陰嚢(いんのう)にはなぜたくさんのシワがあるの?

『からだの正常・異常ガイドブック』より転載。
今回は陰嚢(いんのう)に関するQ&Aです。

 

山田幸宏
昭和伊南総合病院健診センター長

 

陰嚢(いんのう)にはなぜたくさんのシワがあるの?

陰嚢は内部で2つに分かれ、1対の精巣が入っています。身体の中央部で両足の間からぶら下がっており、表面にはたくさんのシワがあります。これらは、どちらも精巣のコンディションを良好に保つための仕組みです。

 

精巣はもともとは腹部の臓器です。胎児の頃はまだ精巣は体内にあり、腹腔内では女性の卵巣と同じくらいの高さに位置しています。あと1カ月で出生という頃になると、次第に精巣が体内から陰嚢内へと下降してきます。そして最終的に、体外につり下げられた状態になります。

 

これは精巣の温度を、精子を作るのに最も適した32℃前後に保つためです。陰嚢にたくさんのシワがあるのも、精子を作るのに最適な温度に精巣を保つためです。

 

暑い季節にはシワを延ばして表面積を大きくし、熱を外に逃がします。また、寒い季節には収縮して精巣を体に近づけ、内部を保温するというすばらしい仕組みが作られているのです。

 

なお、出生前に精巣が下降せずに腹腔内にとどまった状態のことを停留精巣(停留睾丸(ていりゅうこうがん))といいます。停留精巣では精巣の温度が高く保たれるため、精子の産生がスムーズに行えず、不妊の原因になります。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『看護のためのからだの正常・異常ガイドブック』 (監修)山田幸宏/2016年2月刊行/ サイオ出版

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