マンガ・私だけ年を取っているみたいだ。ヤングケアラーの再生日記【2】

(前回のお話は▶こちら

統合失調症の母を支えるため、家族の世話を担うゆい。

ときに混乱して包丁を向けてくる母に、ゆいは…?

第2話 私はロボット。「ごはんできたよー」朝食を作り終えたゆいは、家族を起こします。それでも起きない母親に「起きてー!」と大きな声で呼びかけます。「だらしねーなー洗濯くらいしろよー」父親は呆れた顔で言いました。「お姉ちゃん、水泳のサインどうする?」弟に聞かれ、「ハンコ押せばいいよ。体温も36.2って書けばそれっぽくなるから!」と、学校生活を切り抜ける工夫は身についていました。

「じゃあお母さん気を付けて過ごしてね」と、学校に行こうとすると、母親が包丁を向けて「あんた…本当の子どもじゃないだろう。私のことバカにしてんだろう」と言いました。ゆいは驚いて「私はお母さんの子どもだよ…」と言いました。

ゆいは、(なんでうちのお母さんは変になるんだろう。私が悪い子だから?)と悲しくなりました。それから、母親がおかしくなるタイミングを観察してみることにしましたが…

母親は、なんの脈絡もなく始まって突然終わるのでした。ある日、ゆいが学校から帰ると、母親が盗聴器をしかけていました。「隣の奥さんが私の悪口を言ってるから盗聴器を仕掛けたの!」

学校では夏休みの思い出について絵を描く授業がありました。旅行もクリスマスなどの行事をやってもらったことがないゆいは、(行きたい場所描こ)と海の絵を描きました。周りは気づかず、「音田さんの絵きれいですね~」と褒めました。

学校から帰っていると、ゴミ捨て場にゆいのお気に入りの本が捨てられていることに気づきました。家に帰ると、母親が「全部捨てなきゃ!!これがあると不幸になる」と家のあらゆるものをゴミ袋に入れていました。

そんな母親を横目に、本を持って帰ってきたゆいは、自分の部屋に行き、くまの人形の腕をブチッとちぎりました。

ブチッブチッと人形をバラバラにし、ストレス発散を終えたあとは…

裁縫箱を出し、元通りに縫いました。ぬいぐるみを壊して直すことがゆいなりの対処法なのでした。

それから自分の腕にコントローラーの絵を描き、「私はロボット!だから傷つかない!なんでもできるんだ!」と現実逃避しました。

母親から「こっちに来るな!」と入れたお茶を投げられても、(あーあかわいそ。ま、私はロボットだから痛くないもんね!)とロボットに自分を投影するのでした。

 

 

『私だけ年を取っているみたいだ。 ヤングケアラーの再生日記』(文藝春秋)

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統合失調症の母と無関心な父親のもと、自分を殺して家族の世話に奔走するゆい。

成人してからの「ヤングケアラー」を自覚し、看護師として働いたり、結婚したり子どもを育てることを通じて、自分の感情を取り戻していく物語です。

私だけ年を取っているみたいだ。書影

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【著者プロフィール】

水谷緑(みずたに・みどり)HP

水谷緑

著書は『こころのナース 夜野さん』1~6巻(小学館)、『精神科ナースになったわけ』(イースト・プレス)、看護roo!での連載をまとめた『じたばたナース』(KADOKAWA)他多数。

 

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