2018/04/30 のクイズ

脳梗塞の後遺症でADL全介助の70歳代Aさん男性が、気管挿管され人工呼吸器管理となりました。鎮静剤で鎮静されており、刺激しなければ表情は穏やかで眠っていますが、吸引や体位変換を行うと、咳嗽反射が見られ、その都度、呼吸回数が上昇し、SpO2が低下します。その状態から元の状態に戻って安定するのに5分程度かかります。そのAさんの呼吸音を確認しました。聴診では、前胸部では左右上下肺野とも吸気と呼気でcoarse crackle(粗い断続性副雑音)が聴取できました。背面から聴診したところ、左右上下肺野の呼吸音は、聞こえない状態でした。Aさんに対して有効な行為は、以下のうちどれでしょうか?
  1. 1. 医師、理学療法士など複数名で腹臥位にした。
  2. 2. 体位をヘッドアップ30度で維持した。
  3. 3. 吸引を1時間ごとに行った。
  4. 4. 鎮静剤の投与量を増やし、体位変換できるよう医師に相談した。

挑戦者4317人 正解率32%

1. 医師、理学療法士など複数名で腹臥位にした。
正解

Aさんの前胸部からの聴診では、呼吸音が聞こえていることから、前胸部側の気管支や肺胞は、ある程度、解放していることが考えられます。しかし、吸気と呼気で副雑音(coarse crackle)が聴取できることから、気管支内に水分や痰などの異物があり、そこを空気が通ることで副雑音になっていると考えられます。また、背面からの聴診で左右とも呼吸音が聴取できないことは、両側の下肺野で無気肺を生じていることが疑われます。これを荷重下側肺障害といいます。長時間にわたり仰臥位の同一体位でいると、重力の影響を受け肺の背中側に血液や分泌物が集中して気管支を閉塞してしまうため、呼吸音が消失してしまいます。この状態を改善するには、腹臥位や前傾側腹臥位が多用されます1)。ただし、状態が不安定な場合は、状態が悪化する可能性もあることや、挿管チューブの事故抜去や閉塞にもつながる危険があるため、少人数ではなく、医師、理学療法士、看護師、臨床工学技士などのチームで対応することが必要です。胸部を軽く叩いたり、スクイージングやバイブレーターによって振動を与えるなどで、排痰を促すと効果的です。

2. 体位をヘッドアップ30度で維持した。
不正解

体位はヘッドアップ30度で維持するのではなく、ヘッドアップ30~45度、側臥位40度以上、前傾腹臥位の体位変換を組み合わせて行うことが重要です。これらは、新たに生じる肺合併症の予防的観点から標準的な呼吸ケアの一環として重要視されています。ヘッドアップを30度に上げたつもりでも、マットレスなどの関係で30度に満たない場合もあります。角度計で測定するなどして、ヘッドアップが35度以上になるように心がけましょう。

3. 吸引を1時間ごとに行った。
不正解

吸引は、時間を決めて行うのではなく、気管吸引のガイドラインにある気管吸引の適応に沿って行いましょう。チューブ内に分泌物が見える場合や聴診を行い、気管から左右主気管支にかけて副雑音(rhonchi:ロンカイ)が聞かれる場合です。不要な吸引は、かえって患者さんの負担につながり、症状を悪化させてしまいます。

4. 鎮静剤の投与量を増やし、体位変換できるよう医師に相談した。
不正解

鎮静剤を増やすこと(過鎮静)は、自発呼吸や咳嗽反射をもなくしてしまう可能性があります。鎮静剤の追加投与は、スケールを用いて、評価し、医師と相談しながら慎重に行うことが必要です。過鎮静にしたからと言って、排痰につながるものではないので、注意してください。ただ、刺激しない場合も、咳嗽反射や呼吸回数の上昇が見られる場合は、鎮静剤の増量や変更、薬剤の追加等を考える必要があるので、鎮静スケール等で評価して、医師と慎重に進めていく必要があります。

引用参考文献など

1)氏家良人ほか.ICUにおける早期リハビリテーションの実際.ABCDEsバンドルとICUにおける早期リハビリテーション.克誠堂出版,2014,87-90.
2)日本呼吸療法医学会 気管吸引ガイドライン改訂ワーキンググループ.気管吸引ガイドライン2013 (成人で人工気道を有する患者のための).人工呼吸.30.2013,75-91.

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