2018/07/23 のクイズ

30歳男性のAさんは、昨日から咳嗽と鼻汁があり、午前中に近医で風邪薬を処方されて帰宅しました。昼食後、処方薬を内服後に全身の発疹と呼吸困難が出現したため、救急搬送となりました。下図のデータから、Aさんはショック状態に陥っていると思われますが、以下のうち、どのショック分類に当てはまるでしょうか?
  1. 1. 循環血液量減少性ショック
  2. 2. 心原性ショック
  3. 3. 心外閉塞・拘束性ショック
  4. 4. 血液分布異常性ショック

挑戦者4482人 正解率31%

ショックとは、「生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群」と定義されています1)。ショックの症状として、蒼白(Pallor)、虚脱(Prostration)、冷汗(Perspiration)、脈拍触知不能(Pulseless)、呼吸不全(pulmonary insufficiency)などがあります(ショックの5徴候)。

1. 循環血液量減少性ショック
不正解

循環血液量減少性ショックとは、血液や血液成分が失われ、体内の循環血液量が減少することで生じるショックです。その原因は、外傷性出血や消化管出血など、血液の急激な減少による場合や、重度の下痢、脱水による体液喪失、広範囲の熱傷や細菌毒素による血漿成分の血管外漏出があります。また、末梢血管の収縮による皮膚の冷感や、交感神経の緊張による皮膚の湿潤がみられます。出血量が全血液量の30%程度を超えると不安や恐怖、興奮症状が出現します。
この患者さんの場合、明らかな出血や熱傷などがないため、循環血液量減少性ショックの可能性は低く、この選択肢は誤りとなります。

2. 心原性ショック
不正解

心原性ショックとは、心臓のポンプ機能の低下により、心拍出量が低下することで生じるショックです。心筋梗塞や不整脈が原因で起こります。頸静脈の怒張や皮膚の冷感・湿潤があります。また左心不全の肺うっ血や肺水腫の症状である呼吸困難、チアノーゼ、頻呼吸、起坐呼吸などの症状がみられます。
この患者さんの場合、呼吸困難などの症状がありますが、胸痛や心電図異常がないことや全身の発疹があることから、心原性ショックの可能性は低いと考えられ、この選択肢は誤りとなります。

3. 心外閉塞・拘束性ショック
不正解

心外閉塞・拘束性ショックとは、静脈還流の減少など、心臓以外の原因で心臓のポンプ機能が低下することにより、心拍出量が低下することで生じるショックです。心タンポナーデや肺塞栓症、緊張性気胸などが原因で起こります。心タンポナーデでは、古典的にはBeckの3徴候といわれる「血圧低下・静脈圧上昇(頸静脈の怒張)・心音微弱」などの症状が現れます。緊張性気胸では、呼吸音減弱、非対称性胸郭運動、SpO2の急激な低下、徐脈、頸静脈の怒張、皮下気腫などの症状が現れます。
この患者さんの場合、血圧低下、SpO2低下がみられていますが、その他の前述の所見がないことから、心外閉塞・拘束性ショックの可能性は低いと考えられ、この選択肢は誤りとなります。

4. 血液分布異常性ショック
正解

血液分布異常性ショックは、何らかの原因で血管が拡張することで相対的に循環血液量が減少するショックです。その原因によって、アナフィラキシーショック、神経原性ショック、敗血症性ショックなどがあります。この患者さんは、処方薬を内服後に発疹と呼吸困難が出現していることから、血液分布異常性ショックであるアナフィラキシーショックと考えられます。
アナフィラキシーショックは、すでに体内にできている抗体が新たに侵入したアレルゲン(抗原)に対し過剰な免疫反応を起こすことによって生じるショックです。原因としては、薬物や食物、ハチなどがあります。嗄声や喉頭浮腫、くしゃみ、喘息発作などや、結膜充血、紅潮、発疹などの皮膚症状が出現します。
神経原性ショックは、交感神経の低下により血管が拡張することで生じるショックです。疼痛刺激による迷走神経反射や、脊髄損傷などが原因となります。敗血症性ショックは、細菌の過剰な生体反応によって、動脈が拡張し末梢血管抵抗が低下することで生じます。初期は、末梢血管抵抗の減弱と心拍出量の増加により手足が温かくなるウォームショックがみられます。

引用参考文献など

1) 日本救急医学会監.救急診療指針 改訂第5版.へるす出版,2018,844p.
2)山勢博彰.第3章「急変症状」から見る チャートでわかる急変時のアセスメント.まるごと やり直しのフィジカルアセスメント-チャートとイラストで見てわかる!-.メディカ出版,2015,82-88.
3)山内豊明.Chapter1 ショック.山内先生のフィジカルアセスメント 症状編.エス・エム・エス,2014,9-14.

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