手動調節式と自動調節式で、加温加湿器管理の方法は異なる?|人工呼吸ケア
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「手動調節式と自動調節式加温加湿器」に関するQ&Aです。
露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)
手動調節式と自動調節式で、加温加湿器管理の方法は異なる?
自動調節式は、電源さえ入れば、自動で調整されます。
手動式は、口元温度とチャンバー温度の設定が必要です。チャンバー温=患者の体温となるようにして、「そこからマイナス何度」と設定します。
〈目次〉
加温加湿器の種類
加温加湿器は、フィッシャー&パイケル社の製品がほとんどである。温度設定を手動で行うタイプ(MR730)と、自動調節式(MR850)があるが、現在の主流は自動調節式である。
なお、デジタル表示されている値が、MR730とMR850で異なるため、注意する。
手動調節式の特徴
口元温度とチャンバー温度を、手動で設定する機器である。
「口元温度設定ダイヤル」で口元温度を40℃程度に、「チャンバー出口の温度設定ダイヤル」で、口元温度との差を「−2」程度(体温37℃程度になるように)に設定する。
チャンバー出口の温度が、口元温度と同程度~高くなるように設定してしまうと、回路内に結露が生じるため注意する。
デジタル表示されている温度は口元温度である。チャンバー内温度を確認したいときは「チャンバー温度表示ボタン」を押すと、表示が切り替わる。
自動調節式の特徴
温度は自動調節される(初期設定では、チャンバー出口温度が、口元温度より3℃低くなっている)。
- 気管チューブモード時:チャンバー温度37℃(−1.5~+3℃)で口元温度37℃(-2~+3℃)
- マスクモード時:チャンバー温度31℃(0~5℃)口元温度34℃(-6~0℃)に自動調整される。
右上の切り替えボタンが、正しく表示されているか(挿管されていれば挿管の絵、NPPVなどマスクで使用するときはマスクの絵が点灯していること)を確認する。表示を切り替える際は、切り替えボタンを1秒押す。
デジタル表示されている温度はチャンバー内温度である。口元温度を表示したいときは、左上の「消音ボタン」を長押しする。
給水システム
多くは自動給水システムを使用しており、滅菌蒸留水を接続する。誤って消毒や点滴製材などを接続しないようにする。誤接続によるインシデントが報告されている。
蒸留水を接続したら、空気取り込み口を必ず開ける。セミハードボトルであることが多く、空気取り込み口を開けないと、給水が止まってしまうことがある。
チャンバーには引いてあるラインは、「水をここまで入れる」ラインではなく、「これ以上水を入れてはいけない」ことを示すラインである。
水は、なくてはいけないが、多いと加温に時間がかかり、温度の安定性も悪くなるため、少なければ少ないほうがいい。特に、手動で給水する際は注意する。
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社