかを判断し、実行する総合中枢です。
前頭葉が障害されると、図5のような症状が起こります。
memo:見当識障害
日時や時刻、場所など自分が置かれている状況がわからなくなる状態。
memo:感情失禁
感情のコントロールがしにくくなり、ささいなことで泣いたり笑ったりしてしまう状態。
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頭頂葉
頭頂葉(図6)には体性感覚野、頭頂連合野が存在しています。
体性感覚野には、触圧覚や温痛覚・知覚が伝達されます。
頭頂連合野は、主として空間認識の中枢です。
頭頂葉が障害されると図7のような症状が起こります。
memo:ゲルストマン症候群
手指失認、左右失認、失算、失書の4徴候を示す。
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側頭葉
側頭葉(図8)には聴覚野、側頭連合野、ウェルニッケ野が存在しています。
側頭連合野は、音、形、色といった聴覚野や視覚連合野から送られてくる情報を処理して、前頭連合野へ送っています。
側頭葉が障害されると図9のような症状が起こります。
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後頭葉
後頭葉(図10)には視覚野、視覚連合野が存在しています。
後頭葉が障害されると図11のような症状が起こります。
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大脳の機能のまとめ
大脳の機能をまとめると図12のようになり、これらが障害されると、さまざまな症状が起こります(高次脳機能障害;表1)。
視覚失認
対象そのものが何であるかわからない。
相貌失認
よく知っている人の顔がわからない。
聴覚失認
話、環境音が聞き取れない。
観念失行
系列行為の障害(歯ブラシに歯磨き粉をつけて歯磨きをする、などの行為ができない)。
構成失行
空間的形態を構成できない。
着衣失行
着衣の障害、左右、前後を間違える、うまく着られない。
肢筋運動失行
手、足に触れるものを離そうとしない。
頬-顔面失行
舌、唇の運動、嚥下動作、顔の表情を指示通りできない。
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大脳辺縁系
大脳辺縁系〈だいのうへんえんけい〉は、海馬、扁桃体、帯状回などいくつかの脳組織の複合体です(図13)。
人間の脳で情動の表出、食欲、性欲、睡眠欲、意欲などの本能、喜怒哀楽、情緒、神秘的な感覚、睡眠や夢などを司っています。
記憶や自律神経活動にも関与しています。
★1 アルツハイマー型認知症
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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 脳神経』 編集/東海大学医学部付属八王子病院看護部/2020年4月刊行/ 照林社