報告するために必要な「判断」をどう身に付ける?|新人ナースのホウレンソウ[5]

これまでは、何をどのように報告するかについて解説してきました。今回は、そのまとめとして、報告する時に必要な「判断」について考えてみたいと思います。

 

川原千香子
愛知医科大学医学部シミュレーションセンター講師
急性・重症患者看護専門看護師/救急看護認定看護師

 

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〈目次〉

 

「何が予測されるか」を考える習慣をつけよう

個人が計画・実践し、その成果責任を負う場合には、報告義務は発生しません。しかし、「看護」という仕事そのものが、個人で完結することの少ないものであることは、皆さんご存知のとおりです。
ナースは患者さんの療養生活の中で発生する、さまざまな課題(病状のみならず患者さんの希望や生活など)に対し、チームで対応しているからです。

 

言うまでもなく、チームで対応するために重要になるのがチーム内での「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」です。そして、その「報告・連絡・相談」を行うためには「集めた情報を解釈し、判断する」という過程が必要になります。

 

しかし、新人ナースの皆さんにとっては、実際の臨床現場で初めて体験することも多く、戸惑うことも多いでしょう。そして、中でも最も困難だと感じるのが「判断」ではないでしょうか。

 

ホウレンソウってなぜ必要?」、「新人ナースは事実のみの報告でよい?」で述べたように、新人ナースが単独で判断できることは限られているとは思いますが、観察した結果の事実のみを報告するだけでは、その結果に対する判断は、報告を受けた人に任されることになります。そうすると、いつまでたっても判断する能力は身に付きません。

 

 

事実だけの報告では、報告された側がその報告を基にした結果を判断することになってしまい、報告する側はいつまでたっても判断する能力が身に付きません

 

新人ナースの皆さんにはぜひ、報告する際に、自分の観察結果から「何が予測されるか」を考える習慣をつけていただきたいです 。

 

患者さんの状態を報告する時に必要な「判断」

患者さんの状態について報告する時に最も重要なのは、
・(患者さんが)安定している状態(前と比べて変化がない)か
・不安定な状態(前と比べて変化している、または、急な変化がある)か
を判断することです。

 

これは、経過記録を読み取ることで訓練できます。その勤務に必要な情報を収集するための目的に加えて、先輩ナースたちの「記録のわざ」を学ぶこともできるでしょう。
いかに客観的情報を正確かつ簡潔に記述するか、また、チェック項目だけでは表せない詳細項目をどのように記載されているか、どのような患者さんの変化が継続的に記載されているかなど、ぜひたくさんの記録に目を通すようにしてください。

 

申し送りでよく「変わりありません」という報告を聞きますが、その「変化なし」について、「何」が変化ないのかを言えるようになるとよいでしょう。

 

次に重要な「判断」は、患者さんが今後変化する可能性、危険性があるかどうかです。
好転することが予測される場合は好転していることの確認、悪化することが予測される場合は、その要因と悪化した際の対応について考えられるようになりましょう。

 

これには病態の理解も求められますが、まずはABCDと呼ばれる「気道(Airway)、呼吸(Breathing)、循環(Circulation)、意識状態(Disability)」といった、生命危機に陥る要因の有無がどんな状態であるか、また異常が見られる場合にはどのような対応が必要かを学習しましょう。

 

判断のために必要な身体診察所見

上記のABCDのように、「系統的に身体所見をとる」ということは、看護基礎教育ではあまりやってこなかったかもしれません。
目の前で起きている事実(患者さんの状態)に目を向けアセスメントすることも大切ですが、同様に症状から全体を系統的に観察し、起きている事実の原因を探る考え方を身に付けることも大切です。
そのためには、系統的な身体所見をとる習慣をつけていただければと思います。その結果、より具体的かつ迅速な観察判断が実施できると思います。

 

報告を受ける先輩ナースへのお願い

報告を受ける先輩ナース方には、受けた報告から自分が何を考えてどう予測したかを新人ナースに説明する、後日、医師に報告した結果と照らし合わせるなど、「事実からどのような展開になっていったか」を新人ナースと一緒に振り返る時間を作っていただければと思います。

 

つまり、ことの成り行きを確認し、その時の判断を新人ナースが振り返るきっかけを作りましょう。
ヴァージニア・ヘンダーソンの看護介入の必要な状態を導き出す過程の中に、「ことの成り行き」が含まれています。通常は、看護計画を実施した後の評価を意味するもので、客観的情報=観察結果と介入の結果、どうなったかというやや中長期的な意味もありますが、日々の実践でも、この思考過程を繰り返すことを意識して、報告を受けた後のフィードバックをお願いしたいと思います。

 

そうすることで、新人ナースは先輩ナースがどのような情報で判断しているのかを知ることができ、また、「判断」するためにはどのような情報を集めなければならないかを理解することができるからです。

 

★☆★☆★

 

先輩ナースや医師は、皆さんからの報告で、その患者さんが今どのような状態にあり、今後どのような変化が起こるか予測し、どのような対応を必要としているかを考えています。だからこそ、患者さんの状態を思い浮かべられるような、簡潔明瞭な報告ができるようになりましょう。
そのためには、これまで繰り返し説明してきた「SBAR」や「ISBARC」を使いこなせるようにするとよいでしょう。

 

 

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Illustration:かげ Twitter

 


 

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