痛みの仕組み|いまさら聞けない!ナースの常識【5】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知ってるつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。 


 

Vol.5 痛みの仕組み

痛みを感じる仕組み

まずは、痛みを感じる仕組みを思い出してみる。痛みの原因物質と言われるものはプロスタグランジンが有名だが、他にもヒスタミンだのセロトニンだのアセチルコリンだの様々な物質が関係している。

 

人は、体の一部が何らかの損傷を受けた時に、これらの物質が複雑に関係しあい、神経を通じてへ痛み刺激を伝達させる。鎮痛薬はその成分によって作用機序が異なるが、広く知られているNSAIDs(アスピリン)は、このプロスタグランジンの生成を抑制する働きを持っている。

 

 

痛みにも種類がある

実は、痛みには時間的に分類すると2つの種類がある。受傷時に感じる急性疼痛と、長い時間経過したあとでも残る慢性疼痛だ。

急性疼痛は、受傷したことや、何らかの病変があることを知らせるサインであるため、必要な痛みと定義される。ところが慢性疼痛の場合は、急性疼痛が長引いて痛み続けるという、むしろ不要な痛みだ。これが患者さんのQOLを低下させる。

 

 

慢性疼痛の仕組みと国の取り組み

慢性疼痛には痛みの悪循環があるといわれている。

 

 看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | いまさら聞けない!ナースの常識【5】痛みの仕組み

図1 痛みの悪循環 参考:Pain Relief  Livingstonの痛みの悪循環説 vicious circle

 

痛みの悪循環の中では、痛みによるストレスが溜まると

交感神経系の亢進 → 抹消の血管収縮・筋肉の収縮 → 虚血・痛み物質の蓄積 → 感覚神経の興奮の持続

という反応が起こり、さらに痛みが増すと考えられている。つまり、何らかの治療の結果(あるいは自然に)痛みが改善しない限り、痛みが痛みを呼んでさらに痛みを増すのだ。

 

最近の「国民生活基礎調査」では、多くの人が慢性の痛みを抱えており、QOL低下の一因となっているという結果が出ている。一方で、痛みには客観的な指標が確立されていないことも問題視されている。これをうけて厚生労働省は、痛みを慢性化させない医療体制の構築、痛みに対する病態解明の調査・研究、医療者への教育などの対策を進めると好評している。

 

ところで痛みにはもう一つ、疼痛閾値耐痛閾値という言葉がある。

疼痛閾値は痛いと感じる閾値のことで、誰でもほぼ一定。一方の耐痛閾値は、その人が耐えられる痛みの閾値。これには個人差があり、辛いと感じるかは本人次第だ。辛さを他人には理解してもらえない月経痛が良い例かと思う。患者さんでいえば、例えばペインクリニックの患者さんとか、術後かなりの時間が経過してもまだ痛みが続く患者さんとか、「本当に痛いの?」と一瞬疑ってしまうような場合だ。

この言葉を知ってから、そんな患者さんに出会ったら優しくしようと思った。

 【岡部 美由紀】

 

 

<参考資料>

「慢性の痛みに関する検討会」からの提言 今後の慢性の痛み対策について(提言)

「滋賀医科大学」 Pain Relief

「疼痛ケアネットワーク・ワーキンググループ」 疼痛看護学概論 痛みの測定・評価の方法

SNSシェア

看護ケアトップへ