加温加湿器回路にウォータートラップがなくなったのはなぜ?結露させない管理のポイントは?|人工呼吸ケア
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「加温加湿器回路の管理」に関するQ&Aです。
露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)
加温加湿器回路にウォータートラップがなくなったのはなぜ?結露させない管理のポイントは?
機器が高性能になり、チャンバーや口元温度を正確に設定できるようになったことから、回路にたまるほどの結露ができにくくなったためです。チャンバーの温度より口元温度を高く設定すると、水蒸気が飽和されないので結露がなくなります。
〈目次〉
加温加湿器回路のしくみ
1「熱線あり」だとウォータートラップ不要
加温加湿器回路は、人工呼吸器から送られるガスを、吸気回路側に接続された加温加湿器によって温め、患者の肺に送り込むしくみである。
加温加湿器を通った吸気は、冷めると結露となり、水分としてたまる。そこで、回路を温める熱線(ヒーターワイヤー)が必要になる。
温められた吸気は、今度は呼気となって排出されるが、呼気回路を通るときに水滴となって回路に水がたまるため、最近のディスポーザブル回路では、呼気回路にも熱線が入っているものが多い。
ただし、熱線がない回路は、呼気側にウォータートラップが必要となる。
2結露ができない設定原理(図1)
加温加湿回路は、以下に示すように、「人工呼吸器から送気される乾いた冷たいガスは、体温程度にチャンバーで温められた後、さらに熱線で温めることで相対湿度を下げて回路に結露ができないようにしておき、肺に入ったとき体温に戻って100%の加湿を得る」しくみとなっている。
- ①加温加湿器を37℃に設定すると、チャンバー内で温められたガスは、温度37℃、相対湿度100%、絶対湿度約44mg/Lとなる。
- ②口元を40℃に設定すると、絶対湿度は44mg/Lのままだが、相対湿度は85%となる。したがって、水蒸気は飽和されず、結露ができない。
- ③上記②によって40℃・相対湿度85%となったガスが肺内に入るとき、体温に戻される。その際、絶対湿度44mg/Lは不変であるため、相対湿度は100%に戻る。
結露させない設定のポイント
1チャンバーの設定温度
肺や気管は、そのときの体温で相対湿度100%である。
チャンバー内の設定温度が体温より低いと、肺に入ったときに絶対湿度が不足する。足りない湿度は、気道の水分を奪うことで補われるため、乾燥が生じてしまう。そのため、チャンバーの温度よりも口元温度を高く設定する必要がある(外気温やヒーター出力の影響をなくすため約2~3℃高くする)。
2熱線の位置
熱線は、内側に通すタイプ(リユース回路)より、外側から温めるタイプ(ディスポーザブル回路)のほうが有効である。
3その他の工夫
室温を下げすぎない(熱線で温めていても室温が低すぎれば温度は下がる)。
フレックスチューブは可能なら外す(温度センサーより口元側には熱線がなく、室温で冷やされてしまう)。
結露をなくす工夫
- チャンバー内温度を体温程度にする
- 口元温度をチャンバーより2~3℃高くする
- 室温を下げすぎない
- 可能であればフレックスチューブは外す
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社