人工呼吸器の基本設定と機種による違いは?
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『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「人工呼吸器の基本設定と機種による違い」に関するQ&Aです。
開 正宏
名古屋第一赤十字病院臨床工学技術課第二課長
人工呼吸器の基本設定と機種による違いは?
人工呼吸器には多くの種類がありますが、基本的な方式は同じです。ただし、メーカーや機種によって設定のルールやモードの呼称などが異なる場合があります。
〈目次〉
- 換気様式の違い
- -VC(量制御)
- -PC(圧制御)
- 機種による違い
- -自発呼吸がない条件でのVCV設定の違い
- -自発呼吸がない条件でのPCV設定の違い
- -換気量を維持し、圧規定を行う特性のモードの違い(換気量保証重圧式モード)
換気様式の違い
1VC(量制御)
2PC(圧制御)
- PCは、換気する圧力を規定する様式で、VTは吸気の時間と圧力により決定される。
- 圧力波形は一般的に矩形波を示して一定を保ち、流量波形(図1-B)および換気量波形(図1-C)は患者状態などで変化(増減)するのが特徴である。
機種による違い
1自発呼吸がない条件でのVCV設定の違い
VTとMVの関係は、機種ごとによって異なる。
- ①VT・吸気流速・呼吸回数を設定すると、吸気時間・MV・I:E*13が決定される機種(e360[ニューポートメディカル社]など)
- ②VT・I:E・呼吸回数を設定すると、吸気流速・吸気時間・MVが決定される機種(G5[ハミルトンメディカル社]CMV選択時など)
- ③VT・吸気時間・呼吸回数・吸気流速を設定すると、MV・吸気終末休止時間・I:Eが決定される機種(エビタⓇ[ドレーゲル・メディカルジャパン株式会社]など)
- ④吸気時間・吸気流速・呼吸回数を設定すると、VT・MV・I:Eが決定される機種(E200[ニューポートメディカル社]など)
かつてはCMVの基本設定として、MVと呼吸回数を設定してVTが定められ、SIMVの呼吸回数を設定する機種もあった。
2自発呼吸がない条件でのPCV設定の違い
吸気圧力によって得られるVTとMVの関係は、機種により設定項目が異なる。
- ①吸気圧力・吸気時間・吸気立ち上がり(オート)・呼吸回数を設定すると、MVとI:Eが決定される機種(e360[ニューポートメディカル社]など)
- ②吸気圧力・I:E・吸気立ち上がり・呼吸回数を設定すると、MVと吸気時間が決定される機種(G5[ハミルトンメディカル社]CMV選択時など)
- ③吸気圧力と吸気時間と吸気流速と呼吸回数を設定して、MVとI:Eが決定される機種(E200[ニューポートメディカル社]など)
3換気量を維持し、圧規定を行う特性のモードの違い(換気量保証重圧式モード)
メーカーにより、呼称やアルゴリズムがやや異なるが、VTを保証しながら気道内圧上限圧力の許容値を設定し、できるだけ低い吸気圧力になる流量パターンを人工呼吸器が自動で選択するモードを以下に示す。
- ①PRVC(圧補正従量式換気):マッケ社
- ②AutoFlowⓇ:ドレーゲルメディカルジャパン株式会社
- ③VC+:コヴィディエンジャパン株式会社
- ④VTPC:ニューポートメディカル社
- ⑤APV:ハミルトンメディカル社
各社で気道内圧上限圧力の設定方法や、設定した値に対する動作処理の方法が異なるため、使用者は十分に理解する必要がある。
COLUMN矩形波(くけいは)と漸減波(ぜんげんは)って?
VCにおける流量パターンには、矩形波、漸減波、漸増波、サインカーブ波などがあるが、多くの人工呼吸器では以下の2つから選択できる。
流量パターンの違いにより、最高気道内圧や平均気道内圧、吸気時間、I:Eが変化する。
略語
- VT(tidal volume):一回換気量
- VCV(volume control ventilation):量調節換気
- MV(Minute Volume):分時換気量
- I:E(inspired: expired):吸気相-呼気相時間比
- CMV(continuous mandatory ventilation):持続強制換気
- PCV(pressure control ventilation):圧調節換気
- PRVC(Pressure Regulated Volume Control):圧補正従量式換気
- VC+(Volume Control Plus)
- VTPC(Volume Target Pressure Control)
- APV(Adaptive Pressure Ventilation)
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本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社