ホウレンソウってなぜ必要?|新人ナースのホウレンソウ[1]

「ホウレンソウがなってない!」と先輩ナースから注意を受けた経験がある新人さん、いらっしゃいますよね。当連載では新人ナースが経験するあらゆる場面を挙げ、その際の先輩ナースへの報告・連絡・相談をどのようにすればよいかについて解説します。

 

川原千香子
愛知医科大学医学部シミュレーションセンター講師
急性・重症患者看護専門看護師/救急看護認定看護師

 

〈目次〉

 

はじめに

4月に期待と不安を胸いっぱいに「看護師」として歩み始めた皆さんは、そろそろ「看護師さん」と呼ばれることに慣れてきたころでしょうか?
 

 

さて、今回から数回にわたってお届けする、「あなたの報告はOK? NG? 新人ナースのホウレンソウ」ですが、ナースとしてなぜ報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が大切なのか、どのようなホウレンソウが必要なのかを中心に、例を挙げて説明していこうと思います。
新人ナースはもちろん、ぜひ先輩ナースの皆さんも目を通していただき、「ホウレンソウを受ける人の役割」を振り返っていただくきっかけになれば幸いです。

 

 

ホウレンソウが必要な理由は「チームで活動している」ため

それでは早速、「ホウレンソウ」について、それがなぜ必要なのかをひも解いてみましょう。
「ホウレンソウ」は、1982年に証券会社会長の山崎富治氏が社内で始めたキャンペーンが始まりだったそうです(1)

 

なぜ、「ホウレンソウ」が必要なのか? その最も重要な理由は「チームで活動しているため」です。
一人ですべてが完結する場合は報告する必要がありません。しかし、自身もチームの一員として活動する場合には、チーム間での情報共有や、自身の担当している業務の進捗状況を相手に伝えることが求められるのです。

 

 

ホウレンソウが上手くできないと、チーム内での不要な業務も増えることにもつながります。

 

「ホウレンソウ」について、それぞれの用語を見てみましょう。

 

(1)報告

報告とは、与えられた任務について、その結果を述べること(述べた内容)です。
(例)AにBを報告する。報告事項、中間報告を取りまとめる
英単語だと、Report、Informationとなり、「伝える」「知らせる」のニュアンスが強い印象です。

 

(2)連絡

連絡とは、関係がある人々に情報などを知らせることです。
(例)AにBだと連絡する 
英単語だと、Contact、Communicationとなり、「接触する」「会話する」という意味が強くなります。

 

(3)相談

相談とは、自分だけではよく分からない(決めかねる)ことについて、ほかに意見を求める(話し合う)ことです。
英単語では、Consultation、discussionとなり、「協議する」「話し合う」の意味が強い印象です。

 

上記の中で重視したいのは、報告は「与えられた任務についてその結果を述べること」というところです。
連絡は、さまざまな内容を多くの人と共有するために行い、相談は何か相談すべき事象があって、話し合う意味がありますが、報告は、与えられた指示や業務について結果、または進捗状況を伝えるために重要な行為だということを覚えておきましょう。

 

 

「報告」にはお互いのコミュニケーションが必要

筆者が臨床現場の管理職をしていたとき、ときどき先輩ナースから、後輩ナースの報告についての評価を聞きました。
中には、自分のところに後輩ナースがやって来ないことを「報告に来ない」と言っている場合もあり、「欲しい報告は自分から聞きにいけばいいでしょう」と指導したこともあります。
つまり、報告は、お互いのコミュニケーションが必要なのです。

 

どういったことを何のために報告するのか、その報告の緊急性はどのくらいあるのかについて、新人ナースの皆さんは悩むところだと思いますが、一番悩むのは、「報告するタイミング」でしょうか。
先輩が忙しく動き回っている時に、意を決して報告に行ったものの、「今無理だから後にして」と言われたり、「ちょっと待ってて」と言われて待っていたら、いつの間にか「何で報告に来なかったの」に変わっていた…なんて経験はありませんか?
 

 

なかなか声がかけづらい忙しい先輩ナースだからこそ、いかに分かりやすくどう伝えるかが重要になります。

 

そのような状況では、いかに分かりやすく、どう伝えるかが求められます。
報告を行う方法として、最も日常的に使われているのは、5W1H(いつ〈When〉、どこで〈Where〉、誰が〈Who〉、何を〈What〉、なぜ〈Why〉、どのように〈How〉)に代表されるツールです。そういったツールを使った報告の方法や、報告を受ける人がどうやってよい報告を引き出すのかなどは、事例を用いて次回から説明していきます。

 

 

社会人基礎力から見た報告

ここで、「報告」を「社会人基礎力」に照らし合わせて考えてみましょう。
社会人基礎力とは、経済産業省が2006年から提唱している「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」で、12の能力要素から成る3つの能力のことで、近年、注目が集まっています。

 

表1社会人基礎力

 

前に踏み出す力(アクション) 一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力
(1)主体性 物事に進んで取り組む力
(2)働きかけ力 他人に働きかけ巻き込む力
(3)実行力 目的を設定し確実に行動する力
考え抜く力(シンキング) 疑問を持ち考え抜く力
(4)課題発見力 現状を分析し目的や課題を明らかにする力
(5)計画力 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
(6)創造力 新しい価値を生み出す力
チームで働く力(チームワーク) 多様な人々とともに、目標に向けて協力する力
(7)発信力 自分の意見をわかりやすく伝える力
(8)傾聴力 相手の意見を丁寧に聴く力
(9)柔軟性 意見の違いや立場の違いを理解する力
(10)状況把握力 自分と周囲の人々や物事の関係性を理解する力
(11)規律性 社会のルールや人との約束を守る力
(12)ストレスコントロール力 ストレスの発生源に対応する力

経済産業省ホームページより

 

「報告」を、社会人基礎力の12の能力要素に照らし合わせると、以下のようになります。

 

(1)主体性

当然のことながら報告は報告者が主体性を持って、行うことが求められます。

 

(2)働きかけ力

報告する相手に、報告を聞いてもらえるような働きかけをしましょう。
別に難しいことではありません。「報告があります」と宣言するだけでもいいのです。

 

(3)実行力

急ぐ報告はなおのこと、「なぜ報告するのか」をきっちりと把握し、適切に報告しましょう。

 

(4)課題発見力

なんとなくまんべんなく報告するのでは、時間がかかります。何を報告すべきかを考え、報告する内容を判断することが必要です。

 

(5)計画力

報告のためには必要な情報を集めたり、実践した結果をまとめたりしなくてはなりません。

 

(6)創造力

チームで働くために、どうすれば簡潔明瞭な報告ができるかの工夫を行いましょう。

 

(7)発信力

効果的に相手に伝えるにはどうすればいいか、その方法を選ぶことです。

 

(8)傾聴力

相手からの指示や患者さんからの訴えなど適切に聞き取りましょう。

 

(9)柔軟性

その人、その場の中で、報告のタイミングや方法は変わる可能性が高いのが、医療現場です。「この前こうだったのになぜ?」と悩んだときは、「この前」とは違ったことはなかったかを考えてみましょう。

 

(10)状況把握力

報告する必要性やタイミングもここに含まれます。ただし、自己判断での解決がすべてではないので、注意しましょう。

 

(11)規律性

感情と客観的事実を分けるのが、報告で必要なルールです。

 

(12)ストレスコントロール力

報告がなかなかうまくいかないことも多いでしょう。困難に立ち向かうときのストレスコントロールは大切です。

 

今回は、ホウレンソウについて、社会人基礎力についても交えながら考えてみました。
ぜひ患者さんを取り巻くチームの一員として、患者さんのケアのために必要なホウレンソウを的確に行えるように、一緒に学んでいきましょう。

 

 

 

 


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Illustration:かげ Twitter

 


 

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