耳鳴に関するQ&A
【大好評】看護roo!オンラインセミナー
『看護のための症状Q&Aガイドブック』より転載。
今回は「耳鳴」に関するQ&Aです。
岡田 忍
千葉大学大学院看護学研究科教授
耳鳴の患者からの訴え
- ・「耳鳴りがします」
- ・「頭の中で音がします」
〈耳鳴に関連する症状〉
〈目次〉
- 1.耳鳴って何?
- 2.耳鳴はどうして起きるの?
- 3.耳鳴が起きるメカニズムは?
- 4.耳鳴りが見られる疾患は?
- 5.水中や飛行機の中で耳鳴がするのはどうして?
- 6.耳鳴はどうやってアセスメントするの?
- 7.耳鳴のケアは?
耳鳴って何?
実際に音がしていないにもかかわらず、耳の中や頭の中全体に音を感じる状態を、耳鳴(じめい)といいます。
耳鳴を経験したことがある人は多いと思いますが、それが気になったり、不快になったりする場合に、医療上の問題になります。
耳鳴はどうして起きるの?
まず、耳の構造と機能を復習しましょう(図1)。
耳は外耳、中耳、内耳に分かれます。内耳は、聴覚器である蝸牛(かぎゅう)と、平衡感覚にかかわる前庭器官・半規管から構成されます。
聴覚器によって感じ取られた音の情報は、蝸牛神経、内耳神経を経て大脳皮質に伝えられ、音として認識されます。これらのルートのどこかに異常があると、耳鳴が起こります(音を聞く仕組みは「聴覚障害:音が聞こえるメカニズムは?」参照)。
図1耳の構造
耳鳴が起きるメカニズムは?
耳鳴のほとんどは、自覚症状です。音色も音の大きさも、人によって違います。
音が知覚されるルートのいずれかが障害されると、耳鳴が起きることはわかっていますが、どのような仕組みで耳鳴が起きるのかは、今のところよくわかっていません。
聴覚器の疾患だけでなく、大きな音を聴きすぎたり、ストレスや睡眠不足で耳鳴が起こることもあります。薬剤の副作用として発生することもあり、ストレプトマイシンによる聴覚障害はよく知られています。
耳鳴がみられる疾患は?
耳鳴を起こす疾患は、大きく分けて、耳の疾患と全身疾患に分類されます。
また、耳の解剖学的な構造から、難聴やめまい(「めまい」参照)を起こす病気では、同時に耳鳴を起こすことが多いようです。耳の疾患としては、下記のような疾患があげられます。
耳鳴を伴う全身疾患には、高血圧、貧血、糖尿病、心疾患などがあり、また血管の拍動を耳鳴として感じることもあります。
水中や飛行機の中で耳鳴がするのはどうして?
水に潜ったり、飛行機に乗ったりすると、「キーン」と耳鳴がすることがあります。
これは、水圧や気圧の変化によって鼓膜に圧がかかり、押さえつけられるような状態になるために起こる、一過性の耳鳴です。耳管から空気を抜いて鼓膜にかかる圧を取り除けば、消失します。
耳鳴はどうやってアセスメントするの?
耳鳴は自覚症状ですから、まずは本人に耳鳴の性状を詳しく尋ねます。
それに当たっては、アセスメントシート(日本聴覚医学会耳鳴研究会が作成した「標準耳鳴検査法」など)を利用すると、必要な情報を効率よく聴取することができます。
検査としては鼓膜の動きを調べるティンパノメトリーや、気導聴力、骨伝導聴力を調べるオーディオグラムがあり、異常がどこにあるかを絞り込みます。
- 耳鳴の場所:右耳か左耳か、それとも両耳か。頭の中か。
- 音の種類:1種類、複数
- 音の種類:キー(ン)、ザー、ジー(ン)、ビー(ン)、ゴー(ン)
- 低い音(低音性)なのか、高い音(高音性)なのか。
- 耳鳴の頻度:時々、たまに鳴る、いつも鳴っている。
また、耳鳴は難聴(「感音性障害の原因は?」参照)、耳痛、めまい(「めまい」参照)、眼振や起立障害などを伴うことがあるので、これらの症状の有無も尋ねます。とくに高音性の耳鳴は難聴の徴候であり、注意が必要です。
耳鳴の治療・ケアは?
どんなタイプの耳鳴でも放置せず、耳鼻科の専門医の診療を受けることが重要です。原因になる疾患が明らかなときは、その治療を行います。
耳鳴の治療としては、カウンセリング、あえて音のある環境をつくって耳鳴を感じにくくする音響療法、内耳の水分を減少させる利尿剤の投与やめまいに対する薬剤の処方、鼓膜に音圧をかけて中耳、内耳のリンパの循環を促す中耳加圧療法などが行われます。
耳鳴は、本人にとっては不快なものです。「治らない」と諦めがちですが、逆に耳鳴との上手な付き合い方をアドバイスすることも大切です。散歩や音楽鑑賞など、その人に合った気分転換を勧めましょう。
また、耳鳴の背景に精神的緊張やストレスが存在することがあるので、そのような要因がないか確認します。
患者と接するときは、耳鳴があることを理解し、ゆったりした雰囲気でコミュニケーションを取るように心がけましょう。
COLUMN 耳鳴のマスカー治療
マスカー治療とは、補聴器のような形をした「マスカー」とよばれる器具を耳鳴がする側の耳に取り付け、耳鳴が丁度聞こえなくなるくらいの大きさで、耳鳴に似た周波数の音を30分程流すことにより、耳鳴を遮ってしまうという治療法です。多くの患者で、マスカーを外した後も、一時的に耳鳴がなくなります。
※編集部注※
当記事は、2017年1月29日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『看護のための 症状Q&Aガイドブック 第2版』 (監修)岡田忍/2024年7月刊行/ サイオ出版