状況設定問題（144問）　症状・疾患・治療に応じた地域・在宅看護

第112回午後115問

次の文を読み問題1に答えよ。
Aさん（50歳、男性、自営業）は妻（48歳）、長男（23歳、会社員）と3人で暮らしている。3年前から歩行時のふらつきを自覚していたが、日常生活動作〈ADL〉は自立していた。最近、転倒が多くなり医療機関を受診して頭部CT検査を受けたところ、小脳と脳幹に萎縮を認め、遺伝性の脊髄小脳変性症と診断された。Aさんは「母も同じ疾患で亡くなりました。妹が同じ敷地内に1人で暮らしていますが、妹も転ぶことが多くなり、医師の勧めで遺伝子診断を受ける予定です。明日、保健所に難病の医療費助成の申請に行くのですが、保健師に伝えた方がよいことはありますか」と看護師に質問した。

問題1
Aさんから保健師に伝える内容で優先度が高いのはどれか。

1.　長男の仕事内容
2.　Aさんの経済状況
3.　母親の病状の経過
4.　妹の遺伝子診断の予定

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解答・解説

1.　長男の仕事内容: 今は問題なく会社員として生活している長男の仕事の内容については、優先度は高くない。
2.　Aさんの経済状況: 難病は長期にわたり、次第に進行する病気である。治療にも介護にも大変な労力と費用がかかる。そのため保健所に難病の医療費助成の申請に行くことになるので、経済状態は保健師に伝える内容として優先度が高い。
3.　母親の病状の経過: 母親はすでに亡くなっており、同じ疾患であっても1人ひとりその経過は違う。母親の病状の経過は、難病の医療費助成を申請する段階では特に必要ない。
4.　妹の遺伝子診断の予定: 解説[3]と同様で、妹も難病と診断される可能性はあるが、今、Aさんの難病の医療費助成を申請する段階では特に必要ない情報である。

脊髄小脳変性症は指定難病である。進行性で、有効な治療法もまだ確立されていない疾患である。難病の患者には保健所の保健師が病状や障害に応じた医療や福祉サービス等について情報提供や意思決定への支援を行う。脊髄小脳変性症には遺伝性のものと孤発性（遺伝性でない）のものがある。また、遺伝性は常染色体顕性（優性）遺伝のものと潜性（劣性）遺伝のものがある。Aさんは遺伝性のものと診断されているため、子どもにも遺伝する可能性はある。症状としては小脳性運動失調症状が特徴的で、転倒を防ぐことが重要である。