ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法(化学療法のポイント)/膵がん

この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、膵がん(膵癌)の患者さんに使用する抗がん剤「ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。

 

第2話:『ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法(看護・ケアのポイント)/膵がん

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法

 

堀口 繁
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法のポイントA・B・C

  • ポイントA:切除ができない膵がんの患者さんに対して投与を強く勧められている治療の一つです。
  • ポイントB:FOLFIRINOX療法に比べて消化器毒性は軽く、嘔気や食欲低下は少ない点で管理が比較的容易な治療法です。
  • ポイントC:治療を重ねていくと、脱毛と末梢神経障害が高い頻度で出現するため、精神的ケアや早期発見の点で看護師の果たす役割は重要です。

 

〈目次〉

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法は膵がんの患者さんに行う抗がん剤治療

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法は、「FOLFIRINOX(フォルフィリノックス)療法」とともに切除不能膵がんに対して投与を強く勧められる治療法です。消化器毒性が弱いため食欲は保たれやすいものの、脱毛や末梢神経障害が高い頻度で出現します。特に、末梢神経障害により治療を中断せざるを得ないこともあります。

 

週に1回、3週続けて1週休薬し、1クール28日で投与する治療法です。

 

memoナブパクリタキセルは前処置が不要になった薬剤

ナブパクリタキセル(アブラキサン)は、パクリタキセルにアルブミンを結合させた薬剤です。パクリタキセルは細胞分裂の際、微小管の重合を促進することでがん細胞が増えるのを阻害します。

 

もともとパクリタキセルは水に溶けにくく、点滴する際には特殊な溶媒に溶かさなくてはなりません。そのため、その溶媒によるアレルギーを防ぐために、さまざまな前処置が必要でした。しかし、ナブパクリタキセル(アブラキサン)は生理食塩水に溶けるので、特殊な溶媒やアレルギー予防の前処置は不要になりました。

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法のポイントA

  • 切除ができない膵がんの患者さんに対して投与を強く勧められている治療の一つです。

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法のポイントB

  • FOLFIRINOX療法に比べて消化器毒性は軽く、嘔気や食欲低下は少ない点で管理が比較的容易な治療法です。

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法で使用する薬剤

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。

 

 

表1ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法で使用する薬剤

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法で使用する薬剤

 

(写真提供:日本イーライリリー株式会社、大鵬薬品工業株式会社)

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法のレジメン

ゲムシタビン(ジェムザール)、ナブパクリタキセル(アブラキサン)ともに、1、8、15日目(Day 1、8、15)に投与します。2~7、9~14、16~28日目は休薬します。(表2)。

 

 

表2ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法のレジメン

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法のレジメン

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法で使用する薬剤の投与方法(表3

 

表3ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法の投与方法

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法の投与方法

 

ナブパクリタキセル 100mgあたり生食 20mLで溶解し、必要量を空の点滴バックに注入し投与します。
生食:生理食塩水

 

*本投与方法は、岡山大学病院で行われているものです(2017年5月現在)。

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法の代表的な副作用

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法の代表的な副作用は、アレルギー、便秘、骨髄抑制(特に、好中球減少)、末梢神経障害、脱毛です。まれに、間質性肺炎などがあります。

 

急に起こる副作用は、アレルギー、便秘などがあります。

 

遅れて起こる副作用は、骨髄抑制、末梢神経障害、脱毛、間質性肺炎(まれ)などです。

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法のポイントC

  • 治療を重ねていくと、脱毛と末梢神経障害が高い頻度で出現するため、精神的ケアや早期発見の点で看護師の果たす役割は重要です。

 

ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法の治療成績

切除ができない進行膵がんを対象にした海外の報告では、1年生存率が35%であり、また病変が縮小した方は24%、現状維持した方は27%と、およそ半分の患者さんに有効と報告されました1)

 

わが国の報告では、病変が縮小した方は59%、現状維持した方は35%と、90%以上の患者さんに有効と報告されました2)

 

[関連記事]
  • 第2話:『ゲムシタビン+nabパクリタキセル療法(看護・ケアのポイント)/膵がん』
  • ⇒『抗がん剤 A・B・C』の【総目次】を見る

 


 


[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授

 

[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科

 

[執 筆]
堀口 繁
岡山大学大学院医薬学総合研究科消化器・肝臓内科学

 


*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。

 

*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。

 

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